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ダンジョンの主と新しいパーティーメンバー

「レードさん……なんでこんなダンジョンのど真ん中で泣きわめいてるんですか?周囲にモンスターがいないとはいえ大声を出すのはあまり褒められるべきことではないですよ?」

「だって……だって……私がロサのパーティーにいらないって言われて……」

そう言いながら先ほど私たちが助けた探索者の方を指をさす。指をさすのもあまり褒められたものではないと思うが指された本人が指摘していないし置いておこう。


「だって実際そうでしょ?あなたがこなすべきことをそちらの……ええと」

彼女が私の方をチラチラと見て悩んでいそうな表情をしている。

「私ですか?ロサです」

「ありがとうございます。そうロサさんが前衛がこなずべき事柄をほとんど賄ってるじゃないですか」

パーティーにおける前衛と後衛の役割……前衛が敵の攻撃を防ぎ体制を崩したり隙を作るのが主で、後衛は前衛が稼いだ時間で魔力を練り前衛が作った隙で急所に当てて倒す。ダンジョン探索ではそれが普通で受付嬢さんもそういう考えのもとパーティーメンバーを紹介している。

レードはその基本の考え通り私やカラットのために時間稼ぎしてくれてる。彼女に不足を感じたことはないし、何より彼女はまだ新人と言っても差し支えないくらいだ。それでも普通に役割をこなせているのだから文句の一つも浮かんでくるものではない。


「レードさんは前衛の役割をしっかりされてますけど?」

「索敵が出来てないじゃないですか。ロサさんに声を掛けられる直前まで私に攻撃しようとしてた時点で彼女が敵の数や状況を把握していなかったのは致命的では?」

「索敵ですか。別に前衛専門の仕事というわけではありませんし、目や耳がいい人が担当すればいい話なだけでは?私たちのパーティーでは私が一番早く気づけるのでそうしてるだけですし、気づいた後から対処できてたのでいいじゃないですか」

「私はそのせいで人の手によって死にかけたんですけどね」

彼女の言い分はなんとなくはわかる。死ぬなら探索者らしくダンジョンのモンスターで死にたいということだろう。死ぬなら仕事中が一番いい、このあたりの階層なら遺品の価値がわかる人間しか見つけられないからだ。その遺品は売りに出されるかそのまま流用されるかわからないがマジックアイテムより一つ下程度の価値は得ることが出来る。運が良ければ死亡報告がしっかりされて親族が墓を作ってくれるかもしれない。

ただダンジョンの中で人に殺された場合は多少異なる。たいてい装備は売りに出されるし、死後にあることないこと吹聴されその死が貶められることがあるらしい。悪質で許せないがマジックアイテムより一つ下程度の価値はあるのだ金に目をくらんだ人間ならやりかねないのが怖いところだ。


「レードさんなんで索敵ができないくらいでそんな泣かされてるんですか?別に私もカラットも気にしてないいですし大丈夫ですよ」

「それ以外にも戦闘センスがないとか武器の扱いが下手とか、ごもっともな意見ばかり垂れ流されてさ、事実ではあるしタメにもなったんだけど、それはそれとしてやっぱり二人との実力差を感じちゃって私っていらないのかなーって考えたら涙が……」

「レードちゃんは頑張ってますよ!私なんかが前衛しようとしても全然できる気がしませんもん!」

「私だって攻撃魔法はからっきしだししっかり当てられるカラットはすごいと思ってるよ……」

「カラット~!」

「レードちゃん!」

ガシっと二人で抱き合う。


「ロサさんたちのパーティーいつもこんな感じなんですか?」

「いえ……今日はちょっと色々あって私たちの仲が深まって距離感が一気に近づいたといいますか……」

この人……あ、名前聞いてなかったな。

「あ、二人があんな感じですし自己紹介でもしときます?改めてまして私はロサ、魔術師でパーティーでは攻撃、索敵あとはリーダーやってます」

「私はリーフ・ミード、そっちの赤い子と同じく前衛よ」

私たちはそうして握手を交わす。確かにレードと同じく攻撃を受け止めるというより注意を引いて被害を最小限収めるという動きのための装備だ。レードは赤を基調としたものだが彼女は緑を主としている。


「ではミードさんダンジョンの外まで送っていきますよ。私たちもパーティーでここまで来るのは初めてなのでそろそろ帰ろうと思ってましたし」

「ありがとう。パーティーも私以外全滅してそうだしあなたたちのパーティーに同行してもらえるとありがたいわ」

そうして何事もなく脱出しギルドで帰還の報告を済ませた。


「ミードさん今後の探索者活動について方針って決まってます?」

「いいえ決まってないけど」

「なら私たちのパーティーに入りませんか?」

探索者の収入は安定しない。だからミードも多少のたくわえはあるだろうがパーティーを新たに組むのは時間がかかる、彼女の場合中層でも活動できるのだ。それなり以上のパーティーが望ましいだろう。私たちのパーティーも中層で活動することが出来そうだしこれも縁だろうと思い誘ってみることにした。

「それって私が追放されるってこと!?」

「違いますって中層は今までよりも危険なんですよ?レードさん一人に前衛やらせるにも負担が大きくなりそうですし私はレードさんが大きな怪我をおったりするのは嫌ですから」

「そ、そうなんだよかった~」

「と、言うわけなんですけどどうですか?」

「こちらからお願いしたいくらいだしありがたいわ」

そうしてギルドでパーティー登録をすませ無事ミードさんは仲間に加わった。

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