ダンジョンの主を愛する私
改めて作品のタグ設定を見直してたら大ジャンルで恋愛ってあったんですね……今まで見落としてました
私とカラットの生活は寝て起きてギルドに行って探索やクエストを行うそんな日常が続いていた。
本日の仕事も終わったのでいつものギルド横の店で3人でご飯を食べていると私はあることに気付いた
「カラットさん最初の方は変わりばえのない日々って退屈してたはずなのに最近は何も言わないよね」
「そうですかね?」
パスタをフォークに突き刺しながらカラットが疑問符を浮かべて答える
初めのころ、彼女の異常性をレードさんに気付かれないように同じ階層を何度か訪れて少しづつ攻略していたがカラットはそれをつまらなそうにしていた。だから私がクエストに誘ったという経緯だったはずだが記憶違いだろうか
「今わたしは幸せなんですよ。人生の絶頂にいるのにそれを自分から変えようとはしませんよ」
私のものより二回り……いやそれ以上は大きい胸を張って答える、私にとってはもう何年も続いてきた生活だから何かを感じることは出来ないがずっとダンジョンにいたはずのカラットからすれば幸せなのだろう
「あれ、それだと何で退屈だーって言ってたの。矛盾してない?」
「あの頃のわたしは今の自分がどれほど幸福か知らなかったんですよ。今はロサちゃんから愛されてるという実感があるので」
?今何かおかしなことを言ってたな
「カラットさん、私別にカラットさんのこと愛した覚えとかないんだけど」
どこを判断してどうやってその考えに至ったのだろうか?
「ロサちゃんまず前提ですがわたしたちは同棲してます」
普段はしない真面目な表情でカラットが確認する
「表現が若干引っかかる気がするけど概ねそうだね」
「次にわたし達の食費などの生活費は二人の稼ぎから出されてます。つまりは共働きです」
「そりゃカラットさんだけ出させるわけにもいかないし逆なら私だったら怒るよ」
「最後にロサちゃんからのプレゼントです」
そういって私のおさがりのローブのフードをかぶって見せる
「プレゼントっていうか探索者っぽい見た目にするためにとりあえず支給したお下がりなんだけどね。というか新しいもの買ったんだし着なくてもよくない?」
この前服を買ったときにカラットに似合うものをレードが選んでいたはずだ。なのにカラットが私のお下がりを着る頻度はあまり減らない
「いいえロサちゃんからのお送りものというのが重要なので、それよりも!結論ですが衣、食、住それら全てを供にしそれら全てを提供していいるというならばそれはすなわち愛ですよね!」
「恋愛的な意味合いのものではなくどちらかといえば家族愛だと思うのだけれどカラットはそれでいいの?」
黙々とスープをすくって飲んでいたレードが指摘した
「いいんです!愛されているのは変わりないんですから。ご理解できましたかロサちゃん!」
そう彼女は述べるがそれでも私にはよくわからない
「そういわれても困った人を助けるのは普通のことじゃない?カラットさんは住む家もなく、明日食べるものもなく着る服だって定かではなかった。なら私はそれを提供するのはっ普通のことだし、前にも言ったけどそれらが安定したらカラットさんは私の部屋から追い出す予定ではあったよね」
「それもなんかなぁなぁになりましたよね!つまり愛です!」
カラットはなお引き下がらない。そこまでして愛というものはほしいものなのだろうか?愛されたいなら私じゃなくてもカラットの容姿ならば誰からだって愛されると思う。私なんかじゃなくたって
そう考え彼女が誰かに愛される様子を考えてみる……
?愛される様子ってなんだろうか
ご飯をあげればよいのだろか、衣服を与えればよいのだろうか、住む場所を与えればよいのだろうか
どれも私が昔姐様にしてもらったことだ。彼女はそれを私が愛してる理由として挙げていた。私もそれは愛されていると感じた……と思う。なら私は彼女を
「愛してるのかな?」
疑問が尽きないがきっとそうなのだろう。ならばと腰につけてる剥ぎ取り用のナイフを引き抜き勢いそのまま隣に座るカラットの腕めがけて振りきった
「きゃっ」
レードが悲鳴をあげたが目の前の彼女にはなんの変化ももたらさなかった
「え?」
いや、彼女の顔から笑顔が消え失せ戸惑うような表情に変化したのだから変化があったと言えるのだろう
「ロサ!急に何してるの!?」
「カラットさんを殺そうとしただけですけど」
「それが何でって聞いてるのだけど!」
「彼女との約束ですから殺そうとしてるだけです。レードさんには危害を加えるきはないので安心してください」
安心させるために笑顔を向ける
カラットと私の出会い、その時に約束して私が彼女とともにいる理由
何かの感情の時にのみカラットを傷つけられるから殺してほしいというもの
どんな感情かわからないため色々試す必要があるのだ。愛するという感情は対人において最も好印象のそれは彼女を傷つけるには至らなかった。無関心から愛までの途中の感情……具体的にどんな名称なのかは知らないがそれらの状態の時も試すべきだっただろうか?
「約束ってカラットはそれでいいの!?」
この件については前から話してあったしレードが今更声をあげているのか理解できない
「あ、え、その……」
カラットは何か言葉を出そうとしている雰囲気だった。普段少しうるさく感じるときもあるが喋らなければかわいいのになと思う
「約束ですよね……」
どういうわけかカラットは両腕を広げこちらを迎え入れるようなポーズをとる
「ちょっとカラット!」
「何やってるの?」
「「え?」」
おかしな空気が私たちの間に流れる
「ロサちゃんは私を殺すんですよね?だからどうぞ」
カラットは自身を殺すよう私を促す
「いや、今日はもうしないけど」
「「はい?」」
二人とも同時に同じ声を出す。どこか会話がかみ合ってない気がする
「えっと……今さっき私カラットさんを切りつけたよね?」
「え、そうなんですか?」
「うん、そうなんだよ。それで傷一つついてないからどうしようか?」
私だけの問題でもないし彼女に協力を求めるのも手だと思い提案してみた
「どう、とは……」
「どうって、カラットさんを殺す感情の話だよ?一応好印象の中でも一番上の感情だと思ってる愛の状態でやってみたけどカラットさんを殺せなかったし、過程の感情も試すべきなのか、それとも殺せるのは悪印象の感情でそっちの方から試すべきとか。いっそ関係をリセットするために離ればなれになってみるとか」
いくつか思い付いたことを口にする
カラットの顔がなぜかどんどん血の気が引いていく今更殺されることを怖がってるわけでもあるまいし今後の生活のことを気にしているのだろうか?
「うーん。カラットさんが何を考えているのかわからないけど生活のことなら大丈夫じゃないかな?たとえ私がカラットさんを嫌ってもパーティーは続けるし一緒に住むことも問題ないよ。だから今すぐ新しい部屋を探せとも言わないし」
「ロサ」
レードが私の名前を呼ぶがその声には他人の機微に疎い私でもはっきりと伝わるくらい怒気が含まれていた。
「どうしてレードさんが怒ってるんです?私とカラットさんの話なのに」
「当たり前でしょ今日のところは私帰るわそれとカラットも借りていくから!」
そういってバンと机に食事代を置いてうつむいたカラットを連れ帰っていった
「あ、レードさんお金多めに置いて行っちゃった……それに若干残してるし、食べきらないともったいないよね」




