『一方その頃』逆鱗王手
三大守護者視点です。
「〈昇天光線〉」
ブライトが〈昇天光線〉を放つ。
一度その熱線を放てば、脳天を焼き貫かれ即座に戦闘を終了させる事が出来る――――――――
「〈改造〉」
――――はずだった。
そんな速攻で倒される程、先遣隊は甘くも無く、ブライトが放った〈昇天光線〉をタイミング良く〈改造〉する。
まるで達人が良く行うパリィの如く弾き返した熱線はミミズのように叩き落された。
「〈飛翔斬撃〉」
「〈多重︰ロックバレット〉」
「〈改造〉」
Guuuuu――――――――――――
ならばとマイスターとガードンが同時攻撃を仕掛けるが、オペが〈改造〉と唱えれば〈飛翔斬撃〉も対してダメージにはならず、〈多重︰ロックバレット〉はキメラの魔物によって防がれてしまった。
「…………ふぅん?」
「かなり本気を出したのだが……これでも叩き斬れないか」
「何せ僕様は宇宙一の天才科学者だからな!! ……一人を除いて。ともかく、どんな攻撃も無駄だよ無駄!! 大人しくその首を差し出すんだな!!」
〈改造〉の真価は、その場であらゆる性質に変化させ、様々な結果を作り出す事にある。
例えば強力な光線であろうと、〈改造〉を加えればミミズのように、もしくはグミのように弾力を持たせて弾き返す事も可能である。
更に自身を〈改造〉する事により、あらゆる耐性を獲得する事すら可能なのだ。
「それにもし、あの腕に直接掴まれたら我々すらも〈改造〉で消し飛びますよ」
そして当然、相手にも〈改造〉が可能である。
自分以外を対象とする時は、勿論直接触れる必要があるが、逆に言ったら触れられてしまえば即座に戦闘終了する。
「うーむ、攻守共に優秀だな。何か弱点は無いものか……」
「僕様の〈改造〉はまさに器用万能だ!! お前らのようなチンケな術と一緒にするんじゃねぇ!!」
一瞬、空気が震えた。
オペは今まで感じた事の無い畏怖を覚えた。
自分が狩人だと思っていたのに、今この瞬間自分が獲物に逆転したような錯覚を覚えた。
何か、触れてはいけない物に触れたような感覚を覚えた。
「相手のネタは割れてる。ガードン、貴方は引き続き斬撃で、ブライトは光で叩いて」
「勿論です。かの邪智暴虐なる輩に天罰を下してさしあげましょう……!!」
「流石の我でも、今の発言にはカチンと来たぞ。この世には”言ってはならないものがある”と教育してやろう」
「や、やってみろよ!! 魔物達、全軍突撃だ!!」
オペは大きな違和感を抱きながら、魔物モドキ達を全て動員し突撃させた。
普段ならタイミング良く魔物モドキがアシストする事に専念すべきだったが、この瞬間だけは何か嫌な予感が背筋を伝った。
奴らが何かする前に、決着を着けなければ……そうでなければ、恐ろしい事になると……そんな気がしてならなかった。
「〈スロウスペース〉」
マイスターがそう唱えると、オペの周囲の空間が遅くなっていた。
オペはその程度……と〈改造〉を自身に施しこの環境に適応を――――――――待て、彼らは魔物の対応で追われているはず。
何故なら、自分の可愛い魔物達を全軍突撃したのだから。
それなのに……何故、こちらに術を撃つ事が出来るんだ?
目を前に見やると、魔物モドキは全滅していた。
そう、魔物モドキはこの一瞬で全て地面へと倒れ伏し即座に討伐を果たしていたのだ。
「………は?」
「〈グラヴィティ〉」
マイスターは更に畳み掛けるようにオペの周囲の重力の圧力を強め移動を封じる。
「〈多重連撃︰飛翔斬撃〉」
「〈神風鳥〉」
「〈多重︰ロックバレット〉」
斬撃と光鳥と岩石の攻撃の同時攻撃が来る。
こんな攻撃〈改造〉で――――――対処する事が出来ない。
そう、〈改造〉の最大の弱点は一つの物には一つだけの〈改造〉しか施せない。
つまり、自分自身の〈改造〉で耐性を獲得出来るのは一つだけであり、耐性で移動速度を解除しつつ、別の攻撃からの耐性を得る事は出来ない。
そうなれば、相手からの攻撃を一つ一つ〈改造〉していくしかないが――――――そうするには数が多すぎる。
無数の斬撃、無数の光鳥、無数の岩石――――――これらを全て捌くのは不可能に近かった。
盾になる魔物も居らず、避けようにも〈スロウスペース〉と〈グラヴィティ〉の合わせ技で絶対に動きを止められる。
「ごばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
――――――要するに詰みである。
〈改造〉の対処法その1、手数の暴力でねじ伏せる事。
〈暗黒世界〉からの〈分散〉も、〈改造〉も共通してる事は「直接触れられたら負け」という事である。




