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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準決勝A
80/106

80 ギャンブル

「ワイのターン。『テンラ』を出す! エンド時に『勘違い者』を特殊召喚!」

「誘発火力で『凧』は破壊。でもこれで能力の残弾は五だ。『永訣と進軍』二連打はできませんね、逆嶋さん?」

「判りきったことは言わんでええと言うに」

「いやほら、逆嶋さんが能力を使ったかは、オレには見抜けないものですから」

「釣り出した気か、キサマ!」


 ちらとジェローナを見ると、わずかにうなずく。

(たぶん間違いないわ。サイを振る直前、少しセディアルの眼力が強まったというか)

(そうだったのか。お手柄だ)

(お安いご用よ。で、次の番は?)

(そうだな……)

 このときの尭史は、ジェローナも初めて見るほどまっすぐな眼をしていた。


「オレのターン。プラグから『デヴォイド・トーラー』を召喚します」



『デヴォイド・トーラー』(黒)(3)

プログレーー悪魔

 このカードが復活を果たしたとき、これを生け贄に捧げてもよい。そうした場合、復活コストにした悪魔をコストを支払わずに場に出す。

BP4000 / HR3 / RV(悪魔)



「おいコラキサマ」

「今度はなんですか」

「なんでここでそないにハンパなもん出してくんねん。もっと使えるカードがあったやろ」

「つまりどういうことですか?」


「ぬかせ、楽しんどるやろ。キサマの手札に悪魔がいるかどうかで悩むワイがそんなに見たいか、ああ?」

「ええ、楽しんでますよ。最後まで楽しみますとも! 楽しんでこい、好きに闘ってこいと、オレは願いをかけられた。そうやって送ってくれた人たちのために、オレは楽しんで、そして勝ちます」


「おーおー、どこまでも青臭いことやな」

「ドライに構えても無味乾燥になるだけですから」

「ハ。現代人に味なマネは要らへんねんて。そんなもんよりカネを優先すんのがスマートっちゅうもんや。もうええ、判らんままで足下すくわれてしまえ」

「やれるものならどうぞ」


「しゃらくせえしゃらくせえ! ワイのターン、『テンラ』で殴る。続けて『勘違い者』!」

「『テンラ』通します。『勘違い者』を『トーラー』でブロック」

「『今川の号令』。モードは2と4、勘違い者に勝たしてもらおか! メイン2に『登られし郁子(むべ)』を出して渡すで」



『今川の号令』(赤)(緑)

スプレー

 以下から二つを選ぶ。

 ・このターン、すべてのプレイヤーのライフは増えない。(魔力が戻らず、ライフ代わりのトークンも置かれない)

 ・各対戦相手に三点のダメージを与える。

 ・自分のプログレを一体選ぶ。それをアンステディ状態でFmにする。

 ・プログレを一体選ぶ。ターン終了時まで、それはBP+2000 / HR+2 される。



『登られし郁子』(緑)(1)

プログレ――植物、獣

 このカードが死亡したとき、これを追放してもよい。そうした場合、BP1000 / HR1 の蜘蛛・プログレ・トークンを二対場に出す。

BP2000 / HR1 / RV(同種族)



「ええ、『トーラー』は戦闘破壊。テンラも通って残りライフ23点です。今度は『テンラ』に能力使いませんでしたね?」

「訊くなや! 答えんわ!」

「除去耐性のある生物を出してるあたり、全体除去をやや警戒。のこり一枚の手札は、『偶奇待ち』か『永訣』、どちらかでしょうね」


 挑発するような尭史の言葉にも、逆嶋の表情は変わらない。関心がないというよりは、意識してポーカーフェイスを作っているな、と尭史は思う。

 その様子はもはや、沈黙を保つ悪人には見えない。どちらかとえば、笑わないように(こら)えようとする芸人と重なった。けっきょくは同じTCGを愛する者なのだ、という意識が、尭史の気を軽くしていた。


「ならこっちも、そろそろ勝負に出ますよ。オレのターン、『デヴォイド・トーラー』を介して『千邪眼の根絶者、ジャラクモス』を出します」



『千邪眼の根絶者、ジャラクモス』(黒)(黒)(黒)(黒)(4)

プログレ(レジェンダリー)――悪魔

 制空

 (黒)(黒)(1): BP6000 / HR6 の悪魔・プログレ・トークンを場に出す。この効果は1ターンに一度、自分のメインフェイズにのみ使用できる。

 7点のダメージを受ける: カードを七枚引く。この効果はゲーム中に一度だけ使用できる。

BP11000 / HR2 / RV(レジェンダリーの悪魔)



「ま、妥当なとこやな」逆嶋がぼそりとつぶやいた。

「効果で悪魔を増やしてターンエンドです」

「ほんならワイのターン! 『偶奇待ちの探索』(71話参照)を撃つ!」



「!」

 そのとき、はっとしたのはジェローナだった。

 一瞬きらめいたセディアルの眼を認め、口を開きかける。

「なんだいジェローナ。その間抜け面は」

 そこに、セディアルが先制して口を出した。


「だって、セディアル。残った回数はもう三回でしょう。切れたら、あなたはどうなるの?」

「さあねぇ! アタシの知ったことじゃあない。それともアンタは知ってるのかい?」

「……いいえ。知らない」

「なら考えても仕方ないだろうさ」

 セディアルはからからと笑った。



「余計な口を挟むな、おどれら」

 逆嶋が言う。

「さらにマナを伸ばして『火口の亡霊』を召喚。召喚時効果(CIP)は、失敗やが」


「とりあえずサイを振って魔力増加に『勘違い者』のHR増加、ですか」

 それを受けた尭史はあごに手を当てつつ、ジェローナにも判るように考える。



(これで逆嶋さんはハンド4、Fm5、ライフ30に魔力6、場に生物四体だ。そして能力はあと三回――つまり『永訣と進軍』一発で、残弾は0になるな)


(え、ええ)

 ジェローナはそれだけ答えた。セディアルを案ずる言葉が出かかったが、飲みこんだ。勝負に集中する尭史の気を()らしたくはなかった。


(対してこっちはハンド1にFm5、ライフ23。盤面はデカいの二体いるうえ、『ジャラクモス』がいれば毎ターン悪魔が増える。手だってこいつで強引に伸ばせるし、戦況的にはこっちの微有利ってとこか。ただし、残った能力は二回しかない。この六回表であえて使いたい、勝ち確にできる一枚は……ないな。逆にこのあと『永訣』を使われたら? いや、それも『ジャラクモス』で対抗策をドローすれば済む話だ。つまりこいつがいる限り、有利は揺るがないはず!)



 数秒の間にそこまで考えてから、素でカードを引く。

 『英霊の遺恨』。

 初手から抱えたままの『癇癪玉』と同じく、使う目途(めど)が立つカードではなかった。


「『英霊の遺恨』プラグから、コンバットに悪魔・トークンで殴ります。メイン2、さらなる悪魔を呼んでターンエンドです」


 手番を回された逆嶋は、しばらく黙っていた。

 そしてわずかに目を細め、「おもろい」と言った。


「デカい口叩くだけのことはある。フェアに、どっしり構えよるやないか。『永訣』は留まらせつつ、長引けば『ジャラクモス』でこっちが殺されるだけやな」

「そういうお()めをされるなら、感謝しますよ」


「せやけどワイにも手は残っとる」

 逆嶋はそう言ってドローしたあと、手早く手札から一枚のカードを引き抜いた。

「これもワイのキャンブルのうちや!」


「それ……、『かき集めの小隊』!? 赤黒緑で差すものですか!」

「ワイのデッキの二割は、キサマを倒すためだけのメタカードになっとる。並みの出場者はサイの目操作のマナレシオで叩き潰せるし、焔村と戦うことはないからな。ハナから障害はキサマしかおらん。そのキサマの裏をかくのに、コイツはちょうどええっちゅうだけの話や」



『かき集めの小隊』(緑)(3)

スプレー

 あなたのデッキの一番上から6枚を公開する。その中から、点数で見たコストが3以下のプログレを最大2枚まで戦場に出す。残りをあなたのデッキの一番下に、望む順番で置く。



 そこまで言って、逆嶋の指先がデッキの上で止まる。

「よおクソ童貞。レイズか、ドロップか? 今の言葉を信じるなら、『ジャラクモス』で『大いなる拒絶』(51話参照)でも引っ張って打ち消せるやろ。それとも信じずに通すか?」


「逆嶋さん……!」

 尭史の声は少し高かった。

「なんて(いき)なことを。すごく、面白い!」


(ちょっと尭史なに一人で興奮してるの)

(すげえギャンブルだ、ローナ! 『小隊』は強力なカードだけど、低コスト生物の質が悪い黒や赤とは相性が悪い。基本白と合わせたいものだ。そこを押して使ってきてるのを、脅威(きょうい)として見るかどうか!)


 相変わらずニヤニヤしながら、尭史は必死で考えを巡らせる。

(勝手に能力を使えるなら、あんな怪しいカードは絶対に打ち消す。けどこの試合で六回しか使わないと約束した以上、そう簡単には決められない。残る回数は二回で、『永訣』の対策とフィニッシャーに取っておかなきゃならない。だったら……!)


 ジェローナは沈黙を保っていた。

 昨夜や今朝の、死んだ魚のような目をした尭史を知っている以上、野暮(やぼ)なことで水を差すことはできなかった。

 さらに、六回の能力で倒しきるのだという言葉を、嘘にさせるわけにもいかなかった。口約束であろうと、騎士として誓いには責任を意識せざるを得なかった。


「決めました。逆嶋さん。オレの答えはコールだ。カットインして『千邪眼の根絶者、ジャラクモス』の効果を発動」


「……、……ほう。能力は使わず、素で七枚ドローしたんか」

 ジェローナから目を離さずに続ける。

「しかし能力の反動はワイと同様のはずや。ワイは一生、丁半で勝たれへんようなサイの悪運を背負う。キサマはさしずめ、ドロー運が悪ぅなるっちゅーとこやろ? もはや七枚手札が増えたところで、目当てのモンは引けんのとちゃうか」


「……『小隊』を通します」

 逆嶋が指摘(してき)した通りだった。

 七枚もあればゴミばかりとはいかないが、それでも欲しかった打ち消しは手に入らなかった。

「なら今度は『小隊』の解決といこか!」



 デッキの上から六枚が表になる。

「そんなバカな!」

 同時に。

 尭史は思わず顔を(おお)った。



 対する逆嶋は大仰に手を広げる。

「これや! ワイの一人勝ちと言わしてもらおか! 『エディング・リーの射手』『茶毛熊、クリーン』を特殊召喚!」



『エディング・リーの射手』(緑)(2)

プログレ――エルフ

 このカードが場に出たとき、制空をもつプログレを一体選び、破壊する。

BP2000 / HR1 / RV(同種族)



『茶毛熊、クリーン』(赤)(赤)(1)

プログレ(ネームド)――獣

 あなたの獣が攻撃したとき、プログレ一体を選ぶ。このターンの間、それは防御できない。

 このカードが攻撃したとき、あなたの山札の一番上を公開する。それが獣であるなら、手札に加える。

BP4000 / HR3 / RV(獣)



「『射手』で『ジャラクモス』破壊してコンバット! 『テンラ』で攻撃時『クリーン』の効果発動や! トークンに防御不可付加、続けて二体の『勘違い者』」

 『テンラ』を寝かすと、これ見よがしに親指を下向ける。


「まさに『小隊』のショータイムや。10点喰らえ」

 セディアルが鼻で笑うのをよそに、逆嶋は上機嫌だった。

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