第2話 ちょっと未来のお話
サブタイが難しすぎる。
久々の更新ですね、本当に。
それではアテンションプリーズ。
この物語は、フィクションです。
物語中に登場する事象、団体、組織、個人名等々は非常に現実のものと類似しておりますが、全て実際のものとは関わりありませんことをご理解ください。
足が地に着いたような気がして俺は目を開けた。
「ここは?」
ガラス張りの高層ビル群が立ち並び、目の前の通りの交通量が異常。
「東京か……」
随分と地元から離れてしまったようだ。
「哲弥さん……、哲也さん、聞こえますか?」
頭の中から声がした。
「神様か?」
「はい。双方向通信は人間の頭脳では不可能なので、受信専用ですけれど」
なるほど。どこの電子機器だろうか。
「それで、教えてくれるの?」
「はい。まずここは2024年の東京です」
12年後か。
「何でここに?家があるのは―――」
「真紀さんは、東京大学に在学中なんです」
「おおっ」
かの日本一の大学か。俺は残念ながら不合格だったけれど。
「それで、一体何が起きるんだ」
「詳細は不明です」
それじゃ困るんだけどな。
「取り敢えず、大学に行ってみてください」
「了解」
タクシーや公共交通機関を使うお金がもったいなかったため、歩いて移動する。
ふと、テレビモニターに目がいった。
「東京大学付属大学病院・院長の斉藤美弥さんにお越しいただいております」
「よろしくお願いします」
画面に映っていたのは美弥だった。
いつから美弥はそんな偉い立場になったんだ。
「驚かれていると思いますから説明しますよ?」
「頼む」
「美弥さんのパーソナルデータを照会します。彼女は夫を亡くし、娘と二人暮らし。その経営能力を買われて現職に就いたそうです」
「それなら院長じゃなくて理事長とかだろ……」
「仔細は不明です」
神様にも調べられないことがあるんだな。
「それと、一つ言いますとあなたの所持金は減ったりしませんから、使い放題ですよ?」
それを早く言ってほしかった。
タクシーに乗って大学に着いた。
丁度講義が終了したようで、多くの学生が正門から出てきていた。
その中の一つである女子グループにどこかで見たことのあるような女性を発見した。
「まーきー?今日は一緒にご飯食べにいこうよ」
「う~ん……お母さんの返事が返ってきたらね」
「真紀は本当にお母さんが好きなんだね」
そう聞かれた真紀らしき少女ははにかんだ笑顔でそれを肯定した。
「真紀……」
大きくなった真紀。
話しかけたい。つい昨日までそうだったように頭を撫でてやりたい。
でもそんなことは決して許されないのだ。
「それで、これからどうしろと」
呟くと返事が返ってきた。
「xデーは明日、との事ですから取り敢えずその辺のホテルを借りて休んでください」
「どうせならスイートがいいな」
「無理です」
だろうな。
*********
「ただいまー」
「お帰り、真紀」
結構遅い時間まで掛かってしまった。
「ゴメンね、お母さん遅くなって」
「いいよ、真紀も大学生だもの。簡単に軽食でも作るわね」
「ありがとう」
私が上着を脱いでいた時、ふとキャビネットの傍においてあった写真たてが目に入った。
「そう言えばお母さん」
「何ー?」
「この写真の男の人にそっくりな人、今日大学の前で見たよ」
――カラーン
「えっ?」
「生きて……いるの……?」
お母さんの様子がおかしい。
「生きているの?哲弥……」
*********
そんなことが暴露されているとは露知らず。
俺は寂れたカプセルホテルに滞在していた。
「しかし……何が起こるかわからんとなれば対策も何もとりようがないな」
ここで、気になっていた違和感を神に訊ねる。
「今いる時間、2024年は俺が生きていた時代からの延長線上なのか?」
返事は直ぐに返ってきた。
「いいえ違います。ここは平行世界の一つです」
ならば美弥のパーソナルデータにあった夫とは誰のことなのだろう。
「ああ、勘違いしないでくださいね。真紀さんが特異点だという影響を顕著に受けているのは貴方達一家です。ですから何処へ行ってもその3人という家族は変わりませんよ」
ほっと安心した。
「じゃあここでの俺の死因は何なんだ?」
「ちょっと調べますね……………貴方は仕事で海外に出張していた際にテロに巻き込まれたことになっています」
「海外出張とは、この世界の俺は凄い奴だな」
「因みに、その引き金は貴方ですよ?」
へ?
「次元最高位にある貴方が次元跳躍をすることを決めたので他の世界の貴方はその因果に巻き込まれたのです」
俺は簡単な選択で全ての俺を巻き込んでしまったのか……。
「ああ、勿論他の貴方も同意すると思いますよ? どの世界にいるのも貴方なんですから」
責任がより大きくなったような気がする。
「そうだな。明日は朝から活動だからそろそろ休む」
「しっかり守ってくださいね」
言われなくても守ってやるさ。
朝。俺は素早くチェックアウトを済ませた。
向かうは今の真紀たちの家。
とは言っても別に立ち入るわけではなく、真紀が無事に登校するのを見届けるだけだ。
今日1日彼女を守り抜けば問題はないからな。
彼女達が住んでいるのは都心にあるマンションだった。
マンションのエントランスで立ち往生していると、昨日聞いた声が聞こえてきた。
「真紀、今日の経済の試験大丈夫?」
「うん、ちゃんと対策してきたから」
「えーっ! 後でノート見せてッ。私単位危ないのよ」
昨日下校時に一緒にいた子だ。
そして真紀もいる。
俺は不審がられないように距離を置いて彼女を追う事にした。
朝の都内は通勤ラッシュだ。
電車の乗客の数は異常だ。
なるべく距離を離されないように同じ車両に乗り込む。
そこで俺の思考が急に回りだした。
ハザードマップが脳内で作成されていく。
――電車
速度超過、過剰人数、人身事故、、、、、
過剰に警戒するのも問題だ。何も起こると決まったわけじゃない。
それに既に乗ってしまっているのだからどうしようもない。
10分、15分。
時間が刻一刻と過ぎて行く間俺は何も起こらないことを祈っていた。
「代々木上原~代々木上原~」
真紀たちが降りる。
何も起こらなかったことで溜飲が下がる。
彼女達が歩いていくその後を付いて行く。
やがてキャンパスが見えた。
「何も起こらなかったぞ」
神に問いかける。
「そうですね、彼女に禍が降りかかるのは学外にいるとき、と明示されているので暫くは大丈夫でしょう」
近くの喫茶店で休む。
しかし2024年とはいえ。
「余り変わっていないな」
それを聞いた神は「当然ですよ」と答える。
「10年ほど前に東京で大地震がありましたからね」
あの頃は4年以内に起こる可能性が非常に高いとか言ってたからな。
「どうなったんだ?」
「ええとですね……。死亡者ゼロ、負傷者57名、行方不明者10名です」
まるで魔法のような数値だ。
「どうして……そんなに被害が少なかったんだ?」
神は推測になりますが、と前置きして話を続ける。
「その前に起きた大地震からそれほど間がなかったことと、助け合いではないですかね。あと科学技術」
大災害で思い知った研究者達はこぞって地震予測を行うために研究を行った。
その結果地震発生1時間前まで予測が出来るようになったと言うのだ。
「そこに続いて各航空会社が東京発便を大量に出しまして、都庁半径100キロの住民は一人残らず脱出に成功したらしいです」
それは凄い。俺の世界でも実現すれば良いのに。
「結果的にもとの景観を取り戻すのに10年ほど掛かったってことです」
「それで景色が余り変わっていないのか」
「はい」
雑談をしていると講義の終了時間となった。
「真紀、本当に助かったよ。お陰で今日の試験もパスだね」
「そう?よかった」
「これから皆でご飯食べに行くんだけど、真紀はどう?」
「うん、今日はお母さんに言ってあるから大丈夫だよ」
「やったー。皆に言っておこーっと。真紀が来ると、参加者増えるからね」
「そんなことないよ」
そんなことはあるだろう。
見た目清楚なお嬢様にしか見えないからな。間違いなく釣られる男は出てくる。
「そんな事は許さんがな……」
「哲也さん、哲也さん!念が漏れてますよ」
キニシナイ。
しかし、そんな時も唐突に終わりを迎える。
**********
「ちょっと、キミ達いいかなー?」
唐突に私達に近寄ってくる若い二人組の男。
「な、なんですか」
「なによあんた達」
「キミ達かわいいね、何処の子?」
間違いない、これはナンパというやつだ。
「ナンパはお断りです」
「そーよ、私達予定あるの」
「いいじゃんさー。高校生?」
「東大生です」
そう答えた。大学の名前を言えばきっと慄くだろうと思ったから。
でも反応は全く違った。
「へぇ、東大なんだ!俺と一緒だね」
まさかこんなチャラチャラした奴が東大だなんて!
「そ、そうですか。先を急ぐので失礼します」
私は絵里の手を取って歩き出そうとする。
「まあ待ってよ。同じ大学ってことでさ、仲良くしようぜ」
「そうそう。これも何かの縁、いや運命ってことでサ」
そんな運命はいらない。
「結構です」
そう言って抜けようとしたが絵里の肩を掴まれた。
「生意気なんだよ、オラッ」
絵里がグッと引っ張られ、私は突き飛ばされた。
感触がアスファルト。間違いない、道路だ。
近付いてくる大音響のクラクションを聞いて、私は考えることを放棄した。
**********
人混みで前が中々見えない。
「やめてったら!キャッ」
怒鳴り声や叫び声が聞こえてきたので走って現場に行ってみる。
そこでは真紀の友達が怪しげな男に掴まれていた。
真紀は何処だ?
勢いよく聞こえてくるクラクション。
道路に目を向けるとそこに立ち上がろうとしている真紀の姿が。
「これか……」
これか。
これなのか。
「哲也さん!それですッ」
俺は全力で駆けた。
真紀がこっちを驚いた様子で見る。
俺が手を伸ばす。
真紀がその手を掴む。
俺は遠心力で真紀を歩道に向かって振り飛ばした。
真紀の悲鳴と、俺の身体が吹っ飛ばされるのは同時だった。
************
現場は騒然とした。
さっきまで私達をナンパしていた男達は錯乱している。
「お、俺達は知らない」
「あのオッサンが勝手に突っ込んできたんだ。悪くねえ」
近くの警察官に言っているが、警察官も聞き流している。
「しかしねぇ、目撃者によると発端はキミ達があの女性を突き飛ばしたという事かららしいじゃないか」
「そ、それは……」
そんな応酬を聞きながら、私は浮かんでくる疑問を払えなかった。
「あの男の人は朝マンションにいた人だ」
そう、もっと言えば昨日の学校帰りにも見かけた。
お母さんの知り合いなのだろうか。
昨日お母さんもそんな素振りを見せていたような気がする。
そんな折、私の携帯電話が鳴り出した。
「はい「真紀ッ!?」そうだけど……」
電話の相手はお母さんだった。
「事故にあったって聞いたわ!怪我は?どこか痛い所はない?」
「うん、ちょっと擦り剥いただけ。近くにいた人が私を庇ってくれて………」
そこから先は言えなかった。私が原因で轢かれてしまったのだから。
「ええ、その患者さんはうちの病院に来ているらしいわ。あなたも手当てとお見舞いにきたら?」
「わかった」
********
瞼が重い。
「哲也さん。そろそろ次の世界に飛ぶ時間が来ましたよ」
「ここでの特異点事象は終わったのか?」
頷く神。
「どうやら一空間につき一つの事象があるようです」
「それで、どうやったら転移できるんだ?」
「最初と同じですよ」
要するに死んだらということか。
「肉体と魂縛の癒着がもっとも剥がれやすいのがそのときですから」
成程。
「カウント、入ります。2分前」
瞼が開く。
どうやら集中治療室のようだ。
窓越しに見えるのは真紀、と美弥か。
二人とも驚いたような顔をしている。きっと突然目を開いたからだろう。
それにしても、本当に二人は変わらない。
美弥は本当に30代なのだろうか。
真紀も美弥に縋っている。甘えん坊だな。
「あと1分」
さて、俺は無事に真紀を守ることが出来たのだろうか。
上手くやれたのだろうか。
「メッセージ、入力時間です」
その都度入力させられるのか。確かこの世界の俺はテロで死んだんだっけ。
――地獄の底から何とやら。這いずり回って帰ってきてみた今日この頃。
――真紀が心配で心配で復活してみた。
――美弥はちゃんと成功しているみたいで安心した。
――真紀もしっかり勉強して凄い大学に入学している。
――真紀。しっかりと母さんを助けてあげてくれ。
――美弥。これからも俺の分まで真紀を守ってやってくれ。
そして、俺の意識はそこでブラックアウトした。
基本的に、一つの話で一話。
そして急展開なのも駄文なのも仕様です。