表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

見習い魔女さん、男である可能性を示唆される

 見習い魔女のハルピィは、人の身に爬虫類と鳥類の特徴を、わずか併せ持つ。ほぼ人にしか見えない亜人である。


 この日昼頃。ハルピィは師でもある母に、薬用植物の採取を命じられ、その帰りは夕暮れ時になった。


 森の中にぽつんと立つ、お化け屋敷然とした家の扉を開き、外よりも暗い家の中へ一歩を踏み入れる。


 入ってすぐ。

 左右の壁に備えつけられたロウソクがともり、ぼんやりとした光の中、床で何かが動いた。


「ただいま、母さん」


 言ってハルピィは下に目を向ける。


 その視線の先には座り込む一匹の黒猫。

 黒猫は頭を持ち上げ、ハルピィの右手に目を向け口を開く。


「お帰りなさい。ハルピィ。

立派なマンドラゴラね」


「うん。

でもね、ごめん。大物は収穫出来たけど、頼まれたものの中で、オトメーの花の蜜だけは、どうして手に入らなかったの」


「それは、あればいいなくらいに書いたものだから、あまり気にしないでいいわ」

「え?うん」


 時に厳しく、時に気儘な母のことだから、何かしら小声があると覚悟していたハルピィは、肩すかしをくらう。


「それよりも。それらは私が片付けておくから、あなたは手を洗ってらっしゃいな。すぐに夕ご飯にするわ」

「あ、うん」


「なあに?そんなところに突っ立って。早くなさいな」

「う、うん」


 ハルピィは照明(ライト)の魔法を唱え、ブーツのまま家に上がる。


 灯りを伴い、廊下を進んで、中程へと進む。


 そこで左手に曲がり、洗面所へと入ると手洗い、うがいを済ませた。


 カゴの中から手ぬぐいを一枚取り、それを水に濡らして絞り、頬と首筋と。体についた汚れを簡単に拭う。



 そうこう身だしなみを整える内に、卵が焼ける甘い香りが漂い、ハルピィの鼻をくすぐる。


「できたわよー」

 と、洗面所に置かれたコップより、母の呼ぶ声が聞こえ、ハルピィの背がピンと伸びた。



 口に見立てられるものに、自分の言葉を語らせる。通知の魔法だったか。

 まったく。心臓に悪い。


 ハルピィは苦い顔で、茶の間へ向かう。



 入ってすぐ。テーブルにドンと置かれた、大盛りのオムライスが目に飛び込む。


 ハルピィは好物を前に目を輝かせ、足早にテーブルに進む。

 ……のだが、その歩みは席につく手前でピタリと止まる。


「どうしたの」

 と母が問う。

 見ればニヤニヤと笑っている(ように見える)。


「いや、どうしたのって、これ」

 ハルピィは母を見おろしオムライスを指で差す。


 それにはケチャップで『孫の顔が見たい』との、メッセージが書かれていた。


「ノリよノリ」と母。

「それは、でしょうね」とハルピィ。イスを引き、これに座る。


「まあ孫の顔が見たいのはホントだけどね〜」

「気が早いって。私みたいな子供に嫁の貰い手なんてないでしょ」


「ああ…そのことなんだけど」

「何?どうかしたの。もしかして私、嫁に出されるの?」


「いや、ね。そういうことでなく。面白い話でもないんだけど」


「何よ、もったいぶって」

「まあいいわね、こんなつまらない話。忘れてちょうだい」


「話しておいて。気になるじゃない」

「いやー。まあ、うん。

お母さんね。

生き物はみんな、ち◯ち◯の有る無しで男女の判別をするものと思ってたのよ」


「…ご飯時に何を言っているの?」

「まあそういう反応になるわよね。だからこの話は、やめときましょう」


「いや、途中で止められても困るんだけど」


「あんたも私に似て、難儀な性格してるわね。

えっとね。あなたが生まれた時、ち◯ち◯が無かったから女の子だと思ったんだけど、鳥って種類にもよるみたいだけど、ち◯ち◯が無いみたいなのよ。

それで、爬虫類のち◯ち◯は、どうも内側に隠れてるらしくて。

書斎の机の上に、鳥類や爬虫類の図鑑だとかが置いてあるから、それを一通り読んでみるといいわ」


「聞いたのは私だけど、ち◯ち◯、ち◯ち◯連呼しないでよ!

うぅ…もう、ご飯って気分でもなくなっちゃったし、今日はもう寝る。

おやすみなさい!」


 そう言って立ち上がると、茶の間を後に。自室に直行……するかと思えば、母の書斎の前で立ち止まり、目を左右に泳がせる。


 迷うこと数分。ハルピィは書斎に入った。



「えっと…机に。鳥と爬虫の本は。

なんだか関係ない本まで置いてあるけど、これかしら」


 机の上に置かれた数冊の本を抱え。ハルピィは自室に戻る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ