第八幕・トロイメライ
俺は夢を見る。内容は様々だ。
だが、どれも嫌なものだ。
俺は迷路樹の森にいる。
すると、突然森が燃え出す。凄まじい勢いで。
霊たちは苦しみ、もがき、水を求めて消えていく。
そして、燃え盛る森から出てくる一人の軍人。否、“兄”と言うべきだろう。
何故なら、何かを燃やすことの出来る能力を持ち、尚且、ここ迄の力を持つのは兄のみだ。兄の反逆霊の力だ。最高階級の時雨の力だ。
「全テ消エロ…消エ去ッテシマエ!!」
兄が叫ぶ。
場面が変わる。
一人の青年軍人が、折れた刀片手に立っていた。
そして、こちらに振り向くと、キキキキキと狂気じみた笑い声を発する。
「ナニモイラナイ…キキキキキ」
折れた刀が再生し始める。
「禁忌ナド…存在シナイホウガイイ…キキキキキ」
こいつは禁忌を破ったのか。
「禁忌など破っても、何も残らない。止めておけ」
俺はこいつにそう言った。
「モウ…遅イ!」
そいつは再生した刀━━血で錆びていた━━を振り回した。
また場面が変わる。
同時に痛みが脇腹を走る。
暗闇の中、誰にも気づかれず、痛みに苦しむ。
苦シメ。
声が聞こえる。
苦シメ苦シメ苦シメ苦シメ苦シメ苦シメ。
とても、響いた。
そして、目が覚める。
だから、夢は嫌なんだ。