ダンジョンの主の朝食
声を出さなかった自分をほめたい。実際は声にならないほど驚いたといった方が正しいのだろうが……
驚きの原因であるレードはすやすやと眠っている。昨日私が覚えてる限りでもそこそこ飲んでいたのだ眠りも深くなるのも当然だろう。
起こさないようにそっとベッドから出て身支度をすませる。朝食はどうしようか。
「まあ、軽めでいっか。」
そうとなったら早速出かけよう、一応メモは残しておいて
この都市の朝は早い、自炊をしない探索者のお腹を満たすために早くから屋台が並んでいるからだ。そういえば私も自炊には挑戦しようと思ったが器具を一からそろえるのは面倒だったうえ時間もかかると判断したためあきらめたことがあった
「うーん、まだ頭が痛い一応水は飲んできたけど我ながら酒に弱すぎる…」
屋台通りに出れば自然と決まると思ったが、どの店からも美味しそうな匂いが漂ってくるので決めきれないな……
「あの二人も初めてのお酒をたくさん飲んだし体調悪くしてなければいいけど。」
部屋に置いてきた二人にも何か買っていった方がいいだろうかと悩んでいると屋台の店主がこちらに声をかけてきた。
「そこの嬢ちゃん二日酔いの介抱のための買いだしかい?それならうちの料理買っていきな。」
「嬢ちゃんって……私今年21なんですけど。それでなんの屋台なんです?」
「梅の実を干したものを炊いた米に包んだ料理でおにぎりって名前なんだが最近流入してきてな、梅は二日酔いにいいぞ。」
「梅ですか、味の想像はつきませんが。じゃあそれ3つください。」
「毎度あり!」
出されたものは店主の説明通りのものだった、米の塊が3つ。私の手には少し大きかった
「あの、これちょっと大きくないです?」
「いや、大きさはそんなもんだ嬢ちゃんの手が小さいだけだな。大きいなら何か包みでも用意してやろう。」
そうして私は包んでもらったおにぎりを持って帰宅することにした。
部屋についても二人は寝ていたようで流石に今日も探索しなければならないし起こすか。
「二人ともそろそろ起きてください。」
「お母さんもうちょっと待って……」
「誰がお母さんか!」
「ん?あ、ロサちゃんおはようございます。」
「おはようございます。それでレードさんは起きましたか?」
「はい。おはようございます……」
どうやらレードの方は朝が弱いのかまだ寝ぼけているようで自分が服を一枚も着ていないのに気づいていないらしい
「レードさん起きたなら服を着た方がいいんじゃないですか?」
「ん、え、ここどこですか?」
「私の部屋ですけど。」
「レードちゃんが店で寝てしまったのでわたしが連れてきました。」
「そう。カラットが連れてきたのね感謝するわ。」
「畏まった口調にしなくたって大丈夫ですよー心配されてることはロサちゃんも気にしないでしょうし。」
「何の話?それよりも二人ともお腹減ったでしょ、朝ごはん買ってきたから食べましょうか。」
「わーありがとうございます!それでなにを買ってきたんです?」
包みからおにぎりを二人にハイと手渡し私は自分の分をかぶりつく
「おにぎりですか。朝食といえばな一品ですね。」
「え。これそうやって食べるの?」
二人は各々の反応を見せながら食べはじめるのを眺めていると私が食べてるおにぎりから急な酸味押し寄せてきた。
「すっぱ!なに、この唾液があふれる感じ。」
「そりゃ梅おにぎりですもん。すっぱいですし唾液もでますよー。」
そんなやりとりを交えながら私たち3人の朝食は終わった。