50 精神壊しの罠
「アタシの先行。プラグ、『木漏れ日の学舎』をプレイするわ」
「ターン貰います。ドロー前、手札から『獰猛な中隊長』を公開してトークンを二体。ドロプラから『慨嘆』で」
「仕方ないわねえ。『時代性の破棄』捨てるわ」
『木漏れ日の学舎』(青)
エポック
このカードの能力は、すべてのプレイヤーが、各々のターンのエンドフェイズ時に、どれか一つを一度だけ選んで使用することができる。
(1):次のエンドフェイズ時まで、すべてのプログレはHR-1の修正を受ける(この後に場に出たものには適用されない)。
(2):カードを一枚引く。
(5):このカードを破壊する。
『慨嘆』(黒)
スプレー
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは、プログレではないカードを一枚捨てる。その後自分の手札を公開する。
「1ターン目は互いに理想的とも言える立ち上がりッ! かたやドローエンジン、でプラン構築、かたやハンデスを展開して妨害を図っているというところ!! 熱い戦いを見ることができそうですッ!」
その口振りは昨日にも増してせわしない。仕事を忘れているかのような興奮ぶりを見せていた。
「じゃ、ワタシのターン。『虚空漂着』のプラグから、『幻惑のマーメイド』を召喚よ!」
「わ。もう来た」
ジェローナが呟く。期待にそぐわず、尭史の反応はなかった。
「ドロー、『荒れ地の猟犬』プラグから『苔むしたブリキ兵』召喚』
「しっかりと嫌らしいものを出してくるわねぇ」
「……」
「ちょっとォ! 何か言ってくれてもいいじゃないの?」
『苔むしたブリキ兵』(緑)(1)
プログレーー機械
呪縛(プレイヤーにもプログレにもダメージを与えられない)
伸縮(制空、潜水をもつプログレを防御できる)
このカードが場に出たとき、カードを一枚引く。
BP3000 / HR0 / RV(機械)
そのイラストは、山中で廃棄されたまま時がたった機械兵が描かれている。
「随分幅広い趣味なのね」
尭史の代わりにジェローナが、聞こえない声でそう言った。
「ワタシのターン! プラグ、『塩漬け』しちゃうわ!」
『塩漬け』(白)
エポック
このカードが場に出たとき、対戦相手がコントロールする、点数で見たコストが2以下のプログレ1体、またはプログレ・トークンを対象とする。塩漬けが戦場を離れるまで、それを追放する。(そのプログレはオーナーのコントロール下で場に戻る。)
(5)、このカードを破壊する: このカードにより追放されたプログレを、例外的に、この効果を使用したプレイヤーのコントロール下で場に出す。この効果は対戦相手も使うことができる。
「コンバット、『マーメイド』でアタックしたら『学舎』でドローしてターン終了よん』
「トークンでブロックします。ドロ、プラ。『眼窩の狙い撃ち』を顕現します。手札を二枚捨ててください」
「通すけど、一枚は『グレディスの信仰』なのよね」
「……、……!」
びくりと身体が震える。
『グレディスの信仰』(白)(3)
エポック
すべてのプレイヤーがエポックを顕現する際のコストは(2)減る。
エポックが顕現されるたび、そのオーナーは自分のデッキの一番上を見る。その後、それを一番上か一番下かに戻す。
このカードが対戦相手の効果によって手札から捨てられる際、代わりにコストを払わずにこのカードを場に出す。
「ちょっと、尭史! 落ち着いて。なんだか息が荒いわ」
ジェローナには、物理的に空気の流れを感じることはできない。
しかし尭史の鼻息が、無駄に音を立てているのは聞き取れた。彼女は耳が良かった。
「鮎川選手、なんという不運ッ! 『慨嘆』を使った際にはなかったマッドネスに当たってしまったァ! これは相当なテンポの損失と思われます!」
選手たちが黙々とプレイしている今なら、そんな実況の声すら聞くことができた。
「じゃ、ターン貰っていいわねェ? ドローからそのままプラグしてマーメイド攻撃までよ」
「二体目のトークンでブロックです」
「エンド時に『学舎』でドローしたら、どうぞ」
すかさず尭史はテレパシーを飛ばす。欲した一枚を、即座に手に入れた。
「『無限弾倉の機関銃』を顕現したいです」
「制限級の装備品ね。困ったものだわ」
やれやれ、という目でそのカードを眺めていたが。
「いいわ、出してどうぞ」
(『学舎』とのコンボを生んでしまうカードを無効にしなかった?)
意外なプレイングに、尭史は驚いた。
『機関銃』は放っておけば、以降の展開を大幅に円滑化するカードだ。その強力さから、デッキに一枚しか入れられない制限を受けている。
一般的な見方をすれば、マストカウンターの一つなのである。
(装備品だから、それを身に着けるプログレが必要ではあるけど……するとあの手札は無生物を対象にとれない打消しかな)
「ワタシの番でいいのね。ドロー、そしたら『マーメイド』で攻撃」
「トークンがもうないので、ライフで受けます」
「それじゃメイン2、『ケルドミウム粒子の散布』かしら」
(こっちはこっちで制限級の時代カードだ)
FFの能力使用を強く抑制する、青の一枚。
非常に厄介ではあるものの、現状では放置するしかなかった。
「あとはエンドまでよ」
「……」
「尭史、どうしたの?」
伊豆浜からの宣言を受けたにも関わらず、手が止まっていた。
ジェローナへの指示を飛ばすこともない。
心ここに在らず、と言うかのように。
何も考えてもいないかのような、ぼんやりとした表情を浮かべていた。
(『清涼で甘美な日々』だ)
そしてようやく発された指示。
言うまでもなく、それはジェローナが耳を疑う言葉だった。




