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1話

 かさかさっと何かが頬に擦れる感覚がする。


「う、うぅん……虫かぁ?」


 寝ぼけたままの頭で俺の顔に当たっていたのが何かを考える。

 ゴキブリだろうか? それともクモ? まあ、どっちにせよ安眠のためには駆除しなければならない。


「あれ? どこだここは?」


 一向に開こうとしない重たい瞼を何とかこじ開け、視界へ入ってきたのは青空だった。

 俺の家の天井が吹っ飛んでいるとかそういうことが起きているならこの風景にも納得はできるが……。


「やっぱり俺の家じゃない。なんで俺はこんな平原で寝てるんだ?」


 上半身を起こし、周囲の様子を確認する。

 すると、見慣れた俺の部屋ではなく、どこまで続いているかと錯覚してしまうほど広大な平原だった。


 体を起こすときについた両手には草の感覚がある。おそらく俺の頬をこすったのは風に揺れたこの草だろう。


 俺は自分の部屋で寝ていたはずがなんでこんなところに……あ、頭が……。


 急な頭痛に襲われて思わず頭を抱える。


「なんだ、頭がいてぇ……」


 頭がかち割れるんじゃないかという痛みが俺を襲う。間違いなく今まで経験してきた頭痛の中では最強だ。頭の中が直接何かで殴られているような感覚と鈍い痛みが同時に来る。


「あ、がぁ、くそぉ……何なんだよこれ」


 痛みに耐えられなかった俺はそのまま意識を手放してしまった。






「……うわぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」


 巨人に踏みつぶされる寸前で夢から覚める。


 思わず叫んでしまったが、さっきと変わらない景色に安堵する。


「ふぅ、誰にも聞かれてなさそうだな。俺の異世界転生一発目の印象が台無しになるところだった、危ない危ない」


 先ほど気を失った時に今の俺のおかれている状況のすべてが記憶として流れ込んできたのだ。

 激しい頭痛はその副作用みたいなものだったと考えれば合点がいく。


「ここは、地球とは異なる異世界で俺は魔王を倒すためにわざわざ呼び出された勇者なんだよな。とりあえず、スキルを確認しとくか。オープン」


 俺が虚空に向かって発声すると、目の前に透明なウィンドウが現れた。

 これも初めて使ったが、頭が何をどうすればいいのかわかっている。不思議な感覚だが、不安はない。


「俺の名前と年齢、今はそんなものはどうでもいいんだ。お、あったぞ。雷魔法と水魔法の極限適正? まあ、この二つの魔法に関しては最強って受け取ってよさそうだな。まだあるな、攻撃無効にレベル上限開放か」


 今読み上げたスキルの詳しい内容が記憶として呼び起こされる。


 極限適正は、すべての魔法の行使が可能。そして、威力に大幅な補正がかかるというものだな。つまり、この二つの属性の魔法に関して言えば俺はこの世界で最強ということだ。それに、攻撃無効はある一定以下の威力の攻撃すべてを無効化するという強力なスキルだ。このスキルは自分のレベルに依存して効力が強まるので、レベル上限解放のスキルとの相性も抜群だ。今の状態でも上級魔法程度なら無効化可能ってところかな。


「魔法の試し打ちをしておきたいが、ここらの平原を焼野原にしてしまうからやめとくか。どういう魔法なのかは実際に使わなくても大方覚えてるしな」


 本当に必要な知識は全部そろっている。これが、一気に流れ込んできたと考えると末恐ろしいが、なんともないので大丈夫だろう。

 それにいきなり、異世界へ転生したっていうのに焦りも不安もない。ただ、魔王を倒すという使命が俺の進むべき道を照らしだしてくれている。この魔王を倒せば自由の身になり、元の世界にも返してもらえることも覚えている。倒した時点で俺が帰りたいと思っているかはまだわからないが、それまでによく考えておこう。


「レベル1からっていうのはちょっと融通利かせてほしかったところだが、このスキルがあれば安全にレベルアップも可能だな」


 せめてレベル30くらいからスタートさせてくれていたら俺の攻撃無効の効果はもっと強大になっていたはずなのにな。今だと上級魔法が限界だろうが、レベル30ならば、超上級魔法も完封できると俺の記憶が言っている。ひとまずはそのレベル30を目指してレベル上げに励むのが目標になるだろうか。魔王はレベル1000を優に超えているので、現状の俺では防御が心もとない。もちろん、防御系の魔法も使えるが不安要素はできるだけ排除してから進めるのがいいだろう。


「まずは、この平原から町を目指さないとな。あっちに大きな町があるからそこに向かうとしようかな。いくら強さを手に入れたとしても衣食住は必要だからな。冒険者になって金を稼ぐとしますか」


 記憶を頼りに、目的地を決める。冒険者というのはモンスターが生息しているこの世界だからある職業の一つだ。モンスターを狩ることを生業としたモンスター版狩人みたいなもんだな。

 一番近い町を選んだが、それでもここから500キロは軽く離れている。普通に歩いていたらいつつくかわかったもんじゃない。だが、俺には移動用の魔法もあるからな。


「雷化」


 雷魔法の移動魔法、雷化を使用する。

 

 簡単に使っているように見えるが、この魔法は自分自身を雷へと変え、稲妻のごときスピードで移動することができる超上級魔法の一つだ。


「よし、これで行けば1分もかからないな。行くか」


 雷と化した俺は、平原をゴロゴロと稲光を発しながら高速で移動を開始した。

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