『一方その頃』不遜なる輩への反撃
三大守護者視点
教皇ドッグランが死んだ。
あの生意気にも世界を守ると豪語した、かつての少年はもう居ない。
そして、この街の支えとなっていた偉大な教皇様も既に居ないのだ。
「…………結局、私に継いでくださらなかったのですね」
「ごめん、死に際に立ち会えたのは私だけ」
「謝らないでください。葬儀は2日後に執り行います。今やるべきことは、不遜なる輩を処理する事です」
「その通りだ。確かに彼の死は衝撃的な事だが、彼の意思までもその衝撃で吹き飛ばしてはならない」
皆の意思は固まっている。
外敵を通さぬ強固な壁を築き、月の光で平穏を維持し、魔の者へと反撃せよ。
今出来る事はそれだけである。
突如、壁の奥から爆発と轟音が空間を響かせる。
まるで、あの時と同じような胸騒ぎがする。
しかし、今はあの時とは違う。
今回は街を守る力がある。
「二人とも、行くよ。人々に指一本触らせてたまるか!!」
三大守護者は、脅威から意思と人々を守る為に飛び出した。
◇◇◇◇◇
魔物の大軍が[ラナ]へと迫る。
しかし、その魔物は全て魔物とは言えない程、醜い姿であった。
魔物と魔物が融合し接着し〈改造〉されている。
魔物と呼ぶなんて生温い、そんな怪物の大軍だった。
前線に居る【夜犬の守護騎士団】や【夜犬教会】のメンバーすらも、その威圧感に恐れおののいている。
士気から恐ろしい気配が伝播し、今にも逃げ出すようであった。
「〈降臨〉」
「〈テレポート〉」
「〈縮地〉」
そんな恐怖の戦場の最中、三人の守護者の登場で士気を吹き返す。
一人は神々しく、一人は悠然と、一人は勇敢に、敵に立ち向かっていたのだ。
「〈神風鳥〉」
ブライトは法術で天から光の鳥の群れを召喚し、流れる川のように敵に向かって突撃する。
鳥は優雅に空を舞い、敵を蜂の巣のように貫いた。
怪物は何がされたのか理解する間もなく、天に向かって首を垂れる。
「〈グラヴィティバインド〉」
更にマイスターの魔術で敵周辺の重力を重くする。
圧倒的な個の前には数の暴力は届かない。
怪物は地へとひれ伏し、身体を地面へと委ねるしかない。
「〈断頭斬〉」
トドメにガードンの武術で敵の首を刎ね回る。
何も抵抗が出来ない敵など、最早脅威にあらず。
怪物は断頭台にて処刑されるように、頭と胴体が切り離される。
――――――これにて、怪物の大軍の先鋒は消え去った。
「や、やった!!」
「いや、まだだ!!」
他の者の安堵の声に、ガードンは待ったをかける。
そう、これはただの先鋒。
ならば、次鋒、中堅と続くのは当然である。
Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!
轟く咆哮が辺りを震わせる。
あれは、かつてブライトが下したキメラのような怪物――――――の別個体だった。
それも1体のみならず、複数体出現した。
「また、あの魔物ですか。芸のない」
ブライトは呆れつつ、前のように処理しようとした瞬間マイスターに掴まれる。
「この裏には黒い霧の魔物が潜んでる。そいつの為に力は温存すべき」
「そうは言いますが、あれは――――」
「大丈夫、見てて」
二人が顔を前に見やると、先程までとは違い士気が向上した戦士達の姿がそこにはあった。
「俺達も三大守護者に負けてられねぇ!! 大盾部隊、隊列を組め!! 横一列に整列!! 構え!!」
「「「「「〈気力硬化〉」」」」」
【夜犬の守護騎士団】も三人の勇姿に活気を与えられ、負けじとキメラの怪物相手に立ち向かう。
横一列に大盾を並べ構えを取ると〈気力硬化〉によって耐久力を底上げする。
Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!
キメラは咆哮を上げて、固まっている大盾部隊に目にもの見せてやろうと突進を仕掛ける。
ガンッ!!
Ga?!
しかし、重厚な衝撃を加えるだけで、大盾部隊はびくともしない。
【夜犬の守護騎士団】の大盾部隊は、日々魔物から人々を守る為に団長のガードン自ら衝撃に耐える訓練を欠かさず行っていたのだ。
「どうした!! ガードンさんの重みに比べたら、お前の攻撃なんざ屁でもねぇぞ!!」
Guuuuuuuuuuuu…………
「「「「「〈昇天光線〉」」」」」
Gaaaaaaaaa?!?!
怪物が弾き返され怯んだ隙に【夜犬教会】のメンバーから数多の〈昇天光線〉が複数方向から怪物を襲う。
1方向の〈昇天光線〉であれば、サイクロプスの腕によって防げる攻撃であったが、あらゆる角度からの攻撃により防ぎきれず光は身体を貫通した。
Gaaaaaaaaaaaaa………
「戦況は優勢、私達が出る幕は無い」
「魔物コロス……魔物コロス……」
「人間マモル……人間マモル……」
「…………君達せっかち過ぎるって良く言われない?」
今の状況では、三大守護者は魔力の回復に専念すべきであるものの、その内の二人が直ぐに動きたいとウズウズする。
その様子を見たマイスターは呆れつつ、戦況を見守るのであった。
法術、魔術、武術の頂点、三大守護者の無双劇。
これより、更に戦場が混沌となります。




