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堕落男と喧嘩少女  作者: 開拓者A
1/8

コンビニ前で暴漢を襲うヒロインってまじ?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「誰か応急処置ができる奴はいないのか!」


「試合は一時中断とする!大会本部に連絡を!」


「早く救急車を呼べ!おい、湊人!AEDを持ってこい!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



怒涛のような時間だった。


焦る大人たち。悲鳴をあげる仲間。呆然とする保護者。


地獄があるとしたら、こんなところだろうな。なんて場違いなことを考えるくらいには正気を失っていた。


少し昔の、たった5分にも満たない記憶が呼び起こされる。


思い出すだけで、身体中のものが飛び出しそうになる感覚。


思い出したところで、何も変わるはずないのに。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ほんとに残念だったわね、でもあれはどうしようもなかったことなのよ。」


「試合中の事故だからしょうがないよ。」


「もっとあなたが注意していれば、こんな結果にはならなかったはずよ。」


「お前が恵汰を殺したんだろ、この人殺し。」


「お前、試合中に親友殺したんだってな。そんな奴がどうして生きてんだよ。この人殺し。」


「近づかないで、あなたが近くにいると息が詰まるのよ。この人ゴロシ。」


人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、人ゴロシ、ヒトゴロシ、ヒトゴロシ、ヒトゴロ-----------------------------

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「合計で712円になりま...ってお兄さん大丈夫ですか?顔色すごく悪いですよ。」


「.....あぁ。はい。別に。いくらでしたっけ。」


コンビニ店員の声で再び現実に戻される。


よほどひどい顔をしていたんだろう。店員はレジを打ちながらチラチラとこちらの様子を伺っている。


頭の中に張り付いているソレから意識を剥がしつつ、なんとか支払いを終える。


忘れたいはずなのに、気がついたらソレの中にいる。


消したいはずなのに、日に日に自分の中で大きくなっている。


いや、実際それを一番望んでいるのは自分かもしれない。


あれは、それくらいのことだったのだから。



ピロリロピロリロピロリロ♪

「ありがとうございました〜」


嫌なくらい元気のいい挨拶と電子音。


店を出ると4月とは思えない熱気が身体中を這いめぐる。


それに少し顔を顰めつつも、別のものに意識が持っていかれる。


夜中の閑静な住宅街には、少しばかり違和感を感じるものだ。


その正体はすぐにわかった。


いかにも「不良やってます」といった奇抜な服装をした3人の男たちが少女一人を囲んでいるようだ。


その光景だけ見ると、その少女も徒党の一員の可能性がある。


しかし、その少女は制服を着ていて、遠目で見てもわかるくらい面倒臭そうな顔をしている。


そう、男どもと揉めているようだった。



「で、何か私に用ですか。」


「お前、俺らを睨んでたよな。」


「ガキの分際で生意気なんだよ。」


「少し口の聞き方考えようか嬢ちゃん。」


「はぁ、不快な気持ちにさせたなら謝ります、すみませんでした。」



少女は大の男3人に対して怯むことなく言葉を交わしている。


直感的に、これは嫌な方向に事が進みそうだと思った。



「謝り方ってもんがあるだろおい。」


「謝り方?なぜ赤の他人にそこまでする必要があるのですか。」


「嬢ちゃん、社会にはルールってもんがあるんだ。目上の人に対しての礼儀ってやつが。」


「ガキが大人なめてると、どうなるか知りてえみたいだな」


「よくわかりませんが、早く通してください。警察呼びますよ。」



男たちは少女との口論でヒートアップしていっている。


少女は故意に男たちを侮蔑しているわけではないようで、それがさらに男たちの苛立ちを買っているようだった。


そろそろ警察を呼ぼうかと、無気力に携帯を取り出したその時だった。



「呼べるもんなら呼んでみろや!」



男のうちの一人が怒声と共に少女の手を掴んだ。


と、同時にその男は地面に仰向けの状態で叩きつけられる。


男たちは何が起こったのか理解できていないようだった。



「痛いですね。私に触れないでください。」


「何しやがった!」


「正当防衛ですが。何か文句あるんですか。」


「嬢ちゃん、体に覚えさせてやるよ!」



目まぐるしく回る展開についていけずに、ただ傍観することしかできなかった。


ふと気がついた頃には3人の男が地面にありありと転がっていた。


右手を見て、携帯を取り出した意味を忘れるくらいに魅入ってしまっていた。

それくらい一瞬の出来事だった。



「あなたもこの方達の仲間ですか。」



鈴のような声が唐突に頭の中に響く。



「え。あ、いや。」


「そうですか。ならいいんです。失礼しました。」


「このことは他言しないでくれると助かります。では。」



少女はそれだけ残して暗い住宅外に姿を消していった。


先刻の出来事が嘘と思えるほど、艶やかな亜麻色の髪を風になびかせながら。




1ヶ月毎日更新頑張ります。

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