ダンジョンの主が私を好きな理由
「なんというか変化がないって退屈ですよねー。」
そう発言したのはカラットだった。カラットが探索者になってから1週間で5階層に到達しており、そこから二日連続で5階層を探索してその帰り道での発言だった。
「退屈って……日々仕事があってお金を稼げてるんだからそれでよくない?」
「ロサちゃん何言ってるんですか?日々稼げても、仕事があっても変化がなければ退屈を感じるものですよ。」
「一応命をやりとりを行ってるんだよ?それを退屈って……」
「わたし傷がつかないので命の危険というのがよくわからないんですよ。だからロサちゃんよろしくお願いしますね。」
「カラットを傷つけられるのは私だけって話だっけ?」
「はい、”わたしを傷つけられるのはわたしが好きなあなたが特定の感情を持った時”つまりはロサちゃんってことです。」
「私を好きっていまいちわからないのよ。私、好かれる要素皆無じゃない?背も小さい、髪も真っ黒で胸も小さいんだよ?女としては魅力0に感じるんだけど。」
「何をいうんですか、昔の人はいいました。貧乳はステータスだ!希少価値だ!とそれにわたしは見た目は……まあかわいい方がいいですけど。それよりもあなたの心が好きなんです。」
「ダンジョンの主を名乗る人間に褒められる精神性って……」
なんというか不名誉のことに感じる。先日の第3階層のモンスターを邪魔だから殺すということに嫌悪感を抱いてた彼女の倫理観はもしかしたら私よりも一般的で道徳的なのかもしれない、そんな彼女に好かれるだけならば嬉しいし喜べた。しかし殺しを願われる私ははたして一般的な道徳観……いや善性を持ち得ていいるのだろうか。
「わ、わたしとしては一般的に褒められる優しい人間って言ったつもりなんですけど……」
どこか困ったような表情でいう彼女の言葉は先ほどまでの私の考えとは裏腹にとてもシンプルなものだった。
「優しい……ね私が?カラットさんの目は節穴じゃないの?」
「いいえ、この約1週間わたしはロサちゃんと暮らしてきましたけどロサちゃんは優しいと思いますよ。」
「?私としては一般的なことだと思うのだけど。困ってる人は助けるものって習わない?」
「わたしがこの町の人とちょっとずれてるかもしれないというのは否定しません、わたしの価値観はわたしが昔積み上げたものですから。それでも見ず知らずの人間の衣食住の面倒をみるのは優しすぎるといっても過言ではないです。」
まっすぐ見つめてくる彼女の紫の瞳がその言葉が嘘偽りのないものだと告げているようだった。
「ロサちゃんは忘れていませんか?わたしがロサちゃんの部屋に泊めるのはせいぜいが二泊だってご自身のお言葉。」
そういえばそうだった当初はダンジョンから出たばかりだから当然住む家もない彼女を見かねて私が助けたのだった、稼いで他の宿泊所を見つけろ、とも。私自身そんなことはどたばたしていたから忘れてしまっていた
「でもこうやってわたしたち1週間以上経っても一緒の帰路について夕飯を見繕ってます、それに部屋の中にはわたしの家具も増えてます。そんなあなたが優しくないなんて天が認めてもわたしは認めませんん。」
そういって夕焼けの光を反射させながら光る金色の髪をたなびかせてほほえむ彼女はとても美しかった




