『記憶』在りし日の幼き愛
『記憶』は過去回想みたいなものだと思ってくれると助かります。
勇輝回想
〜20XX年、7月7日〜
今日は妹である里奈の誕生日であり、そのお兄ちゃんである僕も何かしらのプレゼントを贈るの至極当然の事だろう。
だけど、そこで問題なのが……そのプレゼントを何にするかという難題である。
やはり里奈のお兄ちゃんとして、是非妹には喜んで欲しいからね。
ベターなのはぬいぐるみのような人形だが、ベター過ぎて喜びもそこそこだろう。
少し前に入学したばかりなら可愛い文房具……は堅物過ぎるか。
いっそ、指輪やネックス――――いや落ち着け、僕にそんなお金無いし、送ったとしても気持ちが悪いと一蹴されれば僕のメンタルが蹴り砕ける。
「わぁ可愛い~ありがとうお兄ちゃん!!」
結局送ったのはリボンだった。
指輪やネックスのような高級品でもなく、素直に可愛いと思われるリボンを買うのが正解だったようだ。
それでも、喜んで貰えてお兄ちゃんは嬉しいよ。
その後はバースデーソング歌って、家族の皆でケーキを食べてる。
僕も妹も幸せのひと時を過ごした。
でも夜も遅くもう寝る時間の直前に、妹は衝撃的な事を言い出した。
「私思ったんだけど、この子可愛くない?」
「どれどれ――――――っ?!」
なんと妹が可愛いと言ったのは父がよく読んでいたエイリアン図鑑の中の宇宙人だった。
その本は父の書斎から勝手に持ち出した物だろう。
父も父でエイリアン好きでUMAとかが好きだった。
まさか、そっちの血を受け継いでしまったのか……。
「あぁ……うん、確かに可愛いね」
本音を言う事が出来なかった。
だって、あんなに真っ直ぐな目をしてる妹を否定なんてできっこないでしょ!!
少なくとも、僕や僕のプレゼントの方が魅力的だと思うけどな!!
僕はそうヤキモチ焼きながら眠りへと就いた。
◇◇◇◇◇
「……眠れない」
眠りへと就いたと言ったな?
あれは噓だ。
あれから妙に寝付けない。
どれだけショックだったんだと自分自身を自嘲するが、それでも眠れなかったったんだから仕方ない。
僕は息抜きに夜食でもしようかと階段を降り――――――
サッ
その前に妹の寝言でも聞くかと扉に耳を傾ける。
これは寝付けなかった時によくする癖みたいなもので、こうして妹の甘い言葉で癒されてから寝るんだ。
「さて、今日の寝言は何かな……」
……………………………………。
……………………………………。
……………………………………?
「あれ?」
いつまで経っても妹の寝言が聞こえて来ない。
それどころか、呼吸音すら聞こえない。
聞こえて来るのは風の音だけだった。
こっそりと扉を開けた。
すると、部屋の中には誰もおらず。
あるのは風に揺られるカーテンだけだった。
「里奈?!」
僕は咄嗟に窓辺に近づいたら、服が何枚も繋げてロープのように垂れ下がって居て、秘密裏に窓から外に出たんだと確信した。
そこからは、脱兎の如く一階へ降りられる階段に飛び出して、電光石火の如く玄関から妹を追いかけていた。
ここは田舎の山の中、頼れるのは自分の妹への知識のみ。
くまなく限りある痕跡を探し出したつもりだったが、それでも見つける事は叶わない。
「おーい、里奈〜!! どこだ〜!!」
もう僕には見つけられないのかと諦めかけたその時――――
ザザッ……
物音がした。
一瞬妹かと思ったが、もし妹ならすぐに声をかけて来るはずだった。
しかし、それ以上の音は無く少しばかりの静寂が訪れる。
「だ、誰か居るのか?」
「げっ、誰か来たのか」
僕が問いかけると、あろう事か返事が返って来た。
しかも、男性の声――――少なくとも、妹ではない。
「あの……そこで何して――――」
「待て、それ以上近づくんじゃねぇ。俺は大便してるんだ」
かなり警戒していた僕にとって、あまりにもしょうもない答えが返って来た。
ただ野糞してるだけのおっさんだった。
僕はどうでも良くなり、妹の捜索に専念した方が良いと結論付けた。
「えぇ……あ、すみませんでした。それじゃ、僕急いでますんで……」
ただのおっさんに用は無い。
そう思って、僕はこの場を――――
「隙あり!!」
ゴボッ
「がぁっっ……!!」
何――――だ――――?!
この――――記憶は――――――?!
俺は――――宇宙人?
いや、そん――――な訳が――――――
――――――――――――――――――――
目が覚めた。
描写を深めたらシスコンお兄ちゃんが爆誕しました。