15話・移動
「......吐いていい?」
これが城下町サンザウトーレについた俺が最初に発した言葉になった。
時は少し前にさかのぼる。
俺とアリアは酒場にある更衣室から出て来た。
「準備できましたか?パーティーは明日だからと言って、王族や貴族に悪い印象を持たれたらだめですので、今日の服装もしっかりして行くんですよ?」
ルルカさんがお母さんみたいになっている。
どうやらいつもと変わらない服で集合場所である酒場へと来た俺とアリアに母性が沸いたようだ。
しばらくして落ち着いてから、
「今回も馬車で行くの?」
と、アリアがルルカさんにそう聞くと、ルルカさんは少し興奮した様子で
「なんと、今回は王女様からサンザウトーレ行きのワープチケットをもらいましてね、サンザウトーレまで一瞬ですよ!」
と言った。
「「おおぉー」」
俺は当たり前だが、アリアもワープは初めてだったようで、ルルカさんが持っているチケットに目を輝かせていた。
「わーぷ?」
アナはワープがよくわかっていないようだったので、ルルカさんがワープとは、を説明していた。
......しかし、ワープかぁ。
俺のワープの思い出は、最初の頃に俺がワープしたいと思った時、アリアから最上級技巧だから無理と言われて断られた時しかないので、俺もすごくワクワクしていた。
「では! 少し早いですがワープ施設に行きましょう!」
......ルルカさんも初めてなんだな。
俺たちがワープ施設に着き、チケットをカウンターの人に渡すと、少し小柄の制服を着たお姉さんがお出迎えをしてくれた。
「お待ちしておりました。ルルカ様御一行様。すでにワープの準備は整っていますのでこちらへ、」
俺たちがワープ室の前へ着くと、お姉さんが
「なかなかいないんですが、ワープとの相性がとても悪い方の場合ワープ酔いしてしまう時がありますので、もし酔ってしまったらワープ先のどこか休めるところでお休みになられてください」
と注意してくれた。
俺は車酔いしないタイプだったから大丈夫かな。
俺たちがワープ室に入ると、お姉さんが、いってらっしゃいませ、を言うと同時に体が光に包まれて......
現在に至る。
「何よマサヤ!弱っちいわね!わたしなんてピンピンしてるわよ!ほら!」
周りでぴょんぴょんしてるアリアがとても鬱陶しい。
「大丈夫ですか?マサヤさん。とりあえず泊まる予定の旅館へ行って休んでいてください」
ルルカさんにそう言われた俺は引きずられるように旅館へ連れていかれた。
「吐きそう......」
どうしようもなく気分が悪くなっている俺を見て、気を使ったアリアが
「私、部屋に残っとこうか?」
と言ってくれたが、さすがに首都まで来ておいて病人の看病はかわいそうだと思った俺は
「いや、少し横になってたらよくなりそうだから、ルルカさんたちと観光して来たら?」
とイケメンなことを言った。
しばらく時間が経ち、
......暇だな。
気分はだいぶ良くなって来たのだが、この世界、やることがない。
「せめてパ○ドラとかできたらなー!」
俺は前ハマっていたゲームを久しぶりにしたいと思ったが、どうやってもできるものではないので、とりあえず魔物狩りへ出かけた。
旅館から城下町を出る道は一本道だったおかげで迷わず外に出れた俺は広がる光景に圧倒された。
王国が魔王討伐の最先端だと言うことは知っていたが、この光景は最先端というより戦場と言っても過言ではない。
なぜなら、俺が5分走れば着くであろう距離の空が紫色に染まっているのだ。
「まじかよ......」
少し目を凝らせば、絵でしか見たことないような枯れきった木々も見ることができた。
これ、俺大丈夫か?
と俺は思ったが、魔物が2.3匹こちらに向かっているのを見て、とりあえず技巧を使って見ることにした。
「アップ!」
「グルッシャァァア.....ア....」
......やっぱり俺の技巧は伝説級なんだな。
自分の強さを再確認できた俺は旅館へ戻ると、すでにアリア達が帰って来ていた。
「どこに行ってたんですか?」
とルルカさんに聞かれたのでとりあえず
「暇だったから俺も街探索してたんですよ」
と答えた。
どうやらもうすぐご飯で、俺がいなくてどうしようという話になっていたらしい。
今回迷惑しかかけてないな。
そのあとは幸せだった。
ご飯は美味しいしお風呂は広いし、何せおかみさんが美人なのだ。
俺は充実した時間をすごし、明日のパーティに少しワクワクしながら眠りについた。
今日であと一話上げたいなあと思っております。
本編ですが、ついにワープが出てきましたね!いやー、出すタイミングがなかった!というか忘れてた!てなわけで、次回は王様主催のパーティーですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次回もよろしくお願いします!