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ダンジョンの主と迷子

受付嬢さんの意外な一面を見て驚いているとレードがやってきた

「二人ともおはよう」

「おはようございます!」

「おはよう……」

「あれ、もしかして体調悪い?」

そういって私の顔を覗き込んでくる

「いえ、そんなことないですよ」

「明らかに調子悪そうだし、誘っておいてなんだけど無理はしないでね?」

「わかってます。大丈夫ですちょっとさっきのことが衝撃的すぎて……」

「さっきのこと?」

思い返すと背筋に寒気が走る

「カラットさん説明お願い……私の口からはとても……」

私は口に手を当て、もう一方手でカラットの腕を叩いて説明を促す

「え、ロサをここまで怖がらせるものって何?」

そういってレードが顔を青ざめながら両腕を抱える

「では、説明しますね……と、その前に集合できましたし移動しながら話しましょう周りに迷惑がかかっちゃうかもしれませんし」

「移動しながらでいいって……そんなに深刻な話じゃないわけ?」

「ええ、そういうことです」

「はた目から見ると結構深刻な状況に見えるんだけど。だって、ロサが!カラットの腕の中に何の抵抗もせずすっぽりと入ってるんだよ!?」

そう今私はカラットの腕の中にいる。母親の安心感というと語弊があるのだが、こうしているととても落ち着くのでカラットには悪いが受付嬢さんが仕事に戻った後からレードが来るまでずっと抱きしめられていた。

「一応聞くけど。幼児退行の呪いをカラットがかけたとかじゃないんだよね?」

「そんなものがあるんですか?」

「うん……心を疲弊した探索者が一部の大人の店で使うらしいって昔聞いた……」

「ロサちゃん解説ありがとうございます」

私の頭をなでてくる。身長が私よりずっと大きいせいかカラットの手でも大きく感じられる

「その様子を見る限り知ってたらすぐに呪いをかけそうだしそんなわけないか」

「えっと、わたしへの偏見は置いておくとしてそろそろ本当に移動しましょうか」

「そうだね」

?カラットの腕の中から抜け出そうとするが抜け出せない、思いのほかカラットが強く抱きしめてくるからなのだが

「カラットさんそろそろ解放しても大丈夫だよ?」

「ロサちゃん……名残惜しいのでギルドを出るまではこのままで行けませんか?」

抵抗する気力もわかないのでカラットの受け入れた私はそのまま抱っこされてギルド外まで連れ出された。宙ぶらりんになったのは初めてだが案外面白い体験だった。恥ずかしいので二度と……二度とやる気はないが


カラットからの事情を聞いたレードは目を丸くしていた

「あの受付嬢さんそうだったんだ」

「私のことそんな風に思ってたって意外ですよね……」

「いや、昨日のカラットとのやり取り見てたらロサのこと好きなんだろうなーとは思ってたけど、まさか勝手に身長を把握して服をいくつか用意してるのはちょっと引いてる」

「あれ、レードさんは知ってたんですか?というか好き?」

「あの様子を見て気づかない人の方が少ないと思うよ多分」

「私そんなに鈍い方ではないとは思ってたんですけど気づきませんでしたよ?」

「ロサはうん……もっと大きくなったらわかるんじゃないかな?」

私の方が年上だし身長の話ならもう伸びる気配はないのだが

「それよりも!今の話聞いた限りだとロサがああなった原因はよくわかなんかったんだけど。無償で服を貰うという点で考えればロサは普通に受け取りそうなもんだと思うけど。ロサが見た目相応にビクビクするものなの?」

レードはどれだけ私のことを幼いと思ってるのだろうか今度しっかり聞いてみるべきだな

「理由は、そうですね……わからないという答えになりそうですね」

「わからないのにあんな風になってたの?」

強いていうなら

「好意を向けられたからですかね?」

「好意?そんなのカラットから毎日のように散々向けられてるじゃない」

「カラットさんはなんというかもうモンスターの鳴き声だと思ってるので……」

「ロサちゃん私の愛をそんな風に捉えてたんですか!?」

「ごめんカラット私もモンスターとまでは行かなくても環境音の一部にはなってたのは事実かも……」

「レードちゃんまで!?」

「一応カラットさんに最初に告白されたときもそんな反応を……したよね?」

「どうして疑問形なんですか!?」

一週間ちょっと前の大きな出来事であったはずなのにすでに記憶が薄れる程度にはそこからの日々が忙しかったためだろうかそれとも

「カラットさんといる毎日が日常になってて私のなかでは覚えるに値しなくなるくらい普通になってるから?」

「そ、そうなんですね。それなら仕方ないかもしれませんね。ええそうですロサちゃんとの日々は特別じゃなくなってるんですよね。日常であり、普通なんですよね」

カラットらしくない歯切れの悪い言い方だなと思って隣を歩く彼女の顔を見てみるとそれはもう真っ赤になっていた

「カラットさん顔赤いけど大丈夫?」

「ええ大丈夫ですよ!ちょっと先に服屋に行ってよさそうなのを見繕ってきますね!」

そう言い残すと先に行ってしまった

「カラットさんそんなに私に自分好みの服を着せたいのかな……」

好きな人の服を選びたくのが人間の(さが)なのだろうか、動物のマーキングに近いのかな

「まあ大丈夫でしょ。私たちは歩いて行きましょう」

「そうですね」


そうしてギルドから一番近い中で大きめの服屋に到着した

店内を見渡してみると流石に黒以外の服で占められている

「カラットさんはどこに行ったんですかね?」

「先についてるはずだと思ったんだけどいないわね」

「とりあえず目的もなく服を買おうとする場合の服屋って言ったらここに決まってますよね?」

「そもそもロサはここで服を買うってカラットには話した?」

「レードさんが昨日話したんじゃないですか?」

今日の予定も二人で決めていたみたいだし場所の指定もしてると思っていたのだが

「してないわよ?私も服と言ったらここしかパっと思いつかないしこの町に住んでれば暗黙の了解みたいなところあるじゃない」

「カラットさんこの町に住んでまだ一ヶ月も経ってませんしその了解知らないのでは」

「あ」

「……とりあえずカラットさんを探しますか」

「今回の目的カラットの服も探すのが目的だものね」

「私はとりあえず道なりに探してみますね」

「道なりってこのまま進むとあまり治安が良くない地域に行くけどそこまで行ったなら自分で戻ってきそうなものだけど」

「念には念をですよ。それにあの辺なら私も顔が効くので人海戦術も使えますし」

「じゃあ私はこの周辺探してみるから何かあったらここに集合で!」


カラットのきれいな髪はすぐ見分けがつくと思っていたが、思いのほか見つからない。本当にそのまま道なりに進んでしまったのだろうか

「ここまで来たら流石に雰囲気が違うって気づいてほしいんだけど……」

そこまで周りが見えてないと信じたくはないが探さないわけにもいかないので私は足を踏み入れる

「カラットさーんいますかー」

返事は帰ってこない目に見える範囲でだれもいないので当たり前だが

複数の足音がこちらに近づいてくるこのあたりに住んでる子供たちだ

「ロサねーちゃん!どったのー!」

「よく来ましたね。今人探ししてるので手伝ってもらえませんかね?」

「いいよー!」

後で何か買ってあげよう


子どもたちの力も借りて少し経った。カラットっぽい人がいたというので向かった

「あ、ロサちゃん!」

「カラットさん何やってるの?」

着いた場所ではカラットが子供たちと遊んでいた

「いや、ですね、これは迷子になってたというわけではなく子供たちが遊んでほしそうだったので大人として子供たちに付き合ってただけなんですよ。ええ、決して子供たちに道を聞く代わりに遊んでたというわけではないです」

「カラット姉ちゃん迷子になって涙目になってた!」

「うちの弟が迷子になったときみたいになってた!」

「だ、そうですが。子供たちに慰められてませんか?」

「お恥ずかしいかぎりです……」

「今度お菓子か何か買ってくるからまたね」

「「わかったー」」

そうして私たちは来た道をもどり服屋でレードと合流した

最近ローファンタジーの定義をしたべたので次回からジャンルをローファンタジーからハイファンタジーに設定しなおします


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