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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
一日目: 閉会後(夜)
41/106

41 一同集結!

「カーっド、が!」

 中村の顔が真っ青になる。

「しゃべったああああ!!」


「うわっ。おまえのリアクション、フツーすぎ……!」

 引いてみせる尭史。

「いやっ鮎川、だってこのカード」

 そう言う目の前に、自分のFFを突きつける。

「サエナイあなたにハロー」

 気だるげにポーズを取るジェローナ。

「はうあ」

「あっ。他にもいらっしゃったんですね。友達同士だなんて、幸先いいです」

 アンネシーラは困ったように笑った。

 中村はひたすらに困っていた。



「すると、なんだ」

 その後尭史とジェローナから一通り説明を受けて。

 中村の困惑は、一層強まっていた。


「鮎川は先週の地点で生きたジェローナを手に入れていて」

「おう」

「そのジェローナは並行世界に生きている本物のコピーで」

「ええ」

「この、えっとアンネシーラもまた別の並行世界の投影で」

「はい」

「そもそもS.N.o.W.の背景ストーリーは真実、と」


 自分で買ったウコン飲料を額に当てる。

 知恵熱が出そうだった。

「なんかもう、唐突すぎて言葉になんねーよ」


「ま、一気に理解するのが酷なのは判るけどさ」

「生きてる私が見えるようになったんだから、信じないとは言わせないわよ」

「これからよろしくお願いしますね」

 三者三様の言い分に、中村は押し負けかけた。


「なんだ、その、よろしくも何も。お前はそもそも何者だ?」

 苦し紛れにアンネシーラへ問う。

「ああっすみません! 申し遅れました!」


 片足を引いて反対を曲げ、カーテシーの姿勢。

「『地の妖楽士、アンネシーラ・フォルカウ』です。生まれのメンブレンは、そのものが美意識を持つ地球。そこで笛を吹いておりました」

「そのものが美意識ってどういう意味かしら?」

「地球がまるで生きているかのように審美眼を持っているのです。その眼鏡に適う者ほど不思議な能力を得ておりました」

「聞く分には面白いけど、住みたくはない世界だな」

「心地よいところですよ」

 中村は思う。それはお前にとって都合がいいだけじゃないのか。

 実際アンネシーラは美しい。耳の鋭さが凛々しいエルフだった。



「考えたかねーが、ちょっとだけ飲み込めてきたぜ。それで鮎川」

 中村が向き直る。

「今日の尋常じゃねえドローも、そのジェローナが関係してるのか?」


「そうだよ」

 事もなげに答える。

「ここにいるジェローナには、カードに書かれた以外の特殊能力がある。それが」

「『私のオーナーは、自身のトップデッキを自分の意志で操作できる』」

 ジェローナがセリフを奪った。


「今引き操作、か。なるほどそりゃ納得だ」

「話が早いな」

「でなきゃ、『清涼で(ハッピー・)甘美な(アイス・)日々(クリーム)』の説明なんざつくハズないだろ」


 しかし、と続ける。

「そういうことなら安心だな。今後毎試合、『清涼で(ハッピー・)甘美な(アイス・)日々(クリーム)』を撃てば勝てるってわけだろ?」

「それができたら専用デッキ組んでるよ」

「お。それもそうか。なんでそうしないんだ?」

「能力を使えるのは、百回まで。使い切ったら消滅するからよ」

「回数制限があるのか。それであと何回残ってるんだ?」


「三回のマッチ・七試合で、合計38回能力を使った。だから62回」

「ペースとしちゃ悪くないじゃないか」

「そう見えるのも無理はねえけど……」尭史が言いよどむ。

「能力を使うほど、反動で通常のドローの質が悪化するのよ」

 ジェローナは平気な顔をしている。

「素の状態での尭史のドローは、すでに期待できない状態まで落ち込んでるの。それを補うため、明日はよりハイペースで能力を使わざるを得なくなるわ」


「おいおい、随分シビアだな」ぎょっとした顔の中村。

「無理からぬことよ。これは創生導師が気まぐれで与えた特殊能力であって、才能でもなければ魔法でもないんだから」


「『清涼で(ハッピー・)甘美な(アイス・)日々(クリーム)』を使うには、Fmが溜まる5ターン目まで耐えた上でこれを引き、そこからさらに10枚を操作する必要がある。ファーストハンド含めたすべてで能力を使うと、20回分も消費することになる。だから」


 尭史はまとめに入る。

「『清涼で(ハッピー・)甘美な(アイス・)日々(クリーム)』はできれば使いたくない。ローナを認識できたところで、中村。おまえには、これに頼らない新しい勝ち方を一緒に考えて欲しいんだ」


「なるほど、理屈は判った。手伝ってやりたいとも思う」

 頭を抱えながらも、口では強がる中村。

「でもなおのこと、何が出来るかは判んねえよ。俺はどっちかっつーとプレイヤーより、コレクターだ。プレイングは鮎川の方が上手い。それは判ってるだろ?」



 神ドローを前提としたコンボなんてな。そう言ったところで、一つ気づく。

「ひょっとして、アンネシーラ。お前さんにも何か能力があるのか?」

 ぼけっとしていたエルフに、そう尋ねた。


「あ、はい。その、一応……なんですけど」

「言ってみろよ」

「ルーン文字には、こう書かれてます」

 いつかのジェローナと同じように、アンネシーラは薄いテキストを読み上げた。



「このカードのオーナーは、非公開領域のカードをサーチすることができる」



 尭史と中村は、揃って首を傾げた。

「なに? わたしの時より随分反応が弱いわね」

「いや、非公開領域ってのが、なんとも。デッキのことか?」

「違います。えっと……」

「あ、俺? 中村武」

「ではタケシさん。わたくしを、あのパックのところまで運んでいただけますか?」

「そりゃ、いいけど」


 言われた通り、アンネシーラは並べられたままだった23パックの上に置かれる。

 そして数秒。

「右から5,13,19番目の三つのパック、開けてみてください」


「あっそういうパターンね」

 引きつった笑いを浮かべながら、中村は三つのパックを開封する。

 そのすべてに、最高レアリティ(スーパーレア)のカードが入っていた。


「サーチって、レアカード抜きのほうかよ」

「コレクター的には、この上なく嬉しいけど」

「バトルにはなんの影響もない能力ね……」

「はい。なんだか御免なさい」

 二人と二枚は、なんともいえない空気に包まれた。

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