第3話 ちょっと暗いお話
お久しぶりです。
別に期間をあけたからといって文字数が増えるわけでもありません(汗
寧ろ元々少ない文章力が劣化しているのではないかと恐怖(ガタブル
そうそう、全く別の話ですがハーメルンさんにアカウントを作ってみました。
二次創作、再開するかどうかは分かりませんが。
次に俺が目覚めたのはベッドの上だった。
「今度はどこだ……? 現代か?」
部屋の中を見渡してみると、どうやらここは仮眠室のような所らしい。
そして俺は何やら着慣れない服を着ていることに気が付いた。
「これは……「哲也さん、起きましたか」ここは何処だ?」
「ここはですね、軍艦の中です」
軍艦。
恐らく俺が想像しているもので間違いはないだろう。
あの大砲を撃ったり戦闘機を発進させたりする戦争用の船のことだ。
「簡単に俺の立場とこの時代の状況、真紀のことを教えてくれ」
「あ、はい。まずですね………」
神がそれを説明しようとした時、勢いよく仮眠室の扉が開かれた。
「斉藤哲弥一等空士、緊急発進だ!」
「え……」
突然入ってきた俺と同じく軍服を着た四十代くらいの男が告げた。
訳が分からない。取り敢えず何となくではあるが自分の事を呼んだのだろうとは気づいた。
「仮眠でボケたか!直ぐに所定の位置につけ!」
「は、はい!」
勢いに飲まれ、俺はベッドから飛び起きて部屋を出る。
「哲也さん、左手に向かってください」
「了解」
神の指示を受けながら進んでいくと、格納庫にたどり着く。
そして、俺の前にあったのは戦闘機だった。
「これに、乗るのか?」
「はい」
勿論前々世ではただのサラリーマンだった俺である。当然のことながら操縦経験なんてものは民間のものも軍用のものもありはしない。
「そこのベルトを着用してそれからそのスイッチを………」
そして神、何故そんなに詳しいんだ。
そんな事を考えていると、装着した通信機器から音声が聞こえた。
「斉藤哲弥一等空士、発進準備は出来ましたか?」
その声は聞き覚えのある声。
「美弥、か」
「今は職務中です。苗字と役職でコールしてください」
神によって知識が一瞬にして刷り込まれていく。
「了解。斉藤発進指令通信補」
「よろしい」
顔は見えないが、恐らく彼女は微笑を浮かべているのだろう。
「目標は敵空軍基地並びに同位置にある都市中心部の通信棟です。敵軍機の発進を確認したため、迎撃並びに攻略作戦が行われます」
「緊急発進からそのまま作戦か」
初陣。いや、どうやら身体自体は感覚で掴んでいるらしい。
何となくではあるが操作は分かる。
「無事に帰ってきてちょうだい」
「了解」
俺の返事とともにハッチが開く。
そして格納庫全体にアラートが鳴り響いた。
『第八艦隊、空母飛鳥艦載機"飛天"発進スタンバイ』
「滑走路周辺にいる作業員は直ちに退避して下さい」
アラートの機械音声と、美弥の言葉が混ざり合う。
「斉藤哲弥、飛天。行きます!」
一度は言ってみたかった。
若干気合を入れて飛び立ったものの、自分よりも先行していた機体が迎撃を終えていた。
従ってそのまま都市部並びに軍基地への作戦行動に移ることになる。
「斉藤空士、貴官は都市部への攻撃に移れ」
「了解」
そして、目的地にたどり着くまでの間に操縦方法をさらい、慣熟飛行のつもりで飛んでいる。
「そう言えば神」
「……? 何でしょうか」
「真紀の居場所を聞いていないのだが」
そう、それが俺が来た原因なのだ。それが達成されなければ何の意味もない。
「分かりません」
「何だって?」
「分からないんです。ただ一つ言える事は、先ほどの空母・飛鳥には乗艦していないということだけです」
空母に乗っていないことは分かる。流石に年齢的なところで乗艦はできなかったのだろう。
「まあいい。これが済んだら戻れるんだろう。その時に調べよう」
そうこうしている間に、目的地が視界に入る。
「攻撃目標は、中央にあるメガリア中央情報局ビルです」
その名前を聞いて、ここがパラレルワールドであることを改めて理解する。
「空士、俺も参加します」
レーダーに映る味方シグナル。記憶によれば最近配属された新兵のようだ。
「ならばお前が先行しろ、俺は尻拭いだ」
「了解です」
そう言って進む新人兵。
「照準………一致。ミサイル発射!」
威勢のいい声と共に放たれたミサイルは目標に命中する。
しかし壊れない。
「壊れないぞ!」
慌てる新兵と、判断に迷う俺に美弥の声が届く。
「ビルの軸を崩すために地上付近を攻撃する必要があります」
「「了解」」
一度旋回して再度攻撃進入を行う。
目的の箇所を狙うには、かなり高度を低くして進入する必要がある。
速度を落として接近する。
目標まであと300メートルほどに達した時突然神が反応した。
「!! 哲也さん、真紀さんの反応を感知しました」
「どこで!」
この状況でその言葉は聞きたくなかった。
「この付近半径300メートル以内です」
間違いない、真紀はこの街にいるのだ。
「どういうことだ!?真紀は俺達の子供じゃないのか?」
「考えがたい事ですが、そうとしか考えられません」
ならばこのビルを破壊した時、真紀に何らかの影響は出るのではないか。
そんな考えが頭をよぎる。
「斉藤空士、まだ壊れません!」
既に2撃与えている新兵が言う。
本当に壊しても良いのか。
壊したら不味いのではないか。
真紀がもし瓦礫に潰されてしまったら。
爆発音が響く。
3撃目が当たったようだ。
「真紀の居場所が分からないとどうしようもない」
それは事実だ。
もしその居場所が分かったならば瓦礫を打ち壊せば済む。
もしかしたら今の攻撃の間に避難しているかもしれない。
4撃目。
進入軌道に沿って飛行していると、また神が反応する。
「哲也さん、あれです!」
ビルの正面から伸びている大きな道路。
その真ん中に人影があった。
攻撃のためか、車の通りはなく人通りもない。
「逃げ遅れたのかッ………」
5撃目を与えようとする新兵。
その時通信が入る。
「………こち…第八艦……飛鳥……敵…強襲…被…甚大……」
「あ…あ、あ……ああ……ッ」
それは間違いなく、さっきまで聞いていた声で。
そしてそれは聞き覚えのある船の名前で。
示している状況は最悪のものだった。
「美弥ッ………!」
進路を変えて戻ろうとする俺を神が止めた。
「だめです、行ったら真紀さんが!」
「しかしっ! それでは美弥が!」
「美弥さんは別世界には干渉しません!」
その言葉で俺は動きを止めた。
そうなのだ。
真紀はどこかが消滅すれば全てが消滅する。
でも美弥はどこかの美弥が消えても他に影響はない。
けれども。
「理屈じゃないんだあああああああああ!」
俺は向かおうとする。
「……哲、哲弥……? 聞こ…る?」
通信機から届く美弥の声。
「み、美弥……?」
「こんな……戦い…なか…ら、あの娘も……うちに……」
そして全て蘇る"この"哲弥の記憶。
それは戦争が始まる数ヶ月前。
「ねえ、哲弥見てみて! この子どう?」
俺達夫婦は、子供が出来なかった。
それが何年も続き、美弥は養子縁組に目を向けた。
当時の俺は、そんなみだりに親子関係を作ってもいいものか疑問で、美弥の提案を悉く却下していた。
しかし、その日は違った。
美弥が見せたその写真はメガリア国の養育施設が出した広告に載っていた。
「何だか他人って思えないのよ」
黒髪の、あどけない中に見え隠れする暗い表情。
日本人とのハーフと書かれている少女は美弥の言うとおり、どこか他人には見えなかった。
「じゃあ、電話してみるね」
一日話し合って、合意した俺達はその施設に電話をした。
相手方も、大層その少女を心配していたようで引き取り手が見つかったと喜んでいた。
通関手続きの関係などから会うのは2ヶ月後を予定していた。
しかし、情勢は急に悪くなった。
今まではとても親密な仲であった両国は、その仲を冷却していく。
中でも決定的だったのは、日本が、これまでとは真逆の立場にいる国と外交を密に始めたことだった。
その結果、俺達も会うのは延期となったのだ。
つまり。
今俺の視界にいる真紀は、これからうちの子供になる予定の少女で。
美弥は今その命を危険に晒している。
神は真紀を優先しろと言う。
それは間違っていない。
何故ならそのために俺はやってきたのだから。
「哲弥………あの子のこと、よろしく」
ブツン―――
通信が途絶えた。
もう、やることは一つしかない。
俺は。
「美弥……」
俺は、
「美弥………」
目の前で、5撃目を与えた新兵。
手前に倒れてくるそのビルの破片は真紀に向かっていく。
俺はッ!
「真紀いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
全ての瓦礫を粉砕した。
有り余るだけの全ての弾と、機体の持つ燃料で。
所謂、特攻と言う奴だ。
「真紀……真紀は…」
「真紀さんは無事ですよ、哲也さん」
「よか……た……」
そして俺は意識を失った。
二度と、真紀と美弥を取捨選択しなければならないような事態が来ない事を願いながら。
まあ、こういうことってありうるわけで。
自分がもし愛する妻と娘を天秤に掛けられたらどうなんでしょう。
選べないで自分だけ死んでしまうかもしれません(・,・)
段々と話が進んでいきます。