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永遠の人魚姫 ~世界はやがて一つにつながる~  作者: 伊奈部たかし
第3章 天使と悪魔の顔をあわせ持つ人魚姫とそんな人魚姫に振り回されながらも優しさを失わない王子の揺れるブエナビスタ城 編
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第188話 石化の罠

 スーファ、サイファ、オルファの3人はシュラの走り去った後をひたすら追いかけている。


 サイファが前を進むスーファに聞く。

「こっちで合ってるの?」


「メッセンジャーバードをつけてある。こっちで間違いないわ。既にメッセンジャーバードの存在は気づかれてるけど」


 サイファが眉をひそめて聞き返す。

「気づかれた?」


「ええ。1羽は撃ち落されて傷を負っている。残った1羽が追跡を継続している」


 スーファは何かに気づいて足を止めた。


「どうしたの?」


トラップよ。魔法の痕跡がある」

 スーファは片手をかざし木々や地面をスキャンする。


 地面一部と左右の木々がスキャンによって赤く光り輝いた。


 スーファはその場所に向かってトラップ解除の魔法を施す。


 もう一度スキャンし赤い光が消えていることを確認する。

「これでOKよ。さあ早く行きましょう」


 そう言って一歩踏みだしたところで、キーンという鋭い音が聞こえた。


「何⁉」


 異音に注意を払い左右に目を配っている間に、頭上から透明の筒がいくつも降り注いできた。


「危ない!」


 スーファは振り向きざまサイファとオルファを手で突き飛ばす。

 二人は突き飛ばされたところで、何が起こったか理解し体を反転して空から落下する筒を避けたが、突き飛ばした当のスーファは筒の中に捕らわれた。


「!」


 透明な筒に閉じ込められて身動きがとれない。

「何これ。ちょっとぉ。何なの⁉」

 スーファは両手で内側から筒を叩くがびくともしない。


 スーファがもがいている内にし白いガスが筒の中に充満する。

「これって...」


 サイファは筒に囚われたスーファを助けるため筒に近づこうとするが、こちらの居場所を感知しながら次から次へと降ってくる筒を避けている内にスーファの入った筒の内側に白いガスが充満した。


「しまった」


 外からは中の様子が分からない。


 魔法で作り出したハンマーを白い筒に向かって投げると筒の表面の一部が割れ、ガスが外へ吐き出された。


 さらに同じハンマーを2つ投げ、筒を完全に破壊する。


「スーファ!」


 ガスが消えるとそこには顔以外全身が石像と化したスーファの姿があった。


「ああ。スーファ。なんてことに」


 スーファは全身を覆ったガスの消えた先にサイファの姿を確認するとまずは助けてもらった礼を述べた。


「ありがとう、サイファ。もう少し遅かったら完全にアウトだったわ」


 それから自分の体を眺めて驚くと同時に耳に聞こえるくらい大きく嘆息した。


「空気の膜を作ってガスに覆われる前にガスを遮断しようとしたんだけど間に合わなかったわ。顔だけはなんとか助かったけど。情けないわね」

 スーファは自虐的な表情でサイファに語りかけた。


「待って。今元に戻すから」

 サイファが魔法を施そうとすると、スーファが鋭い声で静止した。


「私のことはいいわ。シュラを追って!」


「えっ⁉」サイファが目で問い返す。


「ここで時間をかけている内にシュラとの距離はどんどん離れていく。ここで私達を足止めすること。それがシュラの狙い。私は何とかなるし何とかするから。1分1秒でも早くシュラに追いついて。シュラがこれ以上何もしないようにシュラの野望をあきらめさせないといけないの」


 スーファとサイファは互いに顔を見合わせる。

 サイファは何かを言いかけたが、思い返したように口を閉じた。


「オルファ。行くわよ」


 サイファの鋭い口調にオルファは慌てて問い返す。


「えっ、スーファを助けないの?」

 それは疑問をぶつけるというよりも一応確認のためという意味合いであるらしかった。


「シュラの行方を追う。ここで時間をかけてスーファを助けている内にシュラはどんどん先に行ってしまう。スーファの言う通り、私達が何のためにここにいるのかを考えれば自ずと答えは出るはず」


「・・・」


 オルファは心配そうにスーファを見つめる。

 納得はしているが、それでもこんな状態のまま残していくことに後ろめたさを感じているようだ。


 オルファの気持ちを察したスーファが背中を押す。


「大丈夫。じきにエルファがドラゴンを始末するから、ここを通りかかった時に体を元に戻してもらえるわ。あなたも行ってオルファ」


 オルファもようやく決意を固めた。

「分かった。終わったら必ず駆けつけるから」

「うん。頑張って」


 サイファとオルファが二人並ぶ。

「オルファ。神速トップギアで一気に追いつくわよ。いい?」


「OK」


 二人は石化して動けないスーファをそのままの残して急加速でこの場を後にした。

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