無題詩24
白亜の閉鎖病棟に閉じ込められたある男は、
どうして自分がこのような場所にいるのか考えた。
自分が何か悪いことしたのか。
誰かが拉致したのか。
それとも自分で入所したのか。
いまだにわからない。
煙草を深く吸って出るのは薄汚れた煙だけ。
天からの救いはいまだにない。
毎日考えた。
自分のいる理由。
一年・・・二年・・・。
ただ時は過ぎる。
鬱憤をはらすように、
委縮をとめるように、
迷彩をかけるように、
死霊をはらうように、
毎日考えた。
けれど、見つからない。
自分がどうしてこのような場所にいるのか。
ふと、目の前に少女がいることに気付いた。
白いワンピースの少女。
男は彼女に質問することにした。
「君はどうしてここにいるの?」
小さな少女は答える。
「それはね、きっとおじちゃんと一緒だよ」
男は悩む。
「僕と同じ理由・・・?」
男は考える。
男は考える。
男は考える。
そして、見つけた。
わかった。
問いの答えが。
「僕のいる理由なんてないんだ」
そう、男がこの病棟にいる理由はなかった。
とりわけ理由なんてなかったのだ。
「僕はここにいる。この病棟にいる。
それでおしまい。それが正解なんだ」
……。
「だから、それでいいんだ」
理由を認識した男は病棟から出所して、
いまは遠くの海に近い町で自由に暮らしている。
男は幸せに少女と暮らしている。
ただ、それだけのお話。