7話・盗人
「俺がもっと綺麗な石探してやるからもう前の石は諦めろ、な?」
騒ぎ立てるアリアを俺がなだめようとしても
「だめなの!あの石はわたしのはじめてなんだから!」
なんか卑猥に聞こえなくもないが、アリア曰く、「あの石がきっかけでわたしはキラキラの石にはまったの!」だそうだ。
趣味かわいいなおい、
アリアが「酒場で情報収集しましょう!」と言い出したので、俺はおそらくなんも集まらないだろうな、と思いつつアリアについていくと、
「......まじかよ」
そこに広がるのは阿鼻叫喚の渦。その全員が自分の大切にしてたものを一つ盗まれたそうだ。
クエストを発注する者、受注する者の多さに酒場の店員たちが泣きそうになっていると、
「国からのクエストが発注されました!」
と、酒場の店員であろう女性が叫んだ。
「内容は、盗難物の回収だそうです!腕に自信のある方は、とりあえずこれ受注してクエストに行ってください!」
なんかギルドみたいだな、ここ。
と思いつつ、クエストを受注。ルルカさんたちのもとへ向かった。
ルルカさんの家へいくと、ちょうど洗濯物を干しているところだったので、とりあえず、今の状況説明をすると、
「そんな大変なことになっていたのですね......わたしの家では何も盗まれていなかったんで、マサヤさんたち遅いな、くらいにしか思ってませんでしたよ」
といつもの通りの口調でルルカさん。
「他人事じゃないのよ。私たち今からこの盗人をギッタンギッタンにしてやるんだから!」
となかなか聞かないような言葉とともに決意表明をするアリア。
「アナもいく!」
うん、かわいい。
というわけで、まずは盗人がいそうな森を探してみたが、
「いないな......」
というか人の気配が多すぎてよくわからない。
「諦めるのはまだ早いわ!まだ盗人がいそうな場所はたくさんあるのよ!」
「アナ、疲れたっ」
可愛らしい口調でアナがそういったので、俺がおんぶをしてアナを運んであげることにした。
その後もめぼしい場所を探したが盗人は見つからなかった。
もはや最後と思われる洞窟に入った俺たちは違和感を感じた。
今まではたくさんあった人の気配が全然しないのだ。
「おかしいですね、ここだけこんなに静かだなんて......」
とルルカさんがいうと、
「あああぁぁぁぁぁぁぁ......」
叫び声が、聴こえた。
「今の聞こえたか?!」
「聞こえたわ!奥の方からよ!」
俺たちは小走りで洞窟の奥に進んだが
何もなかった。
争った形跡すらも。
「どういうことなの?確かに叫び声はこの辺から聞こえたわよ?」
俺も知りたい。
とりあえず、この周辺を探索することにしたが、
「やっぱり何もないな......」
なんだったのかな、と思いつつ引き返そうとすると、
俺たちの体が宙に浮いた。
「え?」
のではなく、足場が消えたのだ。
「なんだそりゃぁぁあ?!」
というかデジャブ!
そんなことより、どうする?!
俺の頭がパニックでショートしそうになっていると、
「アナに、無機物硬化を軽く使わせてください!」
とルルカさんがいった。
よくわからないがここはルルカさんを信じることにして
「アナちゃん?無機物硬化をかるーく使ってくれないかな?」
と頼むと
「いいよ!」
と元気の良い返事。
こんな時でもかわいい。
「ではいきますよ!デバフミスト ポイズン!」
「無機物硬化!」
当たった箇所に毒が感染してしまったが俺たちはとりあえず大穴の出っ張りのところに着地できた。
しかし毒が普通に辛い、
と、思ったら、
「ヒーリング ポイズン!」
とアリアがいった。
途端に体から痛みやだるさが引いていく。
「どお?すごいでしょ、わたしのヒーリング、」
「ありがとうございます。アリアさん。わたしもパニックになっていて、ポイズン使った時はどうしようかと思ってました......」
あぶなかったのか。
それを聞いてアリアが得意げな顔をしているがこれはだいぶチームワークがすごかったと俺も思う。
あれ、俺なんかしたっけ。
ふと、俺が大穴の下をみて
ゾッとした。
全体図は暗くて見えないが、植物のような魔物が大口を開けてパーティが落ちてくるのを待っていたのだ。
「なんなんですか......あれ......」
俺も知りたい。
するとアリアが
「あ!あれわたしの石!」
と指をさした。
目を凝らすと見えなくもないが、よく見つけたな。
しかし、なんでここにあるんだ?と疑問に思ったがそれはすぐに解決した。
魔物の触手がおそらく盗難物であろうものを本体の元へもってきていたのだ。
「なるほど、ものを盗みまくれば探しにくるパーティが増える。探しにきたパーティが増えれば食料もふえる、というわけですか......この魔物、賢いですね」
と解析をしたルルカさん。
ここで俺たちはまた、デバフミストを固めて上へ逃げることはできるが、魔物を放置したら被害者は増えていく一方だろう。
でもこわいしなぁ、
と俺が思っていると、
「犠牲者が増えるのを黙ってみているわけにはいきません!マサヤさん、アリアさん、いきましょう!」
とルルカさん。
「そうね!あの魔物ギッタンギッタンにしてわたしの石を取り返しましょう!」
とアリア。
あ、これは逃げられない空気ですね。
「じゃあ、あの魔物は俺らで倒すとして、問題はどうやって倒すかだ。」
と俺がいうと
「?マサヤが温度変換したら1発じゃないの?」
とアリア。
「それでもいいかもしれませんが、盗難物の中に熱に弱いものがあったらそれは壊れてしまいます。」
とルルカさん。
どうしたものか、と考えていると、
「アナがマサヤを硬化するから!マサヤが下まで行って倒して!」
とアナ。
その手があった。
無論、俺は無機物じゃないから俺自身を硬化はできないが。
「ルルカさん、俺にデバフミストをしてください。......1番弱いのを......」
と俺が若干のチキンを見せながらいうと、
「本当にいいんですか?まだ別の手段も......」
「この状況で、犠牲者が出ないようにするには、この方法しかないでしょう。それに、俺は伝説級がつかえるんですよ?」
ルルカさんは納得がいっていない顔をしていたが、
「わかりました。でも、無理だと思ったら盗難物のことなんて考えずに温度変換をしてくださいね」
と、俺のいうことをわかってくれた。
「ではいきます。デバフミスト ダール」
俺の体にとてつもないだるさが降りかかってきた。
「硬化!」
それが重さにもなって俺ののしかかる。
これが終わったらルルカさんからチヤホヤしてもらおう。
体のだるさを気持ちで跳ね返し俺は魔物の中に飛び込んだ。
......やっぱりそうか。
中には全滅したパーティの骨が散らばっていた。
おそらくなすすべなく飲まれてしまったのだろう。
俺はこの場所から早く抜け出そうと温度変換を唱えようとしたら、キラッと何かが光った。
どうやら錆びついたペンダントのようだ。
なんとなく俺はそのペンダントを懐にしまった。
そして、
「温度変換変換!アップ!」
「ぐるぁしゃぁぁぁぁ........」
魔物の断末魔が聞こえる。どうやら倒し切れたようだ。
久しぶりに使う武器で魔物の腹をかっさばいた俺はアリアたちの姿を確認したとたん、
安心感と体のだるさのダブルアタックでその場で眠りについた。
長い!この話は2話に分けようと思ったんですが、止まりませんでしたね。指
本編ですが、初めてマサヤ達が大きな魔物倒したのではないでしょうか(一発でしたが)
どんどん成長していくマサヤたちは、書いてて楽しいです
はい。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
8話もよろしくお願いします!