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ダンジョンの主とお願い

「うぅ~レードちゃん大好きです~」

想像していたことが起こった。

自分の耳を疑いたい。しかし目の前の光景はそれが真実であると告げる。普段あまり動かさない私の頭がこれが現実だと訴えてくる。

「大好きだからずっと私の側にいてください」

彼女が追いうちのごとく紡ぐ言葉は私の心を揺さぶってくる。深呼吸をしよう。

……私の心臓は落ち着きを取り戻さない。

仕方ない表情は変えないように努めよう。

「二人ともお待たせしました」

「あ、ロサちゃん……遅かったですね」

「ロサ遅刻なんて珍しいけど大丈夫?体調悪かったりしない?」

「体調は……特に問題はないですね。遅刻の理由は言い訳に聞こえるかもしれませんがお二人が来られるのが少し遅かったため昼食を買いに行ってたんですよ」

「ならいいんだけど……あ、私たちがロサの分も買ってきたのは無駄だった?カラットがあなたのためを思って買ってきたんだけど」

そういってレードのカバンからおにぎりの包みを取り出してくる。

「いえ、私も同じ店で買おうとしてたところを店主さんに教えていただいて買ってないんですよ」

だからレードからおにぎりを受け取って私の昼食としてカバンに入れる。

「では、行きましょうか。今日は新しい階層に行こうとお思います」

早速ダンジョンに行こうと足を運ぶ。

今は彼女の顔を見たくない。醜い私が出てきそうで嫌だ。嫌われたくない。無関心なら耐えられるが嫌いと言われれば彼女は私のもとから去っていくだろう。

ああ嫌だ。

「待って、待っててば!ロサ!」

歩みを止めて振り返るとレードが駆け足で私の背中に追いついてた。さらに後ろには足の速くない彼女がその距離を詰めようと走ってきていた。

あ、つまづきそう。

先ほどからなぜか頭が動き続いていたためその光景に私の体は彼女を受け止めるために動く、倒れるところを難なく受け止めることが出来た。

「おっと大丈夫?」

私が周りも見ずに歩みを速めたからだろう。足場の悪い低層では彼女の運動神経では転ぶ可能性を考慮すべきだった。今までそんなこと考えてたっけ?あれ、どうだっけ……

私ちゃんと見てたっけ。

「あのロサちゃん。支えてくれたのはありがたいんですけど私に優しくしないんじゃないんですか?」

そうだ、私は昨日彼女に好印象以外の感情を持つ努力をすると宣言したのだ。嘘はよくない。よくないとわかっているのだが彼女に欠点がないのだ。嫌う要素がわからないことに今更気づいた。

容姿に関しては否を唱えることができない。町を歩けば通りすぎる人間のほとんどがちらりとこちらを見る。その目にどんな感情を持つかはわからない、だけど悪意を持たれたことはないのは知っている。

頭脳は私が他人にどうこう言えるほど優れているわけではないから嫌いになる理由にはならない。

性格……人見知りはするが誰に対しても人当たりがいい性格だ。私に一々好きと言ってくれるのはとても嬉しいから鬱陶しいとかは感じたことがない。

お金の管理も最近では私よりしっかりしている。金勘定は私の方ができていない。同じものしか買わないし食べないから金銭感覚は身についていないからだ。新しいものを買う場合は基本どんぶり勘定で済ませてしまう。

料理に関しても私たちどちらもできない。いや、私の家に調理器具がないのだから実際にないのかはわからない。例え下手でもそれもまたお互い様だ。

一緒にご飯を食べるのだって一人で食べていた時よりおいしく感じている。総合的に私はとても居心地よく感じているのだ。

でも私は嫌わなければならなず、この手の中にいる彼女を放さなければならない。

「あ、ああ。ごめんね。私が距離を取るって言ったよね」

「あ、ロサちゃん……一つお願い事をしてもいいですか?」

「うん、どうしたの?」

彼女の願いは何だって叶えてあげたい。私のもとから離れてほしくない。いつか私以外の人のもとに行ってしまうかもしれないけど。……後ろ向きなことは考えるな。明るくふるまわなければ誰も話しかけてはくれないのだ。

それはそうと何故だろう彼女の紫色の瞳が潤んでいる。泣きそうなのだろうか?しかし原因がわからない。

「カラットって呼んでくれます?」

「はい?いつも呼んでるじゃないですか」

よくわからない。だけど彼女がそう望むのなら……

「カラット」

「この響きです!カラット……カラット!ふふふ、あはは!やっぱりロサちゃんなんですよ」

豹変と言ってもいい。先ほどまでの潤んだ目はなんだったのかというほど明るい。狂気の域に差し掛かってそうだ。

「えっと、カラットさん?大丈夫?」

「カラットさんじゃないです。カラットでお願いします」

よびすて……心の中ではよくそうしているが現実では失礼に当たると聞いてしたことがない。だけど彼女がそう呼べというのだ。私はそれに従おう。

「よくわからないけど……カラット大丈夫?」

「ええ!大丈夫です!ロサちゃんがいる限り私は大丈夫なんです」

とても晴れやかな表情している。彼女が笑顔なら私も嬉しい。

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