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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準決勝B
85/106

85 軽蔑的な一撃

『破滅の扇動者』(青)(赤)

プログレ――リザードマン

 Fmになるときアンステディされる。

 呪縛(ダメージを与えられない)

 このカードは可能ならば防御者にならなければならない。

 あなたのターンの開始時、すべてのプログレに4000のダメージを与える。

 このカードが『破滅の扇動者』自身の効果で死亡した場合、あなたは系譜カウンターを一つ得る。

BP4000 / HR0 / RV(同名)



「焔村選手最初のアクションは『破滅の扇動者』ッ! 成功すればBP1500の『アチェリ』と2000の『山操』を焼いてクリアできる盤面ッ!」

「しかし北田気選手のデッキには『獅子身中の虫、リヒャルト』があります。それを出されるとかなりの手損。焔村選手はいきなりの大博打(ばくち)ですね」



 放送席の声はほぼ途切れない。会場もどこか落ち着かず、ときおり物販などの声が尭史の耳にも届く。

「違いっていうのは……どんな?」

 その中にあって、ジェローナの問いは特異だった。


(それは、一言でいえたもんじゃないよ)

 尭史は小さく首を振る。

(オレが必須だと思ってたカードが抜かれてたり、逆に弱いと思ってるのが入ってたり。でもそこになんらかの法則があるようには思えない。判らないからこそ、今こうして探ってるんだ)


「それは、そうね。野暮なこと訊いちゃったかしら」

(もちろん決勝前には教えるけど。今は、あっちだ)

 尭史はまた熱いまなざしで観戦に入る。ジェローナもそれに続いた。



 三回表。北田気はプラグのみでドローゴー。

『かき集めの中隊』(80話参照)を持っているぞ、というアピールでしょうね」解説が言った。


 その、次の瞬間。

「あれ?」

 なにか得体の知れない違和感に、ジェローナは思わず声をあげていた。


(今度はなんだよローナ)

「あ、その。今なにか、おかしくなかった?」

(今のドローゴーが、か?)


 さすがに少し面倒くさい、といった様子を見せる。

(北田気が手札に『リヒャルト』とか持ってなかったから、『破滅の扇動者』の被害を抑えつつ再展開を狙っただけだろ)

「う、うん」

(ドローして、Fm置いて、攻撃もせずターンエンド。違和感の入る(すき)さえないじゃないか。何もしてないようなもんなんだぜ)


 ジェローナは釈然(しゃくぜん)としない様子だったが、それ以上何も言えなかった。自分の違和感を言葉にできなかったし、なにより尭史の言葉は筋が通っていると思った。

 ――気のせいかしら。どこか自分に言い聞かせるように、彼女はつぶやいた。



 後手3ターン目開始時、『破滅の扇動者』の効果で場の全員がクローズ。焔村は続けてプラグから、『渡柄杓(わたりびしゃく)』召喚。ターン終了時に北田気が『中隊』を使用するも、焔村が『将軍のつき返し』。『中隊』は打ち消され手札に戻る。


 そして先手4ターン目。ドローのちメイン、もう一度『かき集めの中隊』を顕現。

 すでにタップアウトしている焔村は首を振り、打ち消されずに発動。

「それじゃあ御覧(ごろう)じろ!」

 北田気が高らかに言い放つと、会場はひときわ大きな歓声に包まれる。

 効果により『誇りなき富豪』と『仄白き絡新婦(じょろうぐも)』が特殊召喚されると、辺りはいっそうざわついた。実況も「早くもキングの切り札が飛び出したアアァァーッ!」などと叫んでいる。



『仄白き絡新婦』(黒)(2)

プログレ――怪奇 / 夜の後身

 このカードが攻撃するとき、BP+(2000×X) / HR+(2×X) される。Xはあなたの墓地にある種族: 夜の後身の枚数に等しい。

HR3000 / HR2 / RV(種族: 夜の後身)



「強い展開ですね。焔村選手のタップアウトに合わせてきました。『誇りなき富豪』で『山操』の復活コストが確保できたのもオイシイです」

 解説者の言に、尭史は何度もうなずく。

 

(こうなると焔村は厳しいな。全体火力でしか盤面をクリアできない。それでいて火力を使うと、隙ができるし。手札に余裕もない)

「じゃあこのままキングが殴り勝っちゃう?」

(十分ありうるよ)



 だが。

 なぜか、そうはならなかった。

 次の北田気の攻撃時、焔村の『国の微睡み』で全プログレがアンステディ。

 五回裏、焔村が『兵糧庫増床』により五枚ものFmを寝かす。しかし返しに北田気は攻めきれず。7点を奪うに留まる。



『兵糧庫増床』(青)(青)(青)(2)

エポック

 このカードが場に出たとき、系譜カウンター一つを上に置く。

 あなたのターンの終了時、このカードの上に系譜カウンターがあるなら、一枚ドローしてもよい。

 このカードの上の系譜カウンターをすべて取得する: 点数で見たコストが7以下の青のカードを1枚、あなたの手札からコストを支払わずに顕現する。この効果は相手のプログレが攻撃を宣言したときにしか使用できない。



「ぼくのターン。ドローして終わりますのん」

 そして再び、北田気の手番が回ってきた。


「早くも7ターン目ッ。盤面は北田気選手が奪っているものの、焔村選手のライフは12点。半分も削り切れていない状況です。若ッッ干キングの雲行きが怪しくなってしまったか!」

「Fmが立っているうえ『兵糧庫増床』で何が飛んでくるか。そこが非常に怖いところで……おや?」

「北田気選手がジャッジを呼びつけました。……が、すぐに解決したようです。ルールの確認でしょうか?」

「珍しいですね」


 十数秒ほどゲームが中断されたが、すぐに再開。

 ドローのち、『強迫する野犬』召喚で焔村のハンデスを図るが、『足軽の陥穽(かんせい)』で打ち消し。これには観戦する北田気ファンの嘆息(たんそく)()れた。


「こうなると『兵糧庫』の踏み倒しをもろに喰らうしかないですね。北田気選手にはこの大きなエポックを除去する手段がありません」

「北田気選手、破れかぶれの攻撃に対し――焔村選手、余裕の表情で『兵糧庫』の効果を発動! ここで『大洪水』が飛んできたァーッ!!」



『大洪水』(青)(青)(5)

エポック

 戦場のすべてのカードをオーナーの手札に戻す。

 (Fmやエポックを含む。墓地は含まない)



「ゲームは振り出しに戻りましたッ! しかし焔村選手が得た系譜カウンターはそのまま! 着実に勝利へと近づいていますッ!」

「逆に北田気選手は手札が所持上限を超えるため、捨てざるを得ない格好です。これもかなり痛いですよ。任意のカードで墓地を肥やせるのが不幸中の幸いでしょうか」


 ジェローナの耳には、焔村に向けたブーイングがわずかに聞き取れた。

(北田気さんが人気なのか、あの人が不人気なのか。これは両方、って印象ね……)



 『大洪水』により損害を被りつつも、北田気は『山操』を交えつつ再展開。

 2ターン後にはFmを4に伸ばし、『中隊』で『絡新婦』を二体展開しつつ、少しずつ焔村のライフを削る。その点数はようやく半分となった。


「……さあ。ゲームは10回表。焔村選手、『渡柄杓』経由でいきなり『国の微睡(まどろ)み』ッ! 『仄白き絡新婦』には攻撃させないぞと迫ります」

「一見強力なようで、ハンドは消費しますからね。残り五枚というのが怪しいところです」


「北田気選手、この隙を見て『糾弾』(31話参照)を撃ちこむッ! 『足軽の陥穽』を落としつつ立て続けに『漆黒の扉』で三枚回収をキメたァー! ここぞとばかりに増えた手数! 焔村選手はしのぎ切れるか、注目だァーッ!」


 と、その瞬間。

 焔村が、ニヤリと笑った――ように、ジェローナは感じた。


「ねえ、尭史。これって、焔村さんに勝てる道は残ってるの?」

 彼女はやや反射的に、そう尋ねていた。

(勝ち筋か? そうだな、昨日の地点でのデッキを見た限りでいえば)

 一呼吸おいて、答える。

(ほぼ無いと思う。北田気が何か、ミスでもしない限りは)


「それは結局、無いのと同じじゃないの?」

(そうとも言い切れないよ。焔村の返しを読み違えたり、攻め時を間違えたりっていうのは常にありうる。ましてこの観衆の中だ。プレイミスなんてよくある)

「よく、ねえ」

(とはいえ『糾弾』で手札見てるの(ピーピング)が、な。そういうミスを大幅に減らしてると思う。ここで何か今引きしてきたら、(くつがえ)りうるけど)


 その、焔村のドロー。慣れた手つきで手札に加えると、二秒ほどだけ(なが)め、一枚をFmにしてすぐにターンを終了する。


「次の『絡新婦』が防げなければ負けという場面ッ! それでも表情を崩さない焔村選手ゥ! 何か秘策があるのかァー!?」

 実況は間断なく(はや)したてる。

「続いて北田気選手の11ターン目! ここは強引でも攻めていきたいところッ! ドローのちコンバットに入り……『渡柄杓』へ『放射性崩壊』を飛ばしてきたァー!」



『放射性崩壊』(黒)(緑)

スプレー

 Fmになるときアンステディされる。

 このカードは打ち消されない。

 場の、点数で見たコストが3以下のカード一枚を対象とする。それを一度追放し、その後オーナーのFmにする。



「あー。これで防御者を除去して、HR10になる『絡新婦』で殴れば勝ちですね」

 解説者がのほほんと言う。


(打ち消せないし、終わったろ)

 そう念じながら、尭史も頬杖(ほおづえ)をついた。


「え、待ってよ。焔村さん、何かするみたいよ」

 いつの間にか興味津々といった様子のジェローナに、尭史は少しニヤニヤして。

(自分自身に『国の微睡み』でも撃つんだろ。パフォーマンスで……、……?)


 すぐに、その顔を強張(こわば)らせた。

「おい。マジ……かよ? メインから、それって」


 会場がどよめく。遅れてどこからか喝采(かっさい)が響く。

「これはこれはこれは凄いぞおおおォォォォ!! この局面ッ! 絶体絶命、背水の陣でッ! 焔村光秀はミラクルを引き入れたああァァァ!!!」



『旋回作戦』(青)(赤)(1)

スプレー

 Fmになるときアンステディする。

 顕現ひとつを対象とする。あなたは、それが指定した対象を改める。改めることに成功した場合、系譜カウンター一個を得る。



「『旋回作戦』ッ! これにより『放射性崩壊』を起こすのは『渡柄杓』でなく! 『絡新婦』に改まったアァァッ!!」

 観戦者たちは悲喜こもごも、まさに狂乱の様を(てい)す。



 その中で。

 尭史は一人、戦慄していた。



(北田気は前のターンに『糾弾』で焔村の手札を見てるんだ。そのときの四枚の中に『旋回作戦』があったなら、この局面で『放射性崩壊』を使うハズがない! つまり『旋回作戦』を引き入れたのは、()()()()()()()()()()()()()()()――なら!)



(スオウは――ローナと同じ能力でも持ってるのか!?)

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