第171話 2つのミッション⑤幕引き
男は呆れたように呟くも、強力な威圧感で我々に動く隙を与えなかった。
(やべえ。急いでいるってのに、厄介な奴が現れた)
立ち止まったまま、相手の様子を窺う。
その中でザナドゥだけがリラックスした様子を見せていた。
(なんだ? 知り合いか?)
「ランゲランさん...」
ザナドゥが懐かしい人に会ったような目で、男に声をかける。
説明を求めるような眼差しをザナドゥに向ける。
「この人は、ルイス・ザックバーン大臣の第一秘書官ランゲランさんだ」
ハイドライドは肩で大きく息を吐く。
(ガイル・コナーの次はザックバーンか)
大物政治家の名前を聞いて気後れしてしまう自分をまだまだだなと感じる。
ザナドゥが尋ねる。
「どうしてここに?」
「君を迎えに来た」
「私を?」
「そうだ」
そこにイースが異を唱える。
「ちょっと待ってください。必死の思いで彼を囚われの身から救い出したのは我々です。それを後から来て、迷子の子供を迎えに来た親のような顔をして連れていくというのはいかがなものでしょうか? 納得できません」
ランゲランはイースの異論に全く動じない。
「理由? 私が彼を迎える理由は彼は我々の庇護下にいた方が安全だから。それは彼にとって勿論のこと、我々にとってもその方が都合がいい」
「彼を助けたことの勇気と行動力には敬意を表する。しかし、この後彼を安全に匿うことができるのかね。口でできるというのは簡単だし、そう思い込みたい気持ちは理解できる。しかし、実際問題簡単じゃない。冷静に考えてみればいい。自分達で匿うのと我々に託すのとどちらがよりよい結果につながるのか?」
「・・・」
イースは黙り込む。
(この男の言う通り、計画を立てていたのはザナドゥ奪還まで。奪還後のことはまだ手付かずどころか、何の考えもない)
ザナドゥがイースの肩を叩きながら言った。
「イース。悪い。俺はこの人についていく。君達が俺のことを考えて一生懸命に行動してくれたことには感謝している。けど、ランゲランさんの言う通り、組織が動き出した以上、組織の中に身を置くことが正しいことだと思う。ガイル・コナー大臣が絡んでいるなら猶更」
ザナドゥは3人を交互に見つめて言った。
「ありがとな。イース。ハイドライド。リーファ。君たちは俺の命の恩人だ」
そして、それぞれの肩をポンポンと軽く叩く。
「では行きましょう。ランゲランさん」
ランゲランは軽く頷くと、城の奥へと早足で歩き出した。その後をザナドゥがついていく。
ザナドゥが去った先を見送って、イースが声をかけた。
「仕方ないな。我々も行くぞ」
ザナドゥを除いた3人はザナドゥが去った方向とは別の方向へ向かって走り出す。




