再会
そこは、自然豊かな緑に覆われた森だった。
そこは、爽やかなそよ風が吹く森だった。
そこは、静けさと日差しが差し込む森だった。
「わー!!」
「森が……復活して……!!」
そこは、つい先程まで枯れ木しか存在しない森だった。
「ここは[ンガイ]と呼ばれる【魔女会】が管理している森です。普段はあの質素な森なんですけど、幻を反転させる事で自然豊かな森になります」
幻を反転させる事で周囲の姿が変化する魔術――――――隠された物を暴く時や、逆に何かを隠したい時には、かなり便利な魔術になるだろうな。
「なぁ、後で俺にもその〈反転︰イリュージョン〉を教えてくれよ」
「この魔術は追加詠唱という、まだ教えていない術式を組み込んでるので、まだ先ですかね」
「え〜ケチ」
「シェーラ、ケチ」
「………心配しなくても【魔女会】がこれから教えるはずですので、そんなにウズウズしないで下さい」
追加詠唱か………〈反転︰イリュージョン〉の”反転”の部分がそれに当たるんだろうな。
俺が今使用しているのは雷の魔術だが、魔術は自由であり、もっと汎用性を持たせられると思うんだ。
あの〈マグネットフロート〉のように磁力としての電気や、電気のエネルギーを利用した斥力の発生だとか……そっちを目標に頑張っていくか。
森の中を歩いていると、少し開けた場所に出た。
そこの場所に既視感があった。
改めて周囲を見渡せば、地面には様々な色や形の花が植えられている。
しかし、そのどれもが見知らぬ花であり、まるで未知の物に囲まれているような――――――そんな異質な感覚がする。
まるで、あの夢のように。
「狸お姉さんと……妖精さんと……人形さん……?」
その中心には机と椅子があり、そこに座って一人紅茶を啜って居る少女が居た。
その見知らぬ少女は、こちらに気づけば、首を傾げつつ椅子から立ち上がり出迎えてくれるだろう。
「見かけない顔ですね、新入りですか?」
「うん!! そっちこそ、あの”おばさん”のお友達?」
「………聞かなかった事にします。えぇ、私も【魔女会】のメンバーですよ」
おばさん……が誰だか知らんが、シェーラも知らない人なら本当に俺と同じ新入りなんだろうな。
………いや、むしろ俺の方が後だから先輩と言うべきか?
「ごめん、自己紹介がまだだったね。私の名前は―――――」
突如、勇輝の記憶が溢れ出す。
僕が愛した者が居た。
僕が守りたいと思っていた者が居た。
僕が見つけ出すと思っていた者が居た。
その者は僕の大切な妹であり、僕が心の底から大好きな人。
その人の名前は――――――――
「私の名前は里奈って言うの!! 宜しくね!!」
ようやく、見つけた。




