表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/106

34 ひるまぬ勇気

「さあ。というわけで、鮎川対馬渡の二本目は鮎川選手が勝利を収めましたッ。三本目も気になるところですが……その前に。準々決勝進出者がかなり決まってきております! ここで錚々(そうそう)たるベスト8の面々を紹介しましょうッ!!」

 実況の一声で、五人のオタクにスポットライトが当てられる。


「佐藤選手に続く二人目ッ! 単色のウィニー、小倉秀介!!」

 小倉は小恥ずかしそうに頭を下げた。


「ビート対策は完璧だ! 白青コントロール、伊豆浜(いずはま)庄兵衛(しょうべえ)!!」

 観客席へ投げキッスをする。なお伊豆浜は男である。


「ギャンブルなら絶対に敗けん! 浪速の魂見せたる。黒赤緑ミッドレンジ、逆嶋(さかしま)謙造(けんぞう)だ!!」

 逆嶋は仁王立ちしたまま、動じない。


「コンボデッキならコイツが怖い!! 石川のベテラン、光場(ひかりば)賢一だ!!」

 その場で回り、踊って見せる光場。


「若き王者が返ってきたッ。ご存じ三重(みえ)の極み、北田気(きたたけ)源の登場だーーーーッ!」

 舞台慣れした様子で、北田気は手を掲げてポーズをとった。


「これで残るはあと二人ッ! それではここで、焔村対植木の戦いを見てみましょうッ!」


 メインスクリーンの映像が、またもや切り替わる。

 尭史と馬渡は、ふたたび静かに向かい合うことになった。


 尭史のデッキシャッフルは変わらず審判が行う。

 馬渡が当然のように先攻を宣言した後、互いに手札をチェックした。



(……果てしなく微妙だ)

 尭史には、それ以外の感想が出てこなかった。


「それは、どのへんが?」ジェローナが問う。

(二本目は、『メルバリスのクローン実験』『糾弾』『慨嘆』と1コスの妨害カードが揃ってたし、残りもFmにちょうどいい多色カードだった。でもこの手札には、妨害が『慨嘆』の一枚のみ。多色もアンスディイン(横置き)が一枚だけだ。かといって一本目に比べたらだいぶマシなんだよな)


「悩むなら、能力使っちゃえばいいじゃない」

(そう簡単にいくかよ。『引きが悪くなる』っつーデメリットの兆候(ちょうこう)が出始めてる以上、回数の限られた能力を無駄遣いしたかねえ)

「ここで負けたら意味無いじゃない」

(優勝できなくても意味無いんだよ)


 逡巡(しゅんじゅん)に逡巡を重ねる。

 考え込んだ末。尭史はこう言った。

「キープします」


「じゃ、ターン貰います。プラグ、どうぞ」

 そしておもむろに、三本戦が始まった。


「ドロー、プラグ。エンドまで」

「ドロプラ。『農民の捧げもの』でブーストです』


 立ち上がりは二本目とさして変わらない。

 どちらも生物を出さず、殴ることもせず。

 一見すると穏やかなやりとりが、しばらく続いた。


 だがそれも4ターン目までの話であった。


「ドロー、プラグ。『青空泳ぎの大蛇』召喚、通りますか?」

「……通ります」


 一見すると尭史の顔は変わらない。

 しかしジェローナにさえ、それが分水嶺だと感じられた。

 実際その後の尭史の言葉は、彼女の予想通りのものだった。


マスト(must)カウンター(Counter)って用語がある)

 沈んだ調子のテレパシーが飛ぶ。

 口に出していれば間違いなくため息交じりだ。ジェローナはそう思った。

(意味はそのまま。妨害しなければ、圧倒的不利を(こうむ)るカードのことだ)


「それが今回は『大蛇』なの? さっきの『マンモス』とか『ヴィシャス』に比べれば、あまり脅威じゃなさそうだけど」

(確かに『大蛇』の攻撃力はそれほどじゃない。でも一度コイツを出されると、相手のリソースをかなり(うるお)してしまうことになるんだ)

「それってFmのこと?」

(珍しいな、50点の回答だぜ。『大蛇』の恐ろしさは、もう一つある)


 返しのターン、尭史は『虚空漂着』(15話参照)で『大蛇』を除去する。

(これじゃ遅いんだよ)

 その言葉の意味を、ジェローナはすぐに知ることとなる。


「ぼくのターン。『遺跡砕きの無法オーク』を召喚します」



『遺跡砕きの無法オーク』(黒)(緑)(5)

 プログレ――オーク

 Fmになるとき、アンステディされる。

 無頼(このカードは、対戦相手がコントロールする顕現や能力の対象にならない)

 このカードが攻撃したとき、または死亡したとき、手札を一枚捨ててもよい。そうした場合、あなたの墓地にある、点数で見たコストがあなたのFmの枚数以下のプログレを一体選んでバトルエリアに出す。ただし種族: オークのカードを選ぶことはできない。

 あなたの墓地とFmの枚数が合わせて15枚以上なら、このカードの元々のBP10000 / HR8 になる。

BP5000 / HR4 / RV (オーク)




「墓地から直接呼び出すの!?」

(ああ、そうだ。それがタッチ黒の利点、(Re-)アニメイト(animation)。墓地を肥やすという準備を必要とする反面、比較的少ないリスクで生物を場に呼ぶことができる。その強力さは説明しなくても判るだろ)

 ジェローナはぎこちなく頷いた。


(本来こいつも『大蛇』と並ぶマストカウンターなんだけど、通しちまったもんは仕方ない。次のことを考えないとならねえ)

 そこからの尭史の思考は早かった。


(『オーク』の除去はできなくもない。『無頼』能力のせいで単体除去は不可能だけど、ジェローナの能力でも全体破壊でも、やりようはある。しかし(leaves-)(the-)(battle-) (field)で『大蛇』を呼び出されるから盤面(ばんめん)的損失。全体破壊はコストが高いからテンポも損失する。全体バウンスなら誘発しないけど、そんなものデッキに入ってない。『氷雪嵐中の霹靂』(ドロー付き全体火力)? ダメだ、強化された『オーク』を焼くほどのコストは払えない)


 用語のオンパレードには触れず、ジェローナは問う。

「さっきと同じコンボは決められないの?」

(不可能だ。『群れ』『ヴィシャス』どちらも手札にない。『オーク』が防御者を確保してくるからダメージ量も足りなくなる。そもそも今から引き寄せてたらその間に殴られて死ぬ)

「だったら」


 やや不安げに尭史を見上げるジェローナ。

 おぼろげだったその疑念はやがて、尭史が答えると同時に大きく(ふく)らんだ。



(……あの『必殺技』を、使うしかない)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ