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永遠の人魚姫 ~世界はやがて一つにつながる~  作者: 伊奈部たかし
第2章 素性を隠す人魚姫と自分の正体を明かすことを躊躇する王子のソロモン潜入編
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第76話 祝杯

 ドアが開いて中から、カノンが出てきた。

 カミーユはカノンと目が合ったが、カノンはそそくさと王の居室の方へ行ってしまった。

 入れ替わりに部屋に入る。


 リーファが、一人ニヤニヤしてにちらを見ている。

「何話してたの?」

 カミーユは聞いてみる。

「お腹がすいたので、美味しいものをいただけると嬉しいですって話」

 違うなと思いつつ、カミーユはそれ以上追及しないことにした。

 女性同士の会話をあれこれ詮索するのは野暮だ。


「もう少ししたら、マキさんが到着するって」

 ハイドライドが廊下にいた時に聞いた情報を伝える。

 それを聞いてリーファがほっと胸を撫で下ろすのが、遠目にも分かった。


 リーファがウキウキしながら提案してきた。

「マキが着いたら、全員の無事を祝って乾杯しない?」

 機嫌は直ったようだ。二人だけで話したことで、カノン王女とのわだかまりが解けたんだろうと推測する。まずは良かった。


「でも、グロティアの確保がまだだし、ソロモンの政局が安定した訳じゃないし、国境のソロモン船の謎も分ってないし。まだ早くない?」

 ハイドライドが眉をひそめながら、首をひねる。


「うん。言いたいことは分かる。ハイドライドさんの言う通りだと私も思う。でも...みんなが無事でいたこと。当たり前なんだけど、そんな当たり前のことにすっごく感謝したい気持ちなんだ。決して浮ついた気持ちで言ってるんじゃなくて。一歩間違えばこの中の誰か欠けていた可能性だってない訳じゃなかった。全員が無事でいられたことに感謝したいの」


「うん。いいんじゃない。リーファの意見に賛成」

 カミーユが賛同すると、ハイドライドが大げさに手ぶりを加えながら前言を翻して、さも前から自分もそう思っていたと言わんばかりに同意した。

「分かりました。乾杯ですよね。みんなの無事を感謝。いい事言いますね、リーファさん。僕も実は乾杯したいなと思っていたんです」とってつけたようなその言い回しにその場の皆が微笑する。


「ハイドライドさん、私達は何のために生きているの?」

「えっ? いきなり何?」いきなりの質問に戸惑いの表情を浮かべる。


「私はね。こんな風にみんなが穏やかな気持ちのままの笑顔で笑い合える、そんな瞬間を感じられること。みんながみんな、そんな風に感じ合い、生きられたら世の中はもっともっと平和に幸せになれるのになぁなんて、いつも思っているんだ。理想論かもしれないけど、私は私が求め続ければ、それはいつかきっと叶うと信じているの」

「すごいね。そんな風に考えているんだ。リーファさんなら実現できると思うよ。うん、マジでそう思う」

 ハイドライドがすぐに同意してくれた。


 柄にもなく理想論を語ってしまったことを照れているのか、リーファの顔が真っ赤になっている。気分が高揚しているせいもあるだろう。


「じゃあ、私は途中までマキを迎えに行ってくる」

 その場に居たたまれなくなったのか、逃げるように部屋を飛び出していってしまった。


 ハイドライドがカミーユの背中を押す。

「カミーユ。一人じゃ心配だ。ついていってやれ」

「えっ、あっ、うん」

 曖昧な返事と共に、カミーユもリーファの後を追って部屋を出ていった。


 部屋にはハイドライドとイースの二人が残る。


「ハイドライド。戻ってきたらすぐ乾杯できるようにグラスの準備をしとこうか」

「そうだね」


 イースの提案にハイドライドは親指を立てて応えた。

番外【カミーユとリーファが去った後の部屋での会話】


ハイドライド「しっかし広い部屋だね。俺もこんな部屋に住んでみたいな」

イース「金を稼ぐしかないな。稼いだ金で新しい家を建てればいい」

ハイドライド「ははは。何年、何十年後っていうレベルだな」

イース「俺は広い部屋がいいとは思わない。適度でいい」


ハイドライド「話は変わるけど、どうすれば女の子にもてるかな?」

イース「女の子にもてたいと思わないことだ」

ハイドライド「...⁉ それって( ̄▽ ̄;)」


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