~ありません!~
「すみません死にました!」
「そうですか、ではこちらにお座りくださいー」
ぜんっぜん記憶にないがどうやら俺は死んだみたいだ。俺自身がそう言ってるし。
案内に誘導されて椅子に腰掛ける。白と水色のシンプルな間取り、いかにも"受付"って感じの部屋だ。目の前の女性が話し始める。
「では先程にもご説明したんですけどこちらは転生先をご紹介するサービスとなります。」
転生先……?んな話聞いたっけ?
「『普段 ゆうじ』大学生。"焼き鳥とりやき屋"でバイトしていたこと以外社会貢献なし」
『普段 ゆうじ』!?俺だ!俺の名前だ……そうだ、俺は車に轢かれて……
「その上学業に励むこともなくずっと家に引きこもり続けるだけの無意味な人生を…」
「待て!それ以上掘り返さないでくれ!心に刺さる」
「おや、もう目が覚めていましたか、死後は頭ふわふわの方が多いので一度こうやって現実に落としているんです、ご安心ください、学生なんてみんなそんなもんですよハハハ!」
「んで、そのサービス?って具体的に何してくれるんだ?」
「あなた様の生前の行いに見合った転生先を提案します」
「転生先って?」「何でもです」「なんでも…?」
「ではご自身の理想の人物像をおしえてください!」
え……いきなりだな……「そりゃ、転生するなら勇者だけど…」
「勇者ですね、じゃ、イッテラッシャーイ!!」
俺の身体の不透明度がさがっていく…トウメイになっていく!!
「俺消えかかってんだけどどおなってんの!?」
「"習うより慣れよ"です!イッテラッシャーイ!!」
……ハッ!ここは?
「お目覚めになりましたか。魔王サマ。」
「!!?」
【いかがですか?魔王になった気分は?】
「あ!その声はさっきの女!一体何だこれは?どうなってるか説明しろ!」
【プレビューです!】
「プレビュー!?」
~プレビューとは"下調べ"的な意味である!~
「転生先にふさわしいかどうかチェックしてるんです」
「っ…というかそもそも魔王ってなんだよ!俺勇者って言わなかったか?」
【身のほどをわきまえろよ凡夫が…】
「!?」
【あなた様は生前の行いがビミョーなので勇者には全くふさわしくないと判断しました♪】
「魔王サマ、勇者一向が我が城に向かってイマス。共に迎え撃ちにいきまショウ」
側近らしい頭巾を被った奴が俺の手を引っ張る。しかも見かけによらず力が強い!!
まずい!引きずられる…!
「や、やめろ!!俺は勇者がいいんだ!魔王なんて死んでもごめんだああ!!」
ヒュンっ!
…ドサっ!
「いてて……あれ?ここは…」
気が付くと俺は最初の部屋に戻っていた。あの女もいた。
「あ!さっきの女!もしかして考え直してくれたのか!」
「いいえ。」
「あーそうか!プレビューって言ってたし魔王でいいかどうかの確認のために俺をここに戻したんだな!」
「いえ、あのまま強制的に魔王にするつもりでしたよ?」
このアマァ!!
「……じゃあ何で俺をここに戻したんだ?」
「あなたが死んだので。」
「死んだ?魔王になってからは死んだ覚えはないぞ?」
「いえ、"元魔王が死んだ"ので」
「元魔王?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?あなたが魔王になる代わりにもともと魔王だった人は転生前のあなたになるんです。」
「…要するに現世の俺……"普段 ゆうじ"に転生した魔王の方が死んだと。」
「はい!転生してすぐに車に轢かれました!転生場所が悪かったですね!」
うわ……魔王可哀想。
「までもプレビューで良かったな、結局今の出来事は全部あくまで想定の話ってことだし」
「……先客がおられますのでこちらでお待ちお待ちください!魔王さん」
「はい。」
魔王だああああああああーー!!?
え?なんでいるの魔王?さっきまでのってプレビューじゃないの?現実なの??
目の前の女は何事もなかったかのようにカタログらしきものをペラペラめくっている。
俺は一体これから何に転生するのだろうか、というか魔王いなくなったけど転生先の世界はどうなっているのだろうか、多くは望まないからせめて普通の生活を送らしてくれ…村人Aとかでいいから!
「魔王がダメになってしまったので…今度はこちらの魔物3匹からお好きなものをお選びください♪」
ダメそう。
続く!