第六幕・武器庫
「エーと...何だっけなぁ...」
頑丈そうな扉の前で、句蔭があーでもないこーでもない、と扉を開けるパスワードを思い出そうとしていた。
「5...5...5...。あー、何だっけなぁ...」
どうやら、“5”までは出てきているようだが、それ以降が出てこないらしい。
「く、句蔭...」
苦笑いをするしかない、隼風は少々困った。
そこへやって来たのは、朽無だった。
「あ...部隊長...」
句蔭も気付き、こちらを向いた。
朽無は「どけ」と言い、句蔭をどけさせた。そして、手際よくパスワードを打ち込んだ。
扉が開いた。
「...パスワード、忘れたか?」
朽無は句蔭に聞いた。句蔭は「あ...ま、まぁ...」と曖昧に答えた。
「俺は別に怒っとらんよ。誰でも忘れることはある。ただ━━」
ここで朽無はこちらに振り返った。
「━━ここのヤツは覚えとけよ...」
朽無も苦笑いだった。つられて句蔭も苦笑い。
三人は武器庫へ入った。武器庫は全体的に白っぽい、明るめなところだった。
「あの...何故...部隊長が此処に...」
絞り出すように、句蔭が朽無に聞いた。朽無は隼風の方を見て「コイツが目醒めたって聞いてな」と、言った。
「えっ!誰が...」
隼風が驚いて、朽無に聞いた。
「亥月。アイツ、お前らが思ってるよりも相当頭がキレるぞ。序に行動を取るにも全てが完璧。言うこと無しだ」
朽無の言葉に、二人は驚くばかりだった。あの、亥月さんが!ヘラヘラした亥月さんが!
「ま、見てると平気そうだし、大丈夫だな?隼風」
朽無が突然聞いてきたので、隼風「へ?あ、大丈夫です」と、答えてしまった。
「じゃあ俺は戻る。あんまり長く居すぎんなよ?」
朽無はそのまま帰って行った。
二人はどんどん奥へ進む。望んだ武器が見つからないからだ。
「なぁ、句蔭。何の武器を探してるんだ?」
五分程歩いた時に、隼風か句蔭に聞いた。
「弓。俺の唯一の特技だし」
少し意外だ、と隼風は思いながら「へぇ」と言った。
「そう言ってるお前は?」
今度は、句蔭が隼風に聞いた。
「うーん…特に特技が無いから、銃かなぁ…」
「そう」
そんな会話をした直後だった。「あった!」と言う句蔭の声が聞こえたのは。
「…凄ェ…。こんなに良い弓、見たことねぇ…」
句蔭が感嘆の声を漏らした。
全体的に、一メートル半はある大きさの弓は、重そうな、だが、威力がありそうなものだった。
句蔭は、弓を見ながら非常に喜んでいた。
隼風は「俺も探してくるね!」と、声をかけ、歩き出した。
あちこちに銃はあったが、どうも隼風の欲しいものは無かった。やっぱ無いか、と隼風は落胆した。
欲しい銃━━火極式機関銃だ。
この銃の基本的な作りは、普通の機関銃とはなんら変わりない。違うのは撃てる弾だ。火極とは、国軍の中で開発された、特殊な弾丸のことを指す。弾丸を、熱を吸収しやすいよう特殊な加工をし、殺傷力を高めたものだ。
とはいえ、二十年前の旧式だ。無くても仕方ない。
「隼風ー、欲しい物は見つかった?」
句蔭が弓片手に戻ってきた。
「いやぁ…もうあるかも怪しい旧式銃だし…」
「何て名前?」と、句蔭が聞いた。
「火極式機関銃」と、隼風は答えた。
「え?またマニアックなとこいったねぇ…てか、あったよ?その銃」
「え、嘘」
「本当だって。来る途中にあったよ?」
隼風は駆け出した。
【続く】