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堕落男と喧嘩少女  作者: 開拓者A
8/8

謀略


「さっき委員長になった内海だ、このクラスは俺に任せとけ。」


「早速決めてくねー!って、まず紙配るのか!」



教室の前方には、司会であり新委員長の内海と西咲が出てくる。


委員長決めは、まずは紙に第一志望を記入して決めていくようだった。



西咲が紙を手に「いち、にー、」と数えながら、前方を左から右に移動している。



「尾野、早くとって。」



ふたつ前の席の生徒が声をかけてくる。


前の席の打身が不在のため、もう一つ前の犬飼が紙を渡そうと手を伸ばしているようだった。



「ああ。すまん。」とその紙を受け取り、記入欄に目を落とす。


用紙は至ってシンプルなもので、氏名と第一希望を書けばそれでいいようだ。


最初から書くものは決めていたため、ささっと記入を済ませる。



「記入が終わったら、後ろから集めてねー!」


「名前書き忘れるなよ。」



犬飼に書き終えた用紙を渡し、ちらと前の方を見ると西咲と目が合う。


西咲はにししと笑い、どういう意味かぶいっとこちらに向けてピースをした。



その意味不明な行動に苦笑し、用紙の回収が終わるのを待つ。


これから委員長2人が、用紙の内容をあらかじめ委員名が書かれた黒板に書いていくようだ。



「まず、藤沢が環境委員希望なー。」


「島本!体育委員いいね!」



2人は自分たちのペースで次々と黒板をクラスメイトの名前で埋めていく。



「都張が風紀委員希望、、っと。」


「都張さん風紀希望出してたのかー。」


「体育委員にヤマ張ってたけど外したわ。」



あの少女は、風紀委員を希望していたようだ。男衆のため息がいくつも聞こえる。


希望している生徒は今のところ男女含めて1人もおらず、あまり人気のない委員会なのかもしれない。



確かにあの性格は校内の秩序を保つことに適しているだろう。


その委員会と自分の希望する委員会と違ったことにほっと息を漏らす。


もしも同じ委員会だったら、と思っていたがそれは回避することができたようだ。



「えーっと、次は!湊人のだ!んー、ふむふむ。」



西咲がいつものごとく大袈裟な反応をしている。


すぐに書けば良いものの、顔にはにやりと笑みが浮かべられていた。



「よし!湊人は風紀委員希望!」


「......え。」



その言葉に愕然とする。西咲が言った言葉を瞬時に理解することができなかった。


だってあり得ないことが起きている。俺は確実に[図書委員会]と用紙に記入したのだから。



俺が困惑していることを気にも止めずに西咲は黒板に名前を書いている。


男どもから羨望や妬みの視線が向けられているようだが、今はそれどころではなかった。



抗議の意を口に出そうとするが、声が出ない。


ここにきて自分の心の弱さを呪う。



「これで、全員分書けたな。被った奴らは今からそれぞれジャンケンか話し合いで決めてくれ!」


「負けた人は、残ったところに適当に入れてくね!」


「え、えっと。西咲さん?残った人はもう一度希望を聞きますからね?」



西崎が堂々と嘯くので、先生が慌てながら虚偽の情報を訂正した。


委員会決めは次の段階に進んだようで、もう前には戻れなそうだ。



まさか、想定していた最悪の事態になるとは思っていなかった。


都張と、このクラスで一番険悪と言っても過言ではない人物と、同じ委員会になったのだから。



その受け入れ難い事実を作った人物を睨みつける。


視線に気づいたのか西咲はてへと舌を出し、サムズアップした。



明らかに挑発しているとしか思えないその態度に、憤りを通り越して呆れる。


あれは天性のバカなのだろう、そう思うことにした。


怒りの矛先をどこに向ければいいのかわからなくなった瞬間、次はこれからのことに不安がよぎる。



この時から1年間、委員会とはいえど共に行動する時間が増えるのだ。


その相手はというと、なんとも思っていないかのようにただ黒板を眺め、この時間が終わるのを待っているようだ。



「今日の放課後、各委員会で集まりあるから忘れずに行けよー。」



内海の言葉に憂鬱になりながら、今日をどう切り抜けるのか頭を巡らせ始めた。



内海「湊人、強く生きろよ...っ。」

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