第五幕・句蔭と隼風
━━ぜ...はや...ぜ...。
まだ俺を呼ぶ奴がいんのか...。誰だ...もうやめてくれ...。俺は━━。
隼風は魘されていた。
━━隼風...。
お願いだから...。
「隼風!」
急に現実味のある声になった。
隼風は跳ね起きた。景色は迷路樹の森ではなく、何処にでもある普通の部屋だった。
「...大丈夫か?」
声の主は句蔭だった。
「お前、迷路樹のとこで気絶しちまったんだ。部隊長に良くあることだって、言われてもなぁ...。びっくりしたよ」
隼風は二段ベッドの下に寝かされていた。どうやら、部隊員達が運んでくれたらしい。
「あ、ああ...そう...」
隼風は未だに元気が出なかった。“甘ったれんじゃねぇ”という声が、今にも聞こえてきそうな気がしたからだ。
「顔色悪ぃけど...相当手酷くやられたのか?」
心配して句蔭が聞いた。
「うん...まぁ...」
隼風は曖昧に答えた。
「まぁ、意識が戻っただけいいか。あ、飯食う?」
隼風が答える前に、句蔭は部屋から出ていった。
隼風は取り敢えず、部屋の中を見ていた。
本当に何処にでもある普通の部屋だ。
今、隼風が寝ていた二段ベッドに、机が二つ、本棚が一つに、箪笥が一つあった。そして、未開封のダンボールが二つ。
「...此処...何処だ?」
隼風がそう呟くと、「地区外の下宿所」と答える声があった。盆を持った句蔭だった。盆には硝子の器とペットボトルが乗っていた。
「迷路樹の森に近いとこにある安全地帯だ。そのダンボールは、活動服と私物が入ってる。あと、お前の使う机は右側ね」
句蔭はそう言いながら、ベッドに盆を置いた。
「あ、ありがとう」
隼風は盆に、乗っていた器を貰いながら言った。中身は心太だった。
「ところで、活動服って何?」
少し落ち着いてから、隼風が言った。
「あぁ、気分がもう少し優れたら言おうと思ってたんだけど、任務中に着る服のこと。詳しいことは、“移動”した時に話す」
「へ?移動?」
隼風は変な声を出して、聞いてしまった。
「うん、他の人はもう終わったんだけど、武器庫へ行くよ」
「ぶ、武器庫?」
「だって、流石に刀だけじゃ頼りないだろ?それに、俺ら銃の扱い方習ってるし」
「あ、OK。わかった」
その後、隼風は心太の流し込み、句蔭と共に部屋を出た。
「んで、活動服のことなんだけど━━」
句蔭曰く、全体的に黒い服で、人により装備を変えられる物らしい。腰に手榴弾を所持している人もいれば、太腿の部分にナイフを隠し持っている人もいるなど、多種多様らしい。
「それに、日本刀と銃とかの武器を所持すんだ」
隼風が言った。
「そうそう。本当に何でもあるって、唯生が言ってたけど...本当かなぁ...」
二人は階段を降り、地下へ来ていた。
突き当たりに、頑丈そうな扉が見えた。
「ここだってさ」
句蔭が立ち止まり、言った。
【続く】