光と闇
見えない。
僕の世界が闇に包まれていく。
僕は深淵を覗きすぎたんだ。
気づいたら僕は、深淵に覗きかえされていた。
まずい!と思ったときには、遅かった。
視界の端っこから、黒い液体のようなものがじわじわと僕の光を奪った。
見えない。
あぁ できることならもう1度 君の顔が見たい。
贅沢すぎる願いだろうか。
見ることはできなくても、思い出すことはできる。
君は、僕とは正反対の人だっだ。
まるで君は、太陽のような人だった。
いつも、笑って僕を待っていてくれた。
僕は思う。
君が光の人だとしよう。
そうしたら、僕は闇の人だ。
君は人を疑うことを知らないだろう。
僕は疑って疑って それでも、信じることができないときがある。
君は、自分のこと知っているのだろう。
心の深淵まで。
君は光の人だから、心の深淵も明るいのだろう。
でも、僕は違う。
自分の心なんて分かりやしない。
僕の心の深淵は、本当に本当に 暗いんだ。
だから、僕は自分のことが分からない。
あぁ いろいろ思い出したけど結局は、自分の悪いところばかり思い出してしまった。
嫌な気分だ。
君の声だけでも聞きたいな。
「...じょうぶ?....ねぇ.......」
今、君の声を聞いた気がした。
「ねぇってば!!」
君は、泣いているような気がした。
こんなときだから、きっと空耳か。
どのみち見えはしない。
「なんで、そんなとこに立っているの?」
やっぱり、後ろから君の声が聞こえる。
僕は、後ろを振り替える。
やっぱり見えない。
いや、見える。 はっきりとはでないが、闇の中にぼやぼやとしているが確かにそこに、君がいる。
「あなたは、心の深淵を見すぎたのよ。私をよく見て。」
もう1度君を見てみた。やはり、黒の中に白いものがぼやぼやしているように見える。
「見えない。僕には君が見えない。君だけじゃない。世界が見えないんだ。」
君は、泣くのを我慢するように言う。
「大丈夫よ。私にはあなたが見えているから。」
僕は、少しむきになる。
「君は、心の深淵が見えているからそんなことが言えるんだ。」
君は、慌てたように困ったように言う。
「違う。違うわ。私にだって自分の心の深淵が見えない。だって...私だって自分のことが分からないもの。」
僕の悪い癖が出てしまう。信じられないのだ。
「そんなわけない。」
「私だって怖い。自分の中にある心の深淵が。」
僕の中に怒りが沸々と沸き上がる。
「じゃあ なんでそんなに光っていられるんだい?
僕には無理だよ。」
「簡単よ。自分を信じればいいわ。」
答えは単純だった。
信じる? 自分を? どういうことだ?
「どんなことだって自分が正しいと思えばいいわ。心の中だけで。そうすれば変われる。光が見えるようになるわ。」
心の中で自分を信じる。
僕にもできるかもしれない。今まで、自分を信じることができていなかった。
変わろう。僕。僕自身を信じるんだ。
僕は、目を閉じて君から教わったことを繰り返す。
信じろ、僕。僕自身を、信じろ。
どれくらい、時間がたっただろうか?
まだ、君は僕の前で立っていてくれているのだろうか?
恐る恐る目を開く。
「あぁっ!」
見えた。光が。たくさんの世界の色が。
そして、君が。
「見えたのね。私も、世界も。」
「あぁ。」
「なら、帰りましょ。私たちが居るべき世界へ。」
その一言で気がついた。
ここは、心の中の世界。
僕は、心で一番深い"心の深淵"という、谷の手前に立っていたのだ。
今まで、ここしか知らなかった。
でも、今は違う。
君に、世界は広いって教わった。
大丈夫。僕は歩ける自分の足で。自分の目で見える。
「行こう。」
僕は、初めて心の底から笑えた気がした。
だって、僕の心の世界に光が差し込んだんだ。
読んでいただきありがとうございました。
初めての投稿なのでかなり緊張しました。
本当に読んでいただきありがとうございました!!!