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異世界エイリアン  作者: MeはCat
〜第1章〜 蠢く霧
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『記憶』在りし日の憧れ その1

ミストの回想です。

〜惑星[メニー]〜


「いてて……」


「ミスト、お前腕が鈍ったんじゃねぇのかぁ?」


()は兄貴と一緒に日々強くなる為にいつもの稽古をしていた。

試合をして、100対101の勝敗だったのに、今日一本取られて100対102で負け越してしまった。


「ちぇ、次は勝つ!!」


「次も()()が勝つさ。何せ、俺様は帝国上級将軍になる男だからな!!」


帝国上級将軍、それは【宇宙帝国ルルイエ】の最高戦力に位置づけられる程偉大な称号だった。

一太刀で星々を割り、一人で幾万兵士が戦いを挑もうが返り討ちにするその様は、まさに俺達の憧れの的だった。


この惑星[メニー]は【宇宙帝国ルルイエ】の数少ない()()()であり、他の支配された惑星より懇意にされてきた。

その理由は種族インフルの特性にあり、宇宙全体でも希少な能力を持っている事から、時折【宇宙帝国ルルイエ】の軍人が入隊出来る人材を求めてやって来る。

そのためにも、俺達は軍人になる為にこうして鍛錬をしているという訳だ。


「兄貴、あれ!!」


空から、一筋の光がこちらに迫って来るのを確認した。

あれは【宇宙帝国ルルイエ】の船、つまり選定の時が遂にやってきたという事になる。


「よしミスト、船の着弾地点まで競争だ!!」


「あっ、ずるいよ兄貴!!」


◇◇◇◇◇


「おや?」


「俺様を帝国軍人にしてくれ!!」


兄貴は降り立ったばっかりの帝国軍人の前で入隊を頼み込んだ。

…………まだお互いに名前も知らないのに。


「はぁ……はぁ……兄貴、開口一番にそれ言っても聞き入れてくれないって。まずは自己紹介からだよ」


「あ、そっか」


「はっはっは、元気があるのは良い事だな。それでは、私が自己紹介の手本を見せるとしよう」


その帝国軍人は思っていたより優しそうな様子の宇宙人で、軍人の激しさしか知らない俺たちにとっては意外な程礼儀正しい方だった。


「私は【宇宙帝国ルルイエ】参謀本部所属のラーバスだ。君達のお名前を聞かせてもらおうか」


「は、はい!! 俺様の名前はフロストって言います。本日は入隊を希望しに来ました」


「俺の名はミストです。同じく入隊を希望しに来ました」


ラーバスと名乗る帝国軍人はウンウンと頷き、何かを見定めるように俺達の方を見やる。


「素質も問題ない。礼儀もわきまえている……良いだろう、入隊試験を受けたまえ。それに合格出来たら晴れて【宇宙帝国ルルイエ】の一員だ」


「――――はい!!」


その後、何の障害もなく入隊試験を合格した俺達は【宇宙帝国ルルイエ】へと入隊した。









~【宇宙帝国ルルイエ】 訓練校~


「何だ、直ぐに前線に出られるんじゃないのかよ」


俺達は今、訓練兵として着実に鍛錬を積みながらキャリアアップを目指している。

対する兄貴の方は入隊したら速攻で前線に配属されると思っていたようで、少し退屈気味だった。

少し考えれば入隊直後に本格的な戦闘なんて行わせて貰える訳無いって分かるだろうにと、呆れつつ訓練メニューを眺めると、その一つに興味深いものがあった。


「戦場体験――――これ、軍人の戦闘を直で見させて貰えるって事か!?」


戦場体験、これはその名の通り先輩軍人の後について行って実戦経験を積むプロジェクトだ。

送られる惑星は全て低レベルの惑星が多く、よほどの事が無い限り致命傷を負う事は無い。


「本当か?! 楽しみだな~」


もしこれが本当なら、貴重な戦闘情報を学べるチャンスになるだろう。

見学の時を楽しみに、心を躍らせながら就寝する。


◇◇◇◇◇


戦場体験当日、俺達二人は班に分かれて行動する事になった。

少しの間別行動になるが、意欲に高い兄貴ならきっと高評価を貰えるだろう。

そう思い集合場所に向かうと、既に班長が立っていた。

班長は全員先輩軍人で、班の牽引を任されたエキスパート揃いと聞いている。

一体どんな軍人と出会えるのかと思っていたが――――――


「君がミスト君か、噂はかねがね」


まさかの帝国上級将軍の一人、"万人将軍"ノルムさんだった。

――――――本当に、あの万人将軍が?!


「お、お疲れ様です!!」


"万人将軍"ノルム――――彼女は身体が蜂のような姿の宇宙人だが、その立ち姿は女王蜂のような優雅さと雄大さを感じさせる。


「そうかしこまる必要は無い。これから、班の仲間となるのだ。良き経験になると嬉しい限りだよ」


実際に帝国上級将軍を見られるのはこれが初めてだった。

俺は入隊するまで、雲の上のような、伝説上の人物だとすら思っていた。

これは間違いなく、今日が人生を変えさせる転換期なのだろうと確信した。


「質問宜しいでしょうか」


「許す」


「ノルムさんは、どうして戦場体験の班長に選ばれたのでしょうか」


「選ばれたというより、私自ら志願したんだ。理由としては、良き人材の卵を探しに来た――――そう言っておこうか」


つまり、俺達を見定めに来たという事なのだろう。

ここで高評価をもらえれば――――――いやいや、功を焦るな。

自分の精一杯の事をするんだ。

高望みすれば、転げ落ちるのは自分なんだぞ。


「宜しくお願い致します。ノルム上官」


「ふふっ――――――あぁ、宜しくミスト君」

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