18 不可視の忍び寄り
「カスーパーレアで大型生物呼び出して決着とは!」
そのころ観客席では。
ある男が尭史の試合を見て、笑い転げていた。
「やー。派手なことしますなん。流石は滝登りサン」
福岡選考会優勝者、焔村光秀である。
あんまり体を揺らすので、腰のウォレットチェーンが軽い音を立てていた。
「やかましい。焔村ァ、ちったあ静かにしいな」
すると隣の男が、ドスの聞いた声で制した。
厚いまっさらなデニムに、和柄のアロハシャツ。
月居とは別の意味で、場にそぐわない格好である。
「おまえまでそないに目立ってどないすんねん」
「だってオカシイじゃないですのん。あんなプレイング、誰でも怪しみますでしょん」
そんな男に対し、焔村はなおもあっけらかんとしていた。
「仮に『持ち主』じゃなくたって――や。むしろ『持ち主』でないヤツこそ、ありゃチートにしか見えない。そう思いませんのん、逆嶋サン?」
逆嶋謙造。
その服装から、疑われたことは数知れないが――紛れもなく、大阪府内ポイント獲得数トップの男である。
「せやからナオのコト、やろが」
どこかチンピラ然としながら。
しかし声量は落として、逆嶋はまた諫める。
「その理屈をワイらが知っとるコト知られんのは、得策ゃあらへん」
「ここで話してたって、判るヒトなんかいないと思いますけどねん。逆嶋サン、以外と小心者ですなん」
「そこの海に沈めたろかワレ」
焔村は口笛を吹いた。
「逆嶋サンとは仲良くやりたいですからねん。そう言うなら静かにしますけどん」
今度は手をヒラヒラさせて、焔村が言う。
「誘われた価値、ありましたでしょん? あの滝登りサンが、おそらく逆嶋サンの準決の相手。そして」
「せや」
焔村の言葉を手で制し、逆嶋が続けた。
「今大会第三の『持ち主』、やな」
「はいですのん。もっとも、順番は前後するか知れませんし。まだいる可能性も、否定できませんがねん」
手の動きはそのままに、肩をすくめる。実に落ち着きがなかった。
「おーかた居れへんやろ」
焔村の挙動に顔をしかめながら、逆嶋。
「ワイの『セディアル』が、そう言ぅとる」
「そうなんですのん? 国内に三人とは、以外と少ないものですねん」
「ぎょーさん居ったら困るで、ホンマ」
「それもそうですねん。ここは喜んでおきましょん」
すると、逆嶋が急に黙り出す。
「どうしましたのん?」
焔村はきょとんとしながら、男を見つめる。
「んや、セディアルが……おぅ、何見とんじゃ」
「照れてますのん?」
「キショいやっちゃな。人生変えたろか」
これ見よがしに指を鳴らす。焔村はニヤニヤしながら首を振った。
「どうも、ちっこい気配があるらしいで。まだ開封前のFFが居るんやないかて」
「開封前ですのん?」
わざとらしく顎に手を当てる焔村。
「例の、先行販売のパックの中に入ってるんですかねん」
「そこまで知らんわ。公式物販の既存パックかも判らへん」
「何にせよ、本戦参加者の手に渡ることは少なそうですねん。万が一手に入ったとしても、大会中のFF変更は認められないわけですし」
「せやな。ワイらが考えるべきは、あの男の攻略法や」
画面の向こう。
彼らより早く二回戦に挑んでいる男へと、逆嶋はガンを飛ばす。
「千葉代表、鮎川尭史の!」
「……攻略法ってのは、アレですのん。籠絡する方法ですのん? ADV的な意味で」
「耳から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろか」
「やー、怖い怖い!」
焔村はまたやかましく声を挙げるのだった。




