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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
一日目: 閉会後(夜)
42/106

42 突然のショック

 ラップトップではライブストリーミングが流れている。『北田気の源世界』。

 昨年チャンプである北田気が、大会状況を自ら語るという趣旨のネット配信動画である。

 今回のテーマはもちろんスクロールカップ。

 自身の試合やカバレージを引き合いに、彼ならではの見解を語っていた。


 四人はそれをBGMにしながら、話し合いを続けていた。


「各FF固有の能力外のものとして、距離に関わらずFF同士で念話できるというものもありますよ」「なんじゃそりゃ」「わたくしとジェローナさんは、今後いつでもどこでもお話ができるんです」「私のことローナでいいわよ」「つーと試合中でも間接的に中村とコンタクトできるのか。一種のカンニングだな」「でもカンニングって対象が正解を知らないと共倒れよね」「それって俺のこと遠回しにバカにしてる?」「まあ中村のスペックはこの際二の次だよ。それが何の役に立つのかが問題だ」「お前ら揃ってさあ」「テストの答案と違って解答を出せるカードがデッキになければなんの意味もないってわけか」「そうなるんだ。だから結局はデッキありきってことになる」


そうした議論が遅々として巡り、なかなか進行を見せなかった。

「なんかわりいな鮎川。うまく力になれなくて」

「んなことねえよ。カードゲームってのは相手の出方が極度に流動的である以上、万能な解答ってのは存在しない。もしあるとしたら、それは『清涼で甘美な日々』のようなリスクを伴う」

「そうかもしんねけど」

「ローナのことを知ってくれて、少し肩の荷が下りた気分だ。それだけでも助かってるよ。言わせんな恥ずかしい」

「なによ。私のことがお荷物だって言うのね」

「だからなにピリピリしてんだよ」

「お二人仲良いんですね!」

「「どこが」」


その声に続いて。

ドアが二つノックされた。


「なんだ?」

尭史は時計を見る。21時。ホテルマンにしては少し襲いというか、無遠慮な気がした。

「パパラッチだったりしてな」中村が言う。

「そりゃ、ぞっとしねえ」

尭史はそっと歩き、魚眼レンズから外を覗いた。


「早崎……さん?」

 そこにいたのは。

 二回戦の相手、早崎常麿だった。


(なんだろう。この人にはすっかり嫌われたものだと思ってたけど。いやむしろ、だからか?)

 ドアを開けたものか、悩む。

 だが今は中村が一緒にいることもあって、会ってみることにした。


「すまなかった」

 開けると同時に。

 早崎はそう言って、深々と頭を下げた。


「え、……うぇ?」

 尭史にはなんの心当たりもない。ちんぷんかんぷん、ただ戸惑った。

 説明が続くだろうと早崎の言葉を待ってみる。

 しかし彼は黙ったままだった。

 そのまま数十秒が経った。


「えっと、とりあえず、入ってください」

 どうにもらちが空きそうになかったので、とりあえず誘ってみた。

「いいのか?」「いいですよ」「わたしは招かれざることをしてしまったというのに」「え、なんですかそれ」「なに?」

 ふたたび謎の沈黙が訪れる。

「うん、まあ、話聞くんで、とりあえず入ってください」

 会話の噛み合わなさを感じながら、尭史は部屋の中へと入った。


 後に続く早崎を見て、中村が雑にお辞儀をする。

「あれ。この人って」

 やはりジェローナも不思議そうな声を上げた。


 尭史が中村とともにベッドへ座り、早崎は備え付けのスツールへ。

「詫びと頼みがあって来た」

 座るなり、彼はそう言った。


「二回戦の戦いぶりが、わたしはどうしても受け入れられなかった。怒りに任せるまま、鮎川氏のデッキレシピをネットに公開した。それを謝罪したい」

 そして再び頭を下げた。


「えっと」

 まくしたてられて腰が引ける尭史。ただ、言いたいことはもう決まっていた。

「頭を上げてください。オレはそんなの気にしてないし、結果的に勝ち進んでるわけですし。そもそも早崎さんがそんなことをしていたことも、全然知りませんでした」


「しかし馬渡氏は、間違いなくそれを見ていた。でなければ『相対性の看破』や『鶴の仇返し』を投入したことが考えにくい」

 なお引かない早崎。それがちょっと鬱陶しくて、尭史は話題を変えた。

「でもオレは勝ちました。それより頼みってなんですか?」


「ああ、そうだ。こんなことをしておいて、烏滸(おこ)がましいとは思うのだが」

 早崎は背筋を伸ばす。そして、またもや頭を下げた。


「焔村光秀と必ず闘ってくれ。そして必ず勝ってくれ!」


 ややもすると、頼みでもなんでもないような言葉。

 しかし言外の違和感が、尭史に付きまとった。


「それは優勝してくれってことじゃねーの?」中村が問う。

「その通りだ。しかしそれだけではない」早崎が答える。

「要領を得ませんね。詳しく話してください」尭史が言った。


「判っている。ただ」

「ただ?」

「わたしは口下手だ。いわゆるコミュ障と言っていい。手間を、取らせると思う」

「そんな気はしてました」「今の話し方でも判っちゃったぜ」「だと思ったわ」「自覚あったんですね」

「む……」

 (半分は聞こえていないとはいえ)四者の同意に複雑な顔の早崎。


「まあ、良い。では聞いてくれ、焔村の――あの男の本質を」

 早崎は話しだす。

 その語りはたどたどしく、尭史と中村は途中何度も口を挟んだ。

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