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03 再会も束の間

 

 ファブリスの宇宙港で二人が再会を果たしていた頃、《ラトレーニ》には緊急通信が入っていた 

「第七艦隊から応援要請。このままではゴウラ防衛線突破されます」


「第一○四八戦隊から一八○○戦隊は至急第七艦隊と合流。残りは周辺警戒を継続」


 《ラトレーニ》の艦橋に艦隊旗艦からの指示を伝える通信士の声が響いている


 他の艦橋要員達も慌ただしく動き始め、艦橋は緊張感が高まってきた


「こんな所まで押し込まれるとは思わなかったわ」


 《ラトレーニ》艦長、ファン・ハスイ准尉十揮長は艦長席で床の宇宙図を見ている


 椅子をゆっくり叩く指が多少の苛立ちを感じさせる


「第七艦隊は総数の四割を喪失か……ひどいわね」


 宇宙図の青い輝点は戦闘開始時よりだいぶ後ろに下がってしまっている 

「合流するまで保ちますかね?」 

 副長兼主任砲術士のスメリア十揮長が言った


「普通に考えれば保つでしょうね」


 ファンはそう言うと濃紺の髪を揺らして立ち上がった


「シンティア、出航準備急いで」


「はい」


 シンティア主任技術士は短く答えながらも手は休むことなく動いている 

「スメリア、リンは?」


「もう呼び出しました」


「そう、ありがと」




 

「うそっ、応援要請!?」

 突然リンが声をあげた 

 《ラトレーニ》からの連絡がリンの携帯端末に届いたのだ


 この時二人は搭乗通路に入ろうとしているところだった


「どうした?」


 後ろを歩いていたクロトはそれを見てリンの携帯端末を覗き込む

 

「第七艦隊から応援要請あり、至急艦へ戻れ……え、もう出るの?」


「そう!急いで!」


 リンはクロトの手を取って駆け出した


 扉を抜けて《ラトレーニ》までの無重力通路を飛び、艦内に入るとファンの声で放送が流れた


「全乗組員へ。本艦はこれより第七艦隊の応援要請によりゴウラ防衛線へ向かう」


 その間にも二人の前を乗組員達が慌ただしく横切っていく


「僕たちはどうすれば?」


「とにかく艦橋に行こう」


 二人の兵科は計務科と偵察科で、艦の出航時には技術科ほど忙しくはない


 それでも艦橋要員の一員なので、急ぎ艦橋へ向かった


「艦長!」


「リン、お疲れさま」


 二人が艦橋に入ると出航準備はほぼ完了していた


「あなたがクロト・シニスタ十揮長?」


「あ、はい。初めまして」


 クロトは軽く頭を下げた


「本来ならあなた達には練習航行をしてもらうんだけど」


「わかっています。今はそれどころじゃないですから」


 リンが先回りして答えた


「そうよ。悪いけどあなた達にはぶっつけでやっもらうわ。出来るわね?」


「はい、出来ます」


 クロトが答えた。リンも隣でうなずく

 

「よろしい、ならお願いね」


「艦長、出航準備完了しました」

 

 スメリアから報告があった

 

「出航する、副機関始動」


「了解、副機関始動」


 ファンの命令とともに艦体が港からゆっくりと離れていく


 艦体側面から短い噴射を繰り返し進むべき方向へ頭を向ける


 重力制御機関が働き振動はないが、艦橋の壁面に映し出されている星空が大きくふれ、巨艦が動いていることを示す


「姿勢制御完了」


「主機関始動、出航!」


 今度は少し振動があった


 燃料が対消滅機関に流れ込み、そこから生まれたエネルギーが艦を蹴りだす


 宇宙図に光る青い輝点が次々と同じ方向へ動いていく


 その先にあるのはファブリス星系門


 門を越えたその先に灼熱の戦場が待っている





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