第12話 古の伝説
今回は「古の伝説」と題してカミーユ王子、人魚姫リーファと違う世界のお話を書いてます。
この世界でのお話は複数の話数にまたがります。今後につながる大事な内容ですので、そのまま継続しての購読をお願いします。
「待てー」
罵声と共に松明と武器を持った数十人の村人が背後に迫ってくる。
だんだん距離が縮まっているのが、声で分かる。
このままでは追いつかれるのも時間の問題だ。
キョウイは後ろを振り返ると苦虫を噛み潰した表情で、隣を走る集団のリーダー格のジュウザに向かって呟いた。
「くそっ、しつこいな」
ジュウザも後ろを振り向き、追手との距離を計算する。
(30分もしない内に追いつかれるな)
自分達だけなら逃げきれる自信があるが、集団には女子や子供も含まれている。
「仕方がない。一旦奴らを食い止めよう」
ジュウザは斜め後ろに目を向け、壮年の男に声をかけた。
「ライト。カイトとともに女、子供を誘導して先に行ってくれ。我々はこの地で、奴らを足止めする」
ジュウザが仲間のライトに先に行くように促す。
ライトは一瞬戸惑ったような表情を見せたが、ジュウザの意をくんで快活に答えた。
「分かった。じゃあ、悪いが先に行く」
「ああ、みんなを頼む」
ジュウザは笑みを浮かべる。
言いたいことはあるのだろうが、指示されたことに率先して動く潔さがこの男にはある。そんなライトの気持ちの清々しさをジュウザは気に入っている。
「死ぬなよ」
ライトは振り返って、足を止めたジュウザらに一声かけた。
「早く行け!」
ジュウザが一睨みすると、おどけたような仕草を見せ、後ろについていた女性らの集団に声をかけ始めた。
ライトとカイトの兄弟が、女性と子供十数人を率いて先に逃れていく。ジュウザ、マルス、アトラス、フーマ、キョウイの5人の男が追手を食い止めるためこの場に残った。
「どうする? ジュウザ」
キョウイが声をかけてきた。「どうする?」とは、追手の村人達と斬り合いをするかという意味と捉える。
「いや、いきなり斬り合いはしない。まずは話し合いで活路を見出す。交渉が嚙み合わない場合は、是非もない」
「分かった」
キョウイは腰に差した剣に手を添える。
「来たぞ」
高所から追手の動向を眺めていたマルスからの合図だ。
「いいか。例え斬り合いになっても死に急ぐな。我々には守らなければならない仲間がいる。仲間の為に最後まで希望を捨てずに戦うんだ」
ジュウザは真っすぐ前を見据えながら、この場に残った男達に自分の想いを伝えた。
「ああ。分かってる」
「了解」
皆が思い思いに返事をする。
村人達の持つ松明がすぐそこまで迫っていた。
ジュウザらを追っていた村人達が待ち構えた5人に気付き、足を止める。
暗い闇に松明が揺らめいている。
ジュウザが、目の前の追手に向け、声を掛けた。
「村長さん、いるかい?」
村人は口々に罵声を発して威嚇してきたが、呼びかけに応じて村長が前に現れた。
「ジュウザか。降参する気になったか?」
「頼みがある。」
ジュウザは村長の言葉を無視して、自身の言葉を投げかける。
途端に村人から罵声が飛んでくる。
村長は両手を広げ、ざわつく村人を制する。罵声が止み、松明の燃えるバチバチという音だけが、夜の静寂に鳴り響いている。
「我々は村を出て行く。村とは今後一切関わりを持たない。この先の辺境の一画で自分達だけで静かに暮らす。約束する。だから、この場でみんなをまとめて、村へ引き揚げて欲しい」
凛とした声が、暗闇に響く。
「もし、それが叶わないなら、我々にも覚悟がある。どうせ捨てる命なら、ここに留まり、討ち死に覚悟で一人でも多くを冥途の道連れに大暴れする」
ジュウザは声に気迫を込める。
「村の方々もそれぞれ妻子を持つ身、こんなところでの死んだとあっては妻子も悲しむだろう。それはお互いにとって不幸でしかない」
「どうだ。手を引いてくれないか。我々は本気だ」
言い終わると、堂々とした態度で眼下の村長の返事を待った。
村長はジュウザの言葉を受けて何かを考えてい仕草をしていたが、おもむろに口を開いた。
「ジュウザ。なるほど、悪くない提案だが、大事なところが抜けている。お前たち魔女につながる一族を逃したとあっては、村が責任を取らなければならない。お前たちが身内を守るように、私も村民を守る義務がある。そのためにお前たちを犠牲にするのは忍びないが、上からの命令には逆らえない。お前たちこそ無駄な抵抗を止めて、大人しく我々に捕まってくれれば全て丸く収まる。どうじゃ」
村民を思う殊勝なセリフだったが、村長が一瞬ニヤリと笑ったのをジュウザは見逃さなかった。
(所詮、話し合いが通じる相手ではないか)
(やるしかない。が、それにしてももう少し時間稼ぎをしてからだ)
ジュウザは村長と後ろに続く村民に睨みを効かせる。
その時、子供が一人暗闇から現れた。進んだはずの道を駆け戻ってきたらしい。
子供は、ジュウザの娘のライチだった。
「お父さーん、大変ー」
全速力で駆けてきたため、息を切らせている。
「どうした? ライチ」
ジュウザは足にしがみついてきた愛娘に視線を向ける。
「私たちが走っていたら、道に村の人達が現れて。ライトさんとカイトさんの2人が私達の為に戦っているけど、どうにもならなくて。私が代表して、お父さんたちに知らせるために走ってきたの」
ライチは今にも泣きだしそうなのを懸命に堪えて、前方で起こった異変を訴えた。
「しまった。別動隊に先回りさせていたか」
ジュウザは先に行かせた妻そして仲間達を想って歯噛みした。
「なんてことだ」
ここでの時間稼ぎが、逆に相手の思う壺になっていいたことを悔やんだ。
2人の会話を聞いていたキョウイが叫ぶ。
「くそっ。ジュウザ、ライチを連れて行けっ。ここの抑えは俺とフーマに任せろ」
ジュウザは一瞬、どうするか悩んだが、キョウイの提案を受け入れることにした。
「分かった。マルス、アトラス、俺達は行こう」
最早、一刻の猶予も許されない。3人は、2人を残して狭い道を駆けて行った。
キョウイが村長に睨みを利かす。
「ふん。別動隊を用意しているとは、随分手の込んだ真似をしてくれるじゃねえか。何が村民を守るだ。聞いてあきれる。俺は知っている。俺らを生け捕って公安に渡せば、村長は役人に抜擢、村は租税1割免除だそうだな。聞いた時はまさかと思ったが、そういうことだったとはな」
「だから何だ。お前達にはどうでもいいことだ」
村長は酷薄な笑みを浮かべると傍らの部下に指示を出す。
「何をしている。さっさと捕まえろ」
村長の指示によって、村長の周囲にいる村人が一斉に2人に襲いかかった。キョウイとフーマは剣を抜いて受けて立つと多勢を相手に一歩も退かず、先へ行こうとする村人を行かせまいと必死の勢いで食い止めた。2人の気迫のこもった剣技に圧倒され、村人もなかなか踏み込めない。声で威嚇しつつ遠巻きに隙をうかがうしかできなかった。
相手を気迫で圧倒していた2人だが、多勢を相手に疲れが見え始めると動きに精彩がなくなり、徐々に圧迫され始める。村長が足を狙うように指示すると、足への攻撃が気になり、防戦一方になった。それでも2人は満身創痍の中、懸命に戦っていたが、フーマが脇腹に致命傷を受けて倒れると、キョウイは、意を決し、村長目掛けて最後の力を振り絞り突進した。が、足に受けた傷からあと一歩のところで力尽きて倒れると、一斉に剣を突き立てられた。
村長は、キョウイの決死の突撃に恐怖で顔を引きつらせながらも目の前でキョウイが死ぬのを確認すると、狂ったように魔女に関わる者全員の捕縛を繰り返し命令した。
毎年1月初めは、今年の目標なる者を書き出してみるのですが、去年の目標を振り返ると「ほとんど達成できてないじゃん」と自分の目標達成スキルの低さに「ちょっとこれはもっと真剣に取り組まねば」と感じた2022年の幕開けでした。何がいけなかったかって、目標が全体的に抽象的な目標が多かった。それを踏まえて2022年はより具体的に目標を考えてみようと思ってます。2022年自分にできることを頑張ろう、自分にそう言い聞かせました。




