表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の人魚姫 ~世界はやがて一つにつながる~  作者: 伊奈部たかし
第1章 人魚姫リーファとカミーユ王子の運命の出会い編
33/199

第33話 カラファ来訪

 ヘルマン・リック騒動から3日後、朝からドアを叩く音がする。

「リーファ、手が離せないの。出てもらえる?」

 マキに言われて、ドアに近づくと内側から声をかけた。

「どなたですか?」

「私よ。リーファ」


 リーファはドアを開ける。

「久しぶりね。元気でやってる?」

「お姉ちゃん!」


 ドアの外には、五女のカラファが立っていた。

 リーファより若干背が高く、白いシャツに黒いパンツスカートというシックで大人っぽい服を好むカラファらしいいで立ちだ。


 カラファが中に入って部屋を見渡す。

「懐かしいな。そうそう、私の時もこの部屋だった」

 カラファが、奥にいるマキに手を振る。

「やっほー、マキ」

「あら、カラファ。久しぶり、今日はどうしたの?」


「リーファにもらった薬の結果についての情報を伝えに来たの。それと、はい、これ」カラファはリーファに瓶を差しだした。中に茶色い液体が少量入っている。


「ロダン君だっけ。人間の男の子用の薬。もらった唾液から症状を推測して作ったものよ」

「5日分あるわ。スプーン1杯で1日分。これを飲めば、すぐにという訳にはいかないけど回復に向かうと思う。後は体力次第かな」

 リーファはうれしそうに薬を受け取る。

「さすが、カラファ。ありがとう」


 リーファは、以前溺れている男の子に、自分の鱗を煎じて飲ませたことを思い出して尋ねた。

「もしかして、人魚の鱗を使ったの?」


「これには使ってないわ。人魚の鱗は万能薬でもあるけど、効果が強すぎて細胞が暴走することがあるの。だから、使う前に何回か試してみて、大丈夫と確信して初めて使うことができる。それと相性の問題があって、誰でも彼でも効くとは限らない。マッチングの確率は25%。これも事前の検査をして確認しないといけないわ。人魚の鱗は安全が確認できない内は使えない。学校で教えてもらわなかった? 常識よ」

 リーファは、初めて聞いたような気がしたが、曖昧に返事をしてごまかした。

「ああ、思い出した。そうだった、そうだった」

 今更ながら、冷や汗が出る。

(そうだったのか)


「どうしたの。リーファ」

「何でもない。何でもないよ。教えてくれてありがとう」


「折角、カラファも来たし、お茶にしましょう」

 マキが、手早く紅茶を入れてくれた。

 3人で紅茶を口にする。


「ああ、美味しい。海藻から抽出するいつものお茶もいいけど、人間界の紅茶も格別だわ」カラファが頬を緩ませる。


「で、こっちの薬だけど」ロダンが常用していた粉薬を示し、カラファが表情を曇らせる。

「はっきり言って、薬でも何でもないわ」

「薬じゃない? どういうこと?」

「毒よ」

 リーファとマキ、同時に聞き返した。

「毒?」


「この薬には、ジュルブリンという成分が含まれている」

「ジュルブリンは、言ってしまえば麻薬の一種で3つの特徴があるの。1つ目が運動や思考を司る神経を麻痺させる効果。2つ目は脳の快楽を誘発する効果。これは例えば、薬として飲むと飲んでいる人が薬が効いているように錯覚するように感じてしまう。3つ目は微量なら問題ないんだけど、蓄積すると脳障害あるいは運動障害に発展する可能性がある」

「こんなのを薬として、毎日飲ませ続けるなんて有り得ないわ。もし確信的にだったら、かなり悪質ね。即刻止めさせないと体がどんどんダメになる。子供にこんなもの飲ませるなんて、本当にどうかしている。有り得ない」

 普段冷静なカラファが、怒りに震えている。


「なるほど。やっぱりか」リーファは小声で呟いた。

(あいつが、どこかのタイミングで薬を変えて、子供の病気がずっと治らないようにしてたんだ。子供の病気と治療費を盾に、ヘルマンさんを意のままに動かせるように)


リーファは拳をギュッと握りしめる。

(なんて卑劣な男!)


「ありがとう。カラファ。もらった薬、すぐに渡すようにするわ」

 忙しいにも関わらずいろいろと骨を折ってくれた姉に感謝する。

「どういたしまして。こういうことなら、いつでも協力するわ」

 カラファも自分の知見が人助けの役に立ったことに満足そうだ。


 リーファはマキに目を向ける。

「マキ!」

 普段おっとりしているマキが鋭い反応を見せる。

「ええ、イースさんに伝えましょう。もしかしたら、会長が飲んでいるという薬も良くない薬なのかも」


「可能性はあるわね。あのバラリスという男、同じ薬を使って、あわよくば組織を乗っ取ろうと企んでいたとしても不思議じゃない。あいつならやりかねない」

 リーファはバラリスの狡猾そうな顔を思い出す。


「まあでも、ここからは人間達に任せましょう。私達の役割はここまで。新たにやんなきゃならないこともできたしね、リーファのお陰で」

 マキが、前のめりになるリーファに対し、手を引くことを提案した。

 リーファは納得する。

 マキの言う通り、ここから先は彼らに任せよう。


「リーファ。張り切るのはいいけど。あまりマキに心配かけちゃダメよ」

 姉からたしなめられて、リーファは何か言おうとしたが、口をつぐんだ。

 傍若無人に振舞うリーファも姉には頭が上がらない。

 そんな様子を見て、マキは、クスッと微笑んだ。

「それと、二人にもこれを渡しておくわ」

 そう言って、カラファは別の薬を差し出した。

「何? この薬」リーファが薬を見て尋ねる。

「この薬はね...」

【人物紹介】


    カラファ

性別  女

年齢  20歳

誕生日 9月13日(乙女座)

種族  人魚(王族)

身長  161cm(人間の姿) 222cm(人魚の姿)

体重  秘密

好きなもの 紅茶、海藻サラダ


・女王ルナの子供(五女)

・理知的で冷静な性格だが、情熱的な一面も時折見せる。

・医学、薬学への関心が高く、その方面での研究に没頭している。

・人間界にいた時は医学、薬学の知識を吸収する傍ら、ロック音楽にのめり込んでいた。

・分析能力が高く、じゃんけん50戦無敗の記録を持つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ