41 一同集結!
「カーっド、が!」
中村の顔が真っ青になる。
「しゃべったああああ!!」
「うわっ。おまえのリアクション、フツーすぎ……!」
引いてみせる尭史。
「いやっ鮎川、だってこのカード」
そう言う目の前に、自分のFFを突きつける。
「サエナイあなたにハロー」
気だるげにポーズを取るジェローナ。
「はうあ」
「あっ。他にもいらっしゃったんですね。友達同士だなんて、幸先いいです」
アンネシーラは困ったように笑った。
中村はひたすらに困っていた。
「すると、なんだ」
その後尭史とジェローナから一通り説明を受けて。
中村の困惑は、一層強まっていた。
「鮎川は先週の地点で生きたジェローナを手に入れていて」
「おう」
「そのジェローナは並行世界に生きている本物のコピーで」
「ええ」
「この、えっとアンネシーラもまた別の並行世界の投影で」
「はい」
「そもそもS.N.o.W.の背景ストーリーは真実、と」
自分で買ったウコン飲料を額に当てる。
知恵熱が出そうだった。
「なんかもう、唐突すぎて言葉になんねーよ」
「ま、一気に理解するのが酷なのは判るけどさ」
「生きてる私が見えるようになったんだから、信じないとは言わせないわよ」
「これからよろしくお願いしますね」
三者三様の言い分に、中村は押し負けかけた。
「なんだ、その、よろしくも何も。お前はそもそも何者だ?」
苦し紛れにアンネシーラへ問う。
「ああっすみません! 申し遅れました!」
片足を引いて反対を曲げ、カーテシーの姿勢。
「『地の妖楽士、アンネシーラ・フォルカウ』です。生まれのメンブレンは、そのものが美意識を持つ地球。そこで笛を吹いておりました」
「そのものが美意識ってどういう意味かしら?」
「地球がまるで生きているかのように審美眼を持っているのです。その眼鏡に適う者ほど不思議な能力を得ておりました」
「聞く分には面白いけど、住みたくはない世界だな」
「心地よいところですよ」
中村は思う。それはお前にとって都合がいいだけじゃないのか。
実際アンネシーラは美しい。耳の鋭さが凛々しいエルフだった。
「考えたかねーが、ちょっとだけ飲み込めてきたぜ。それで鮎川」
中村が向き直る。
「今日の尋常じゃねえドローも、そのジェローナが関係してるのか?」
「そうだよ」
事もなげに答える。
「ここにいるジェローナには、カードに書かれた以外の特殊能力がある。それが」
「『私のオーナーは、自身のトップデッキを自分の意志で操作できる』」
ジェローナがセリフを奪った。
「今引き操作、か。なるほどそりゃ納得だ」
「話が早いな」
「でなきゃ、『清涼で甘美な日々』の説明なんざつくハズないだろ」
しかし、と続ける。
「そういうことなら安心だな。今後毎試合、『清涼で甘美な日々』を撃てば勝てるってわけだろ?」
「それができたら専用デッキ組んでるよ」
「お。それもそうか。なんでそうしないんだ?」
「能力を使えるのは、百回まで。使い切ったら消滅するからよ」
「回数制限があるのか。それであと何回残ってるんだ?」
「三回のマッチ・七試合で、合計38回能力を使った。だから62回」
「ペースとしちゃ悪くないじゃないか」
「そう見えるのも無理はねえけど……」尭史が言いよどむ。
「能力を使うほど、反動で通常のドローの質が悪化するのよ」
ジェローナは平気な顔をしている。
「素の状態での尭史のドローは、すでに期待できない状態まで落ち込んでるの。それを補うため、明日はよりハイペースで能力を使わざるを得なくなるわ」
「おいおい、随分シビアだな」ぎょっとした顔の中村。
「無理からぬことよ。これは創生導師が気まぐれで与えた特殊能力であって、才能でもなければ魔法でもないんだから」
「『清涼で甘美な日々』を使うには、Fmが溜まる5ターン目まで耐えた上でこれを引き、そこからさらに10枚を操作する必要がある。ファーストハンド含めたすべてで能力を使うと、20回分も消費することになる。だから」
尭史はまとめに入る。
「『清涼で甘美な日々』はできれば使いたくない。ローナを認識できたところで、中村。おまえには、これに頼らない新しい勝ち方を一緒に考えて欲しいんだ」
「なるほど、理屈は判った。手伝ってやりたいとも思う」
頭を抱えながらも、口では強がる中村。
「でもなおのこと、何が出来るかは判んねえよ。俺はどっちかっつーとプレイヤーより、コレクターだ。プレイングは鮎川の方が上手い。それは判ってるだろ?」
神ドローを前提としたコンボなんてな。そう言ったところで、一つ気づく。
「ひょっとして、アンネシーラ。お前さんにも何か能力があるのか?」
ぼけっとしていたエルフに、そう尋ねた。
「あ、はい。その、一応……なんですけど」
「言ってみろよ」
「ルーン文字には、こう書かれてます」
いつかのジェローナと同じように、アンネシーラは薄いテキストを読み上げた。
「このカードのオーナーは、非公開領域のカードをサーチすることができる」
尭史と中村は、揃って首を傾げた。
「なに? わたしの時より随分反応が弱いわね」
「いや、非公開領域ってのが、なんとも。デッキのことか?」
「違います。えっと……」
「あ、俺? 中村武」
「ではタケシさん。わたくしを、あのパックのところまで運んでいただけますか?」
「そりゃ、いいけど」
言われた通り、アンネシーラは並べられたままだった23パックの上に置かれる。
そして数秒。
「右から5,13,19番目の三つのパック、開けてみてください」
「あっそういうパターンね」
引きつった笑いを浮かべながら、中村は三つのパックを開封する。
そのすべてに、最高レアリティのカードが入っていた。
「サーチって、レアカード抜きのほうかよ」
「コレクター的には、この上なく嬉しいけど」
「バトルにはなんの影響もない能力ね……」
「はい。なんだか御免なさい」
二人と二枚は、なんともいえない空気に包まれた。




