表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕落男と喧嘩少女  作者: 開拓者A
2/8

再来

見慣れない道、見慣れない川、見慣れないコンビニ。


そして今、目の前にある校舎。


周りを通り過ぎる学生たちは、友達と楽しそうに談笑している者、不安げに歩を進めている者、とさまざまいる。


一つだけ言えることは、その大半がこれから始まる3年間に期待していることだろうか。


期待なんてするだけ無駄なのに。




「新入生諸君、入学おめでとう。君たちはこの時を持って本校の生徒になる。諸君にはこの3年間で--------


--------終わりに、新入生諸君の充実した高校生活を願って式辞とする。是非励みたまえ。」



嫌なくらい長い校長の式辞が終わる。


輝く高校生活も、青春も、希望も、想像することができない。


想像すると、首を絞められるような感覚になる。あの時の記憶が蘇る。


早くこの息のしづらい環境から出たい、と思ったその時。



「新入生代表挨拶。新入生代表、都張朝菜。」


「はい。」



あの鈴は、また目の前に姿を現したのだった。




「都張さんってすごく頭いいんだ!」


「髪サラサラだね!ケアとか何やってるの?」


「部活何入る予定〜?」


「すみません。先約があるので。」



まさか、同じ学校の同じクラスにあの喧嘩少女がいるなんて思わなかった。


少女は入学式が終わるや否や、クラスメイトたちに囲まれている。


それもそうだろう、少女は眉目秀麗、頭脳明晰、さらには腕っぷしもいいようだから。



そんなことを考えていると、前の席の男がこちらを振り返った。



「お前、あの子知ってるか。」



と一言。



「---いや、何も。」


「あ、そか。ならいいんだ。俺、内海隼也。ハヤブサにカタカナのセみたいなやつで隼也な。よろしくな。尾野、、、湊人だっけか。」



いきなりの質問に戸惑いながらも、なんとか声を絞り出す。


悪いやつではなさそうだ。今もニコニコしながら、右手を差し出している。



「あ、ああ。よろしくな。」



なぜ名前を知ってるんだ、と疑問に思いながら、そういえばさっき自己紹介したんだったと思い出し納得した。


人の名前をいちいち把握するなんて律儀な奴もいるもんだ。



「ところで湊人。あの子は一体何者なんだ?」


「-------さあ。知らないが。」


「あの子、さっきからこっちを見てる気がするんだよな。多分、湊人の方を。」


「おそらく気のせいだ。」


「何かやったんじゃないか、お前。」



確かに、さっきから少しばかり視線を感じるような気がする。


それは内海の容姿が優れているから、女子たちが好奇の目で見ているとばかり思っていた。


でも、どうして。と疑問が頭の中を渦巻く。



「っておい。湊人。湊人、お客さんだぞ。」



肩あたりに軽く何かが当たる。気がつくと、内海が肩を叩くいてるようだった。


その声と衝撃で、思考が現実に戻される。



「あの、少しよろしいですか。」



無機質な鈴の音。聞き覚えのある音に鼓膜が震える。


目の前には客人、いやあの時の少女が悠然と立っている。



「-------------。」


「-----------------何か。」



数秒考えて喉からこぼれたのがそれだった。



「私についてきてください。すぐに終わらせますから。」



少女は淡々と言う。



「だから用件を。」


「あまり人には聞かれたくないので。」


「....わかった。内海、じゃ。」


「お、おう。また明日な。」



一連のやりとりを終え、教室を出る。


ただでさえ重い足がさらに足取りを重くしている。


目の前を歩く少女は、そんなこと意に介さずに目的の場所に向かっているようだ。



つい数日前、確かに近所のコンビニで彼女と対面している。


つまり、今から始まることはあらかた予想できる。


その事件、、、事故について黙秘してほしいという内容だろう。


予測できる未来に嘆息しながら、少女に声をかける。



「...どこに行くんだ。」


「人目のつかない場所です。」


「...この前のあのことだろ。別に言ってないし、言いふらす趣味もない。」


「口だけかもしれないので。」



少女はそれだけ言って、再び歩を進める。


これは何を言っても無駄だと悟り、少女の後に続くことにした。



しばらくして、少女は立ち止まる。


目的地は屋上手前の踊り場だったようだ。


周囲に人はなく、シンとしている。不気味な雰囲気だ。



「それで話って。」



面倒ごとを早く終わらせようと口を開いたその時だった。




鼻先を何かが横切る。


それが少女の拳だと理解するのに時間はいらなかった。



「避けたんですね。」



少女は何故か関心を含んだ声音でそう言った。



「なんで。」



混乱していた。女子に不意打ちされることは経験がない。



「あなたを信用していないからです。」



彼女は昏い瞳でそうこぼし、続きを紡ごうとはしない。




高校生活初日、女子高生との死闘が始まる。

毎日更新頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ