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ダンジョンの主とおにぎり

風邪ひいてました



部屋に戻ると獲物にとびかかる獣のごとくカラットが私に突っ込んでくることに安心感を覚える


「お帰りなさいロサちゃん!何か変なことはされませんでしたか?」


「ええ、受付嬢さんがどこぞの変質者から守ってくれたおかげでね」


「人を変質者呼ばわりしないでください!あくまでわたしはロサちゃんのためを思って……」


「誰もカラットさんのこととは言ってないけど」


「カマをかけたんですか!?」


「カラットさんが勝手に自滅しただけでしょ……」


大げさなそぶりを見せたあとカラットは手に持っていたコップを差し出してくる


「それはそうと一応お水飲んどきます?」


「ありがとう、助かる」


「あ、それと朝食ってもう食べました?まだなら私買ってきますよ?」


「受付嬢さんのところで食べてきたから大丈夫」


受付嬢さんのところの朝食は好物ではあったが朝食べるには少々量が多かったのでカラットが朝食を用意してなくて助かった


「あ、そうなんですね、わたしはまだなのでちょっと買いに行ってきますね」


そういってすでに身支度は済ませていたようで彼女は家を出ていこうとする


お腹を空かせているのにわたしと一緒に食べたいからと待っていたカラットに申し訳なさは感じる、けれど普段の私ならそこで謝罪の言葉を言って家で彼女を待っているか先にギルドに行っていたかもしれない、けれど今日は普段と違う目覚め方をしたからかつい別の言葉が出てきてしまった


「待って、私もついてく」


「?構いませんが珍しいですね」


「ほら、受付嬢さんのところで食べすぎちゃって、このままだと今日の仕事にも支障をきたしそうだし腹ごなしにカラットさんの朝食の買い物に付き合いたいなって」


「わたしとしては嬉しいので問題ないですが何か心境の変化でもありました?」


「わからない、けど何かあったとは思う」


「そうですか、ではロサちゃんは着替えてから行きます?」


「このままで大丈夫、カラットさんもお腹すいてるんでしょ。待たせるのは申しわけないし」


「それじゃあ行きましょうか、せっかくだから手とかつないじゃいます?」


「しないから、さっさと行かないとカラットさんの好きなおにぎり売り切れちゃうんじゃないの?」


「その点は安心してもらって大丈夫なんですけど、単純に日持ちするものなら他にもありますし、携帯食として食べるならパンの方が手が汚れない点で優れますから、まあつまり人気はそれほどなんですよね……」


そう話す彼女の表情はとても残念そうにしていた

自分の好物が他人にあまり受け入れられてないのは悲しいことだと思う

彼女との約束を思い出すと私も少しは歩み寄っていくべきだ


「じゃあ私のお昼はおにぎりにしようかな」


「ロサちゃんもおにぎりのよさを広めてくれるんですね?」


「そういうこと、実際前三人で食べたときも酸っぱくはあったけどおいしかったしまた食べてもいいとは思ってた」


カラットとレードと私で食べたおにぎりの味を思い出す

酸味の強い食べ物であったはずでこういう機会がなければ好んで食べようとは思わないシロモノだった

その時のことを思い出すと口の中が酸っぱくなったように感じ表情にも出てしまった


「酸っぱいのが苦手なら、今度は酸っぱくないおにぎり選びましょうか?わたしのおすすめは鮭が入ってるやつですね」


そう提案してくる彼女に疑問が浮かぶ


「おにぎりって酸っぱくないのもあるの?」


そう問いかけると彼女が一歩詰め寄ってきて力説し始める


「ええ、もちろん。おにぎりというのは手のひら大の米の塊のことをさしているので中身が梅干しだろうと鮭だろうと見た目がおにぎりならそれらはおにぎりなのです」


「つまり中身の見えないサンドウィッチみたいなもの?」


「まあそんなところです。そろそろ出ないとほんとに売り切れそうですし行きましょうか」


そういって家をでる彼女の私は追いかけた

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