月の終わり、夢の始まり
「なぁ、俺何日寝てた?」
「三日くらいですね。リィムさんどれだけ寝坊助さんですか…………」
「…………もしかしてなんだけどさ、シェーラが渡した薬のせいじゃないか?」
俺はシェーラが《聖光電灯》を使う直前、謎の薬を渡されていた。
急いで飲んだこれのお陰で、光の中でも全然見やすかったが…………実はこれ副作用として睡眠作用があるとか、まさかそういうのじゃないよな?
…………おい、こっち見ろって。
師弟揃って隠し事する時目を背ける癖があるの、もうお見通しなんだよ。
何故かぬいぐるみの姿に戻ってるし…………寝てる間何かしてたな?
「あの……ですね…………三大守護者同士で貴方の処遇について話し合っていたんです」
「はい」
「それで、リィムさんは追放という事になりまして…………」
「はい?」
え、じゃあ俺の居ない間に街から追い出される事になったって事?
そんな馬鹿な、唐突過ぎる。
一体どうしてこうなったし。
「事の発端はブライトさん何ですけど、「元でも宇宙人の仲間なら処理すべきです」と言った事から始まりました」
まぁ騒ぎを起こした張本人の仲間かもしれないって思うと不安にもなるか。
俺でも情報抜き取るだけ抜き取って始末する。
「そこに待ったをかけたのがガードンさんです。「彼は街を守ってくれた恩人だ。むしろ無下に扱うのは良くない」と言って対立しました」
おぉ、流石はガードン良い事言うじゃないか。
逆に情報を持ってそうな人物は、自分の陣営に引き込んで飼いならす方が後々己の為にもなるだろうしな。
「そして、その二人を見た師匠のマイスターは「じゃあ間を取って追放にしよう。私の知人でもある【魔女会】に送れば問題ない」と言いました」
………おい!!
一番問題な発言だぞ!!
それ[ラナ]の為にもならないし、俺の発言権も没収されるよな!!
意義を申し立てられずに即座に追放になったのって、もしかして師匠せいかよ!!
「――――――――それで、だ。話の流れは大体分かった。色々と言いたい事はあるが、まず一つ。俺の意見は?」
「ちなみに【魔女会】には多くの魔術師が在籍していまして、更なる強さが――――――――」
「本当に師匠って素晴らしい人ですよね」
「分かれば宜しい」
そういう事なら仕方ないな。
吐き出しそうな文句は一旦閉まっておくとしよう。
【宇宙帝国ルルイエ】に対抗する為に、強くなるのは大事だからね、仕方ないね。
周囲を見渡せば、そこは見たことも無い景色だった。
今は馬車の荷車に乗っていて、時折ガタンと大きく揺れる事もあるが、そんな事は些細な事だった。
下から泡のような物が常時湧き出ており、色々な物体が出現しては消滅を繰り返している。
月の街[ラナ]の景色を知っている俺ても、この光景は異質な物だった。
――――――まるで、夢の中のような感覚がする。
「ここは夢の街[イデア]、人の意思と欲望こそ至上とされる街です」
「つまり、その【魔女会】がこの街の中にあるんだな。シェーラはその案内役か?」
「そうですね、師匠は街の事で離れなくなっちゃいましたから、代わりに私が」
俺はこの先も色々と厄介事に巻き込まれるんだなと思いながら、不思議な景色を眺めるのだった。
第一章「蠢く霧」の章は、これにて終了になります。
これより先は新章(もしくは幕間?)となりますので、これからも是非楽しんでいって下さい〜




