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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準決勝A
82/106

82 宿命の決着

 ドローしながら、逆嶋は手札から『永訣と進軍』を滑らせる。

ステディの(立った)Fm6、ハンドも6。そんなん関係無い。クソ童貞にもエラそげな紙切れにも、(ゆず)れへんプライドがあるからな。『永訣と進軍』、ここで顕現や」


「わかりました」

 尭史もまた、手札から一枚を引き抜くと、『永訣と進軍』に被せて宣する。

「では――ショーダウンと洒落(しゃれ)こみましょう!」



『腐敗物、アミィサ』(青)(青)(X)

プログレ(ネームド)――人間、荒くれ者

 出征(スプレーを顕現できるときにいつでも使用できる)

 このカードが場に出るに際し、プレイヤー一人と、点数で見たコストがこのカード以下の、召喚または顕現一つとを選んでもよい。そうした場合、このカードは選ばれたプレイヤーによって、選ばれたカードのコピーとしてプレイされる。ただし、カード名は『腐敗物、アミィサ』のままであり、ネームドのままであり、『(青)(青)(2):次の終了ステップの開始時に、このカードをオーナーの手札に戻す。』の能力をもつ。

BP1000 / HR3 / RV (なし)



「なんやねん、それは。キサマもサイを振ろうっちゅーことか?」

「まさか。六の三乗分の一の目を出せるなら、自分で使います。このカードの指定、それは」

 びっ、と逆嶋に指を向ける。



「あなたに、『永訣と進軍』だ。同じカードを二度使ってもらう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」



「……、あ……?」

 逆嶋はしばし、硬直し。

「あ……!」

 そしてすぐに、その意味を悟った。

「ワイに……ワイにバストしろっちゅう気か、キサマアァ!」


「ええ。いわゆるドボンです、逆嶋さん。あなたには、絶対に悪い目が出るサイを振ってもらいます」


 尭史は得意げにニヤつきながら続ける。

「あなたに残された選択肢は二つだ。片方の処理で悪い効果を受けながら、もう片方で追加ターンを得る。あるいは悪い効果を二度受けつつ、能力を温存する。どちらにせよ、三体並んだ『火山口の勘違い者』は、増えすぎたHRで自滅(70話参照)します!」


 ギリ、と逆嶋は歯を食いしばる。

 ただその口元は、確かに笑っていた。


「やるやないか、クソ童貞。タイマンでワイを追い込みよる」

「これこそ、あなたがバカにした、紙切れとの信頼の証ですよ。クソ童貞一人では思いつかなかった」

「はッ」


 乱暴に三つのサイを(にぎ)る逆嶋。

「おいセディアル」

「なんだい強面(こわもて)アンポンタン」

「ほんま気に喰わんヤツや」


 顔の高さから、バラっとサイを落とす。

 1のゾロ目。

 その三つを再度握り直す。


「キサマの仕立てたこの茶番、ちったあオモロかったで。900万の価値はまるで無いけどな」

「まったく度し難い男だよ。見直せるかと思ったってのに」

「余計なマネはいらん。やっぱ後で(やぶ)いたるわ、このアマ」

「勝手にしなさんな。アタシだってアンタにゃ付きあいきれないよ!」


 また中指を立てるセディアルへ、逆嶋は振りかけるようにサイを落とす。

 その結果はまぎれもなく、6のゾロ目だった。

(セディアルの残弾が、ゼロになった)

 ジェローナが静かに、息を呑んだ。


「片方の処理や。キサマの悪魔・トークンを二体破壊して、追加ターンを得る」

 尭史は手早くトークンを取り除く。


「ほんで、もう片方。ハンドをFmととっかえ、『勘違い者』が全部死ぬ。ほいで手札からプラグ、さらに一枚捨てて『テンラ』を復活し、コンバット! 全員で殴る!」

「余ったマナで『御首頂戴』をカットイン。場でもっともHRの高いプログレ、『クリーン』を破壊。2点はライフで受けます」


「ほんならメイン2、『セディアル』の解放8を二連打や! ライフ8点を消滅させる」

「こちらも『ジェローナ』の回復を使用。X=7。残りライフ6、魔力2です」


「合点がいった。やりおるやないか、クソ童貞」

 そこで逆嶋は手を止めた。

「『アミィサ』は、追加ターン中の火力も含めての最善手っちゅうことか」


「ええ、そうなります。あなたはこの三本目、最初からダイス関連のカードを中心にFmに置いていた。だから『永訣と進軍』で第五効果(77話参照)を出した後の手札は、たかが知れていたわけです」

「生意気なマネを」

「逆嶋さんの方は、ご機嫌ですね。要らんことは言わん、じゃなかったんですか?」


「重箱の(すみ)をつつくな、じゃかしい。それでもここで二枚目の『今川の号令』を引けば、ワイの勝ちやぞ」

「引けませんよ。一枚は墓地にある上、『かき集めの小隊』で二枚がボトムに行ったのも覚えています。なによりオレには、勝利の女神が手元にいますから」

「ほーんま、気色悪いヤツや」


 逆嶋は音高く、デッキトップを指で叩く。

 そのまま力をこめて、ドロー。

 何も言わずにその一枚を見ると、手札をシャッフルする。()らすかのようだった。


「プラグ、『クリーン』を復活さす」

 かと思えば、急にプレイを始める。

「ここで『首狩り陣形』や」

 逆嶋は淡々とダイスを振る。1の目が出る。


「さらにコンバット、全員で殴る(フルパン)。メイン2に入る」

「5点喰らって、残りライフ1です。どうぞ」

 尭史はそれだけ言って、逆嶋の行動を待つ。


 ほんの数秒。

 逆嶋は自分の手札をじっと見たままいて――そして。


「ターンを終える」

 そう言って、ぱたりと手を置いた。

(これでオレの勝ちだ!)

 声を殺して、尭史が勝ち(ほこ)る。



 それと、同時だった。



「鮎川選手ゥゥ!! 『永訣と進軍』の猛攻(もうこう)をッ! 首の皮一枚でしのぎ切ったアァー!!」

 けたたましい実況の声と。

 一段と大きくなった歓声とが、彼の快哉(かいさい)をかき消した。


「……え。え? いつのまに」

 目の前が急に明るくなり、戸惑う尭史。


「尭史」

 そこにジェローナが、低い声で言う。



「セディアルが、消えちゃった」

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