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000 Rocket-Powered Turbo Slug

 ※ただのあとがきです。長くて小難しい裏話なんで、物好きを自負する方だけお読みください。



 こんにちは。賀来大士です。

 足かけ三年以上に渡って書かれた、名ばかりのカードゲーム小説を読んでいただきありがとうございました。


 とはいえ世の中には、本文より先にあとがきを読むという奇特な人もいると電撃文庫で見ました。

 私は都市伝説だと思うのですが。

 以下、ネタバレを避けながらこの作品周りについて話します。




 この話に着手する前、二つの作品に触れました。

 アニメWIXOSS(selectorのほう)と、マンガWizard's Soulです。


 いずれも「女の子の主人公がカードゲームをする、そして強い」という点で共通しており、こういうのもアリか、と単純に驚きました。


 またどちらも、「作品内ではゲームのルールがさっぱりわからない」。こちらはさらにぶったまげました。

 販促も兼ねているカードゲームアニメでは、観ながらルールを覚えてもらうべく、それなりにゲームの説明が入ることが多い、と私は認識していました。

 でもそれはあくまで商売上の戦略のひとつにすぎない。必須じゃあないんだな、と。

 架空のゲームであるWizard's Soulはともかく、WIXOSSもこうだったのは、結構衝撃でした。


 考えてみれば、サブカルではよくあることなんですけどね。

 ボクシングが判らなくてもあしたのジョーは読めるし、バスケが判らなくてもスラムダンクは面白い。

 スポーツはおろか、将棋や囲碁だって、理解できなくても楽しめる作品は既に多くあります。

 テニスを知れば知るほど意味がわからなくなる、テニヌってのもありますし。


 こうした経緯があって、自分でもカードゲームものが書いてみたいと思いました。

 カードそのものの説明は極力省きつつ、カードゲームの面白さを浮き上がらせたい、と。


 そう決めると、設定が出来上がるのはとても早かったのを覚えています。

 カードゲームものの主人公は「高校生×エジプト人」から始まり、「熱血×カードの精霊」「女の子×女の子」などの前例がある。それらと被らなそうな組み合わせとして「女騎士×ランカー」。これはもう即決でした。

 そこに「カードゲームならではの異能」を加えれば、販促アニメではできないようなものが作れるという自信がありました。

 あとはいくつか書きたい場面、戦う相手、ぼんやりとしたラストが定まると、自然と書き始めていました。



 事情が変わったのは三回戦を書き上げた後でした。

 必殺技を祭り上げ、話として形作り、その波及を築いてから、ようやく気づきました。

 この必殺技は、最初の想定よりずっとオオゴトだ、と。


 昔からカードゲームは、非公開領域とランダム性がある分、イカサマとの縁が切れません。ゆえに、不審な勝利を強く疑う土壌はできています。



 それともう一つ。

 「日本人って、正当に疑うことができるんだっけ?」と思ってしまったのです。



 現代の法治国家は当然ながら、「疑わしきは罰せず」であるべきです。

 断ずるにふさわしい証拠がないなら、罰してはならない。


 けれど現実には、それさえ徹底されていません。痴漢冤罪などは、まさにこれです。

 モリカケ問題が取り沙汰されたのは、三回戦を書いた時より後ですが、これも好例でしょう。

(他にも思いつきますが、いらん方面からクソリプが飛んできそうなので割愛)


 ……じゃあこの「必殺技」は、どうだろう?

 証拠は誰一人提出できないけれど、イカサマとしか思えない現場を皆が目にしている。

 そんなとき、日本人は尭史を悪者にするか? しないか?


 私は、する、と思いました。

 まるで魔女狩りのように、理屈抜きで反発する者が出てくるな、と。


 そこからが大変でした。

 この国で、悪者だと疑われた者は、どんな扱いをされるのだろう? それによって、どんな気持ちになるのだろう?

 考えるだけでは判らなくなりました。つまり、完全にキャパオーバーです。

 自分では判断できないから調べたいが、調べ方さえ判らない。

 作中の環境も心境も変わったから、連載開始時の構想もかなり歪んでくる。

 

 結果、準々決勝から目に見えて更新ペースが落ちてしまいました。

 これはもう完全に、私の力不足です。



 それから二年ほどは、仕事にかまけてしまいました。

 あてもなく勉強して、気が向いた時に少し更新する程度です。


 それが改善したのは、2018年になってからでした。

 思いがけず「続き読みたい」の声をいただけて、ヨッシャまたやるか、となりました。


 いざ本腰を入れると、不思議なことに、あてもなかった勉強がとても役に立ちました。

 尭史含めた人物の思考や、変更を余儀なくされていた設定、決勝戦における清算、落としどころが、見えるようになっていました。

 特に歴史を学んだことの効果は、FFの能力のことに限らず、ここでは書ききれません。いい意味で大きな誤算でした。



 そういうわけで、本当に難産な作品でした。

 三回戦の余波に始まり、対戦相手、FFの存在の大きさなど、様々なものが連載初期からは考えられないものとなりました。エンディングさえ、当初とはまったく別物です。

「絶対に使うだろ」と思って序盤に解説したカードゲームの基礎知識が、結果的にあまり意味がなくなってしまったのも、こうした事情があります。(もし本当に都市伝説の方がいらっしゃったら、聞きなれないカタカナは読み飛ばしてもらっちゃっていいとさえ思います。)


 後半で唯一想定通りになったのは、軟弱な主人公がラスボスに啖呵を切るシーンしかありません。これだけは、彼が主人公らしい主人公になるために、外せないイベントでした。



 ……結局何が言いたいんだ、と言われれば……、まあいろいろあるんですが。


(好きなことの勉強はいつか役に立つぞ、とか)

(気になった作品の作者には、どんどん「もっと作って!」とアピールしようね、とか)

(そういうのもちょびっと、あるんですけど)


 立ち止まって考えて、遠回りして道草食う方が、急ぐよりいいことあるかもよ。

 ってことだったなあと思います。


 2015年の私は、必殺技の影響について深く考えず、勢いで書くこともできました。

 でもそうしていたら、決して自分らしい、独特の物語にならなかった。

 あのとき立ち止まって、遠回りしたことに、私は満足しています。



 さて。

 この『かみどろ! -異世界転写の女騎士-』は、展開を大きく変えた経緯もあって、色々と修正を加えたいなと思っています。

 一度この「なろう」に投稿したものはこのまま第一稿として手を加えず、シェイプアップしてまとめ上げた第二稿を整えたいところです。

 その第二稿がどうなるのかは、まだ自分でも判らないのですが。

 あと用語集もどうなるか判らないのですが!


 ……本当に長くて小難しい話になってしまいました。

 次はもっとこう、主人公がアホな感じのやつとか書きたくなりますね。


 最後に重ねまして、ここまで読んでいただきありがとうございました。

賀来大士

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