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異世界エイリアン  作者: MeはCat
〜序章〜 ようこそ、異世界へ
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ようこそ

「俺は……今さっき森の中に居たよな」


あぁ、そのはずだ。


俺は森の中で里奈を追いかけていたはずだ。

俺は森の中で地球を調査していたはずだ。


「なんで、大草原が広がってんだ……!!」


勇輝の記憶にも無いぞ、この光景は。

つまり、ここは地球じゃない?


俺は腰にぶら下げていた《天外通信機器》でラーバスに連絡を繋げようとするが、何度通信要請を送っても繋がらない。

返ってくるのは一定周期に発する機械音のみだった。


「くそっ、先遣隊が経験したのはこれか!!」


先遣隊が行方不明になった合点がいった。

原住民にやられたからだとか、惑星特有の災害が原因だとか、そんなちゃちな理由じゃ無かったんだ。

そもそも別空間に送り込まれたから、帰還する事が叶わなかったのか!!


「これが……異世界か」


――――異世界。

ふと、そんな言葉が漏れ出た。

勇輝の記憶にあった言葉、突如として異世界に送り込まれる内容の小説を読んでいた。

まさに、俺がその対象となったのだ。


「だが、先遣隊がこの世界に居る可能性があるのは僅かながらの希望だな。どうにかしてコンタクトを取れれば何かしらの情報が掴めるはず」


どちらにせよ、俺の行動は以前変わらない。

ただ、その目的にプラスアルファされただけ。

この世界を調査する。

そしてこの世界から脱出するだ。


「とりあえず、あの城壁に向かうか」


ここは大草原、故に視界が広いから何処に何があるかは地理的に見つけやすい。

数キロ先に城壁らしい巨大な建造を発見した。

勇輝の記憶なら、あの奥に街があるはずだ。


「良い気候だな」


ここは暖かい風が吹いていて気分が良い。

地球のように豊かな世界なのだろうか、それなら食事は現地で賄えそうだ。


グルルル…………


少し歩くと、小生物が草むらから姿を見せ、不遜にも睨みつけながら威嚇してきた。

あれは分類的にはオオカミと言うらしい。

あの程度本体なら無傷だが、今は人間の身体で行動しているからな……せっかく手に入れた身体を傷つけられては敵わんぞ……。


「そこの君、大丈夫か!! トゥ!!」


どうしたものかと悩んでいると、同じく草むらから謎の男性が飛び出て来た。

俺程じゃないが、鍛えてるのか筋肉が良く見える。

……半裸だからだけど。


「…………そっちこそ大丈夫なのか? 装備も何も無いけど」


「おや、心配してくれるなんて良いやつじゃないか!! 無問題、我が筋肉は全ての牙を弾き返すのだ!!」


そこまで言うのならと少し下がって、彼の勇姿を見守る事にした。


オオカミは問答無用と噛み付き攻撃を仕掛けて来るが、謎の男はその攻撃を避けようとはしない。

するとオオカミの牙は謎の男を容易く貫くかと思いきや、意外にも突き刺さる気配が無い。


「我の”武術”の一つ〈気力硬化〉、貴様の牙如きで我の筋肉に傷一つ付けられると思うな!! はぁっ!!」


そのご自慢の筋肉で吹き飛ばされたオオカミは、困惑の表情を浮かべながら体勢を立て直そうとするが、そんな隙見逃す筈も無く、謎の男はドロップキックしてオオカミを吹き飛ばした。


「さらば、魔物よ。お前の筋肉も格好良かったぞ」


筋肉……はさておいて、多少の近接戦闘が得意で安心した。

うーむ……人間の肉体はオオカミの牙で傷が付く程に脆弱なはずなのだが……何かあるな。


「ありがとう、助かったよ」


とりあえずは感謝を、この借りは後々返すとしよう。

俺はまだこの世界を知らぬ新参者、身勝手な行動を慎み極力正体をバレずに行動しなければ。


「うむ、我ら【夜犬の守護騎士団】の使命は正義を貫き人情を守る事だからな。はっはっは!!」


【夜犬の守護騎士団】、その名や先程の行動から察するにこの世界もしくはこの街の治安維持組織なのだろう。

正義、人情、その言葉選びから、少なくとも人々を安心させる為の世辞は弁えているらしい。


……だが、世辞でないのなら尚更良い。


民の心の安寧すら守れん様では治安維持なんて出来ずに内部から崩れ去るだろうからな。


「俺の名は――――勇輝だ。世界を見て回りたくて旅人をやっているんだ」


「ほう、旅人。良いじゃないか、きっと長旅でさぞ疲れてる事だろうな……だが、心配は要らん。この我、【夜犬の守護騎士団】団長ガードンが街の宿に案内してやろう」


ガードンか、覚えておくとしよう。

団長という事はこいつが治安維持組織のトップだな。

特に敵対するつもりも無いが、万が一そうなった時の為に対抗出来る武器を集めておく必要があるな。

あのオオカミの牙をも防ぐ肉体、そして武術奥義――――機会があれば是非教えて欲しいものだ。


「あ、悪いが路銀がすっからかんなんだ。今日は野宿とさせて貰うよ」


「いやいや、街の外は魔物が一杯さ。さっきみたいに、いつ何が襲ってくるか分からない。今日は我が宿代を奢るとしようじゃないか」


「…………良いのか?」


「あぁ、良いとも。だが街に付いたらちゃんと路銀を集める事をオススメするぞ。でなければ、我のヘソクリが底を尽きるだろうからな……」


……お前も給料少ないんだな。

不味いな、仕事柄あまり思い入れるのは良くないのだが……凄い親近感が湧いてきた。

もしこいつが給料上げるデモに参加したら、快く同調するとしようじゃないか。


だがまぁ……そこまで言うのなら今日の宿代を貰っておくとしようじゃないか。

後、同胞(給料少ない民)として、これ以上巻き上げるのは忍びないから頑張って路銀集めるとするか。


「さぁ、着いたぞ!! ようこそ、月の街[ラナ]へ!!」


門の向こうに見えるのは、人々が忙しなく歩く壮大な大通りの坂道であった。


遂にエイリアンが異世界転移されました。

それはそれとして、もっと労働者の給料上げやがれください。

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