第62話 コインの行方
これには、4人が一斉に驚きの声を上げた。
「はい?」
「今、なんて?」
「可能なの、そんな?」
「・・・・・」
「その前に、キスカさん、ニースさん。どれだけ人を集められる?」
「え? 本気なのですか?」流石にニースも半信半疑だ。
「勿論。本気」リーファは得意顔で頷く。
「ちょっと待ってくださいね」4人は慌ててリーファを部屋の隅に連れて行く。
「いくら何でも、無理無理。変に期待を持たせない方がいいよ」
「そうよ。人数が集まったとしても、無謀だわ。さっきの演説は見事だったけど、これは無理!」
「厳しい言い方だけど、止めた方がいい」
「・・・・・」
3人が一斉にリーファに自重を促す。
「イースも黙ってないで、何か言ってやって」
ハイドライドが、黙ったままのイースに意見を求めた。
「なるほど。目には目を、歯には歯を、奇襲には奇襲をってことか。面白い。今襲撃すれば完全に虚を突くことができる」
「おいおい、イース」
「だが、みんなの言う通り、リスクが高い。襲撃された側と違ってする側は正当防衛として殺されても文句は言えないし、むしろ恣意的に殺す可能性もある。特にカミーユを命の危険にさらすわけにはいかない」
イースは、他の3人とは若干見解の違いはあるが、人命第一の理由でリーファの意見に異を唱えた。
「そうね。そんなにみんなが反対するなら...。これで決めましょう」
リーファはポケットから1枚の金貨を取り出した。
「まさか」
「表が出たら決行。裏が出たら自重。いいわね、それで」
「えー、マジで?」ハイドライドが頭を抱える。
「クーデターと言ってもおかしくない大事なことが、コインに委ねられるのか」カミーユは嘆息する。
「運が味方につくか否か、ってことだな」何故かイースは乗り気な様子だ。
「せーの」
リーファは、今後の命運を握る金貨を勢いよく空中へ跳ね上げた。
金貨は空中でクルクル回転しながら上昇し、やがて落下に転じる。
「カミーユ。受け取って」
「えっ、俺?」
カミーユは言われるがまま、落ちてきた金貨を左手の甲と右手の手のひらで受け止めた。裏表は分からない。
カミーユがゆっくりと押さえていた右手を上に上げる。
みんなが固唾を飲んで、カミーユの手に視線を注いでいる。
運命の瞬間。結果は、
「表」
「うー、まじか」
ハイドライドが唸る。
「やるのね」
マキがへなへなと床に座り込む。
カミーユは、止む無しと早々に覚悟を決めた顔つきになっていた。
イースが呟く。
「よし。天運、我に有り」
部屋の中央では、キスカとニースが、リーファ達のやり取りを呆然と眺めていたが、「決行」になったことを知ると、表情を険しいものにした。
やるとなったからには、全員が部屋の中央に集まる。
キスカが言った。
「私の方は残念ながらゼロだ。散り散りに逃げた仲間をかき集めるには相当時間がかかる」
次いでニースが口を開いた。
「俺の方は10人集められる。いずれも信頼できる部下だ」
「全部で、私達も含めて17人ね。分かったわ。2つのミッションを同時に行わなければならないから、人数を2つに分けましょう。キスカと私達5人、そしてニースの部下2人で、王女様及び囚われた憂国の士の救出。ニースと残ったメンバーでグロティアの確保。特にグロティアに返り討ちにされると計画そのものが破綻するから、失敗は許されないわ。覚悟を決めて臨んで」
「承知した」
途中、ハイドライドが「僕らもメンバーに入るの?」と言い、マキが「当たり前でしょう」というやり取りがあったが、全員がリーファの意見に耳を傾け、納得した。
「キスカ。王女様と幹部の所在地は分かる?」
「ああ。おそらく政治犯専用の留置場だろう」
「グロティアの居所は?」
「自邸か城のどちらかだが...」
「どっちもっていう訳にはいかないわ。絞れない?」
「ニース。自邸から城への道で待ち伏せなんてどうだ? 若干時間にズレは発生するかもしれないけど護衛も手薄だし確実だと思う」キスカが言った。
「しかし、少数とは言え、待ち伏せは怪しまれないか?」
「平気よ。明日から明後日にかけて、この辺り一帯に霧が発生するわ。私達は霧に紛れて行動する」
この発言に皆が顔を見合わせた。
「本当か? リーファ」
「本当よ。だから2つのミッションを遂行することが可能なの。ただ私達も霧で視界が悪くなるから、仕損じた場合は逆に相手に有利になることは頭に入れておいて」
「リーファ殿。言葉を返すようで悪いが、ここギガスレーテは、霧は滅多に発生しない。記憶を遡っても5年以上前にあったかないかだ。こうも都合よく霧が発生するだろうか?」
キスカが疑念を口にした。
「霧は発生するわ。必ず」




