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01 子供の分からぬところ

 

 よく晴れた夜空


 見上げると満天の星空が広がっている


 しかし少年の目には美しく煌めく星達は映っていなかった


 映っているのは星達の間を滑るように動く幾つもの輝点と何かが弾ける光


 少年の祖先、移民船の船長の名を冠したこの惑星、《惑星アノン》の上空では宇宙艦隊同士の戦闘が行なわれているのだ

 

 本来は二○○○万の市民を不安に陥れるはずその光景を、少年はうっとりと見つめるばかりだった

 

「クロト?ここにいたんだ」


「あ、リン」


 少年、クロト・シニスタは複合住宅の屋上庭園から、この異常な夜空を見ていた


 やってきたのはリン・ネフィール。クロト幼馴染みだ


「なにしてるの?」


「あれだよ」


 クロトは夜空を指差した


 今だに異常な夜空をリンも見上げた


「なんだろうね、あれ」


「パパ達はなんだか怖い顔してた」


「綺麗なのに」


 子供の目には花火にでも見えているのか、しばらくそのままぼーっと見上げていた




「二人とも、ここにいたのか」


 聞き慣れた声に振り向くとクロトの父親が軽く息を切らしてやってきた 

「お父さん」


「こんな時間に外に出ちゃダメだ。リンちゃんもお父さんとお母さんが探しているよ」


「パパとママが?」

 

「だから家に帰ろう」


 そう言って胸元から携帯端末を取出しリンの父親達に二人を見つけたことを知らせた


 すぐにリンの両親がやってくるだろう


 クロトはその間も空を見上げていた。そして気になっていた疑問をぶつけてみることにした


「ねぇ、お父さん」


「ん?」


「あれは何をやってるの?」


 クロトは夜空を指差して聞いた


 途端に父親の表情は明らかに曇った


「あれは、大人達のくだらない意地の張り合いだよ」


「どうゆうこと?」


「子供には難しいことなんだ」

 

 特に特徴もない平凡な星に住む平凡な少年には、雲の遥か上空で行なわれている戦闘がまるで別世界のことのように思えた




 翌日、惑星アノン唯一の放送局は一晩中続いた戦闘の結果を伝えた


「標準時間の昨夜から明朝にかけて衛星軌道周辺で続いた戦闘は、両軍に多大な損害を残し星系連合軍が辛うじて防衛に成功しました」

 

 発足以来、銀河の大半を支配し栄華を極めたかに見えた星系連合だったが、≪惑星イエハン≫の登場によってその絶対的な力が揺らぎ始めていた

 

 

 

 

 時に共通暦七○○年――クロト・シニスタ、リン・ネフィール共に十歳

 

 

 



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