嫉妬の炎よ消えろ
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
俺は今、爆走で移動させられている。
――――――爆走?
否、爆走だなんて生温い。
これは亜音速だ。
あのおとぎ話のような修行方法を、俺は今やってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
「5割か、まぁ最初はこんなものだねぇ」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
最初に師匠に亜音速で的あてと聞いた時は「頭おかしいのかこの人」って思っていたが、ちゃんと頭がおかしかった。
思っていたより高速戦闘に慣れていなかったといあのもあるが、それを維持しながら正確に的を当てれる気がしない。
視界もブレるわ音は聞こえづらいわで混乱する。
「これを8割……マジか……!!」
師匠やシェーラは8割的あてと言っていた。
これを……8割か……冗談としか聞こえないぞ。
「5割行ってるだけ凄いよ〜私なんて3割行けたら良い方だし……ははは」
地面に寝そべっている俺を上から見下ろすのは里奈である。
彼女も【魔女会】のメンバーなら、当然この修行は行っているはずだ。
普通に大丈夫かと心配する反面、ちゃんと五体満足生き残ってるだけ才能はあるのかもしれない。
「里奈もリィムも、素質はあるのに基礎がなってない。当分は基盤作成だよ」
「あ〜他には何の修行があるんだ?」
「遠くの岩を撃ち抜く修行、魔物が闊歩する中で〈精神統一〉する修行、水面を歩きながら魔物の波状攻撃から生き残る修行、流星群から生き残る修行、極寒や灼熱のような苛烈な環境で特定の魔物を退治する修行、等々だよ」
「聞かなきゃ良かった」
どいつもこいつも高難易度しやがって。
手加減って言葉を知らないのか。
だが、お陰で着実に強くなれるだろうという確信があるのは事実なんだけどな……。
「今日の修行はこれまでとする」
一旦今日の修行は終わったが……これからとうしようか。
俺ってこういう時の自由時間を無駄に浪費しちゃうタイプだからなぁ……例えば、一生パズルしてたりとか。
「ねぇねぇ時間あれば、私と街を見て回らない?」
「別に構わないが、俺この街の事何も知らんから案内役頼んだぞ里奈」
「ふふん、任せなさい」
俺はこの[イデア]に来て修行しかしてないからな、味変として街を見て回るのはこちらとしても都合が良い。
あと単純に精神を保つ為にも癒しが欲しい。
そう思いながら空を見上げていると、空から鳩がこちらへと向かっているのが見えた。
その鳩は羽根を落としながら、俺達の前へと降りる。
「定期新聞お届けだぜ」
「ありがと〜」
ここの街は情報の伝達を新聞でやってるのか。
電子情報に慣れた俺からしたら冗長も良いとこだが、新聞が登場する以前と比べたら伝達速度はかなり上がってるんだろうな。
「なんて書いてあるんだ?」
「新しい遊園地がオープンされたんだって!!」
遊園地かぁ……富裕層からしか聞いたことの無い単語だな。
娯楽施設というだけは分かるが、常時金欠の俺からしたら夢の又夢の場所だもんなぁ……。
「よし、今日は遊園地に行こう!!」
「え?」
「大丈夫、お金はあるから」
お、お前……金持ち……なのか……!!
不味い、精神を保て。
嫉妬の炎よ消えろ。
そう、この金持ち少女は俺を誘ってくれているんだ。
ここで否と言えば、あの夢にまで見た遊園地を体験出来るという事だ………そんなの――――――
「そういう事なら行こうか」
是と唱えるに決まっているだろ。
プライドなんて捨てた。
里奈の奢りで遊園地に行くぞ!!
グチャグチャの感情で精神がボロボロになるのを感じながら、夢見る遊園地を想像しながら俺は一歩一歩足を踏みしめるのだった。
え〜主人公、普通にカスです(断定)




