『一方その頃』衝撃的な一報
新キャラの教皇ドックラン視点です。
「何、あの【夜犬の守護騎士団】が半壊だと?!」
【夜犬教会】教皇ドッグランが悲鳴にも近しい声で叫び驚愕した。
月の街[ラナ]が誇る【夜犬の守護騎士団】の半壊――――その思いがけぬ報告に他の【夜犬教会】の者のみならず、その周辺の者達までも衝撃が走った。
【夜犬の守護騎士団】の団長ガードンは[ラナ]の三大守護者の1柱と数えられる程の実力者であるが、今回の戦闘で傷を負い、他の隊員も優秀な者も多く決して侮る事が出来ない程の戦力である。
確かに今回の魔物は今までよりも量が多かったが、それでも本来なら楽勝で勝ち星を挙げて当然であろうと皆高を括っていたのだ。
故に半壊ともなれば大敗とも同義であり、深刻な反応をするのは至極当然であろう。
一騎当千の彼らが、何故今回は大敗を機したのか。
それは未確認の魔物の仕業だと声を上げる者が居た。
「はい。A級……下手したらS級相当の新種の魔物が出現。人型の魔物ですが、黒い霧を体外へと発生させており、その霧の影響で魔物が凶暴化、更に隊員までもその影響で発狂中でございます」
「………そうか、報告感謝する。貴殿も他隊員と同様に休養を行うように」
「はっ……有り難きお言葉に感謝します」
その【夜犬の守護騎士団】副団長シルクの深刻そうな表情を見たドックランは彼女にも休養の時間を与える事にした。
今まで負けなしと謳われて来た【夜犬の守護騎士団】の大敗や黒い霧のせいで、心身共に重傷を負ってしまった。
これは、最早1勢力が対象出来るような話ではない。
【夜犬教会】、【夜犬の守護騎士団】、そして【魔女会】――――――この三つの勢力が力を合わせなければ、この困難には立ち向かえないだろう。
「他者を狂気に陥れる霧か……」
報告にあった黒い霧、それらは魔物も人間も等しく狂気に陥れ凶暴化させる。
それを生み出す魔物なんて聞いたことも無いが、きっと恐ろしい化け物なのだろう。
どちらにせよ、黒い霧の対処法を早急に導き出さなければ、それまでにその魔物が[ラナ]に攻め入られでもしたら間違いなく壊滅する。
「教皇様、宜しければ私が処分してきましょうか?」
そう大見得を切りながら、教会の奥から姿を現すのは、三大守護者と数えられる程の強者であり、【夜犬教会】が誇る最終兵器――――――ブライトである。
「ブライト、確かにお前さんは強い。だが、もしお前も発狂してしまえば[ラナ]が地図から消えるだろう」
「黒い霧の影響で発狂するんでしょう? なら、安全距離からの狙撃で十分ですよ」
………このように、血気盛んで狂犬過ぎて後先考えない。
自分の強さに絶対的な自信があり、厄介な事に本当に実力者だから他の三大守護者以外止められない。
「大丈夫ですって、夜神様に誓って五体満足で帰ってきますよ」
「はぁ……無理はするなよ」
結局今回も止められ無かった。
その今回に限っては、あのガードンすら苦戦する相手だと言うのに………。
万が一を考えて、もう1柱の三大守護者に連絡を入れる事にした。
――――――そう、大魔女マイスターに。
三大守護者ガードン、ブライト、マイスター。
彼ら三人の実力者が相対するのは何者なのか……。
という訳で、これより第1章開幕です。




