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異世界エイリアン  作者: MeはCat
〜第1章〜 蠢く霧
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『記憶』在りし日の思い出 その1

マイスター回想

〜神代〜


今日は蒼月祭の前夜祭であり、今回も変わらず開催を祝して馬鹿騒ぎを行っている。

その中央には神獣が鎮座していた。

その神獣の姿は巨大な白色の体毛のオオカミであり、穏やかな瞳で人々が行き交う様子を眺めていた。

そんな喧騒と人混みの中、一人の少女が月の神獣のもとへと駆け寄って来る。


「おかーさん、これ見て!!」


「それは……人形かい? 可愛いねぇ」


人間さんって不思議だよね、力弱いのにこんな可愛いぬいぐるみを作れるなんて。

このぬいぐるみはね、お顔がドラゴンなんだよ!!

ほら、ガオ~って感じで可愛いでしょ!!


「…………でも、本当にそれで良かったのかい? 他の人形の方が可愛いと思うけど」


「もう!! おかーさんまでそう言って!! 良いもん、この子の可愛さは私が語り継ぐから!!」


「そうかい、物は大切に使うんだよ」


「うん!!」


変わらぬ日常、変わらぬ祭り、変わらぬ思い。

それでも、人々は楽しく幸せな一時だった。







突如、壁の奥から爆発と轟音が空間を響かせる。





「何?!」


「………………マイスターはここに居な。私が対処して来よう」


「えっ、でも……」


「大丈夫さ、今回もこの街を守ってくる」


そう言って月の神獣は起き上がり、身体を光の粒子と化しながら事件の現場に急行した。

いついかなる時でも、月の神獣はこの街を守ってきた存在だった。

今回も同じように、不躾な輩を退治してくれるのだろうと、この街の人々は安堵する。

しかし、その皆の想いに反して、少女だけは胸騒ぎがして仕方なかった。


「おかーさん……」


少女だけは気付いていた。

その顔がいつものような笑顔ではなく、まるで本当に緊急事態が起きたような、眉間にシワが寄った表情だった。


少女はいつの間にか足が動いていた。


もしかしたら、何か良くない事が起こるかもしれない。

もしかしたら、何かとんでもない事が起こるかもしれない。

もしかしたら、取り返しのつかない事が起こるかもしれない。


足は止まらず、現場へと走って行く。












「おかーさん……?」


神獣が倒れ伏していた。

あれだけ偉大だった神獣が、呆気なく地面へと伏していた。

その奥には一人の子供が泣いていた。

この場に居る誰もが理解してしまった。


神獣は子供を庇って致命傷を負ったのだと。

真に守るべき存在が、消えようとしているのだと

この街の平穏の壁が崩れていったのだと。


「おかーさん……おかーさん……!!」


事件の犯人はもう居ない。

目撃者によると、後の魔王と瓜二つであったそうだ。


「マイ……スター、こっちに」


「おかーさん!!」


「マイスター、次の言葉を……良く聞くんだよ」


月の神獣は少女を近くに寄せ、最後の言葉を伝える。


「外敵を通さぬ強固な壁を築き、月の光で平穏を維持し、魔の者へと反撃せよ。人々に月の祝福があらん事を」


神獣は、息絶えた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」













〜魔王台頭〜


神代が崩落した後、人々は嘆きと恐怖に包まれていた。

神獣の時代は終わり、魔王が台頭した事で世界は着実に破滅へと向かっていった。


「私に、もっと力があれば……」


森の湖に一人、水面を眺める少女が居た。

あの瞬間の出来事に、今もなお苦しみ続けている。


もっと力があれば、守れただろうか。

もっと早く気付けば、守れただろうか。


もっと、もっと、もっと……!!


「何メソメソ悩んでんだ、お前」


いつの間にか、隣に少年が並んでいた。

何処にでも居るような活発な少年、だが…………何処か見覚えがあった。


そう、神獣に庇われた少年に似ていたのだ。


「君、神獣に会った事はある?」


「………何十年前の話だよ」


少年は呆れたようにそう言った。

あの時から何十年も経っていた。

それなのに、少女の姿は少女のままだった。

まるで、あの時から時間が止まったかのように。


「ううん、なんでもない」


「ま、気持ちは分からんでも無いぜ。魔王が現れてから世界は滅茶苦茶だもんな」


魔王の出現で世界に異常が起きた。

昼と夜が反転する場所もあれば、常に地面が浮く島がある場所もあり、常に毒と病気に苛まれてる場所もある。

そして、何処でも現れる魔物。

まるで世界に異常が起こり、世界が壊れたかのようだ。


「だけどよ、人々がそんな世界に居るなんて可哀想じゃんか。だからさ、俺がこの世界を守るんだ。もっともっと力を付けて、もっともっと人々を守って幸せにしたい」


「…………うん、確かにそうだね」


少女はその言葉を聞いて、何か救われたような感覚がした。

この少年になら、世界を守ってくれそうだと確信した。


「君、名前は?」


「そういや自己紹介まだだったな。俺の名前はドックラン、世界を守る男だ!!」


「私の名前はマイスターって言うの。これ、あげるね」


「おっ、何だ何だ?」


少年は何かが身体の中に入るような、そんな奇妙な感覚が襲った。

一体何をしたのかと少女に問い詰めようとすると――――――


少女はもう何処にも居なかった。


かつての少女は旅立ち、大魔女になるための道を歩む

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