『一方その頃』狩人は尊厳を貫かんとす
生き残ってしまった狩人視点
静寂が戻った草原で独り慟哭に沈む者が居た。
その者はもう動かない霧を手に取りながら、後悔を謡う。
もっと上手くやれたなら、また違う結末を辿れたのかもしれないと。
「あぁ……畜生……やられちゃったのかよミスト!!」
その者はスライムのような身体を持ち、半透明で粘着性のある身体で黒い霧――――――だったものを見つめる。
オペは三大守護者の攻撃を受ける直前、自身に〈改造〉を施し分裂した。
その場に分身だけを残し本体は潜伏する事が出来た。
「僕様は全て見ていたぞ、リィム。まさか、あんな尊厳を破壊したような殺し方をするなんて」
オペは更に自身に〈改造〉を施す。
その姿は他の人間と大差ないような姿へと変貌する。
透き通った水色の髪色、透き通った瞳、透き通った表情、オペはただ一つの殺意を抱きながら、この星の人間として再誕する。
「許さん、許さんぞリィム。お前が僕様の友の尊厳を踏みにじるというのなら、僕様がお前の尊厳を奪い醜い肉塊にしてから終演をもたらしてやる……!!」
オペは《天外通信機器》に〈改造〉する。
その〈改造〉された《天外通信機器》に、モニターのような物に変化した。
モニターを爪で叩くと、複数の赤色の点が出現する。
そして、ここから離れる赤点が一つ――――――――
「僕様から逃げれると思うなよ」
この赤点は何を表すかと聞かれれば、それは他の《天外通信機器》のマークと言うべきだろう。
これで本来は他の仲間の位置を把握出来るのだが、リィム自身も、この世界に来る前……いや、この惑星に来る前から所持していた。
それが、一番最初に〈トゥルーハウス〉を襲撃する時にもリィムの場所を即座に把握出来た理由でもある。
「この方角――――――夢の街[イデア]だな。あそこは、他の街より厄介な奴らが多いと聞いている」
それ故に迂闊に近寄れず、他の先遣隊からも後回しにされていた街であった。
もし[イデア]に行くのなら、増援は望めない。
一人で障害を掻い潜りながら、暗殺しなければならない。
「――――――――上等だ。お前が[イデア]を隠れ蓑にする気なら、その隠れ蓑ごと焼き尽くせばいい」
一人の復讐者は足を踏みしめ、狩人のようにその時を待ちながら透き通った矢を継がえ、一突きで臓腑を貫けるようにその矢を引き絞る。
そして、最高と最悪のタイミングで矢を放ち尊厳を破壊してやろう。
「全てを深淵の盟主に」
影が薄かろうと、逆にその影を利用し潜伏する。
その一本の矢を放つまで、決して影から出る事は無い。
全てを深淵の盟主に




